日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

日々のスケッチ・随想

昔の名前で 福之記7

京都にいた時は「しのぶ」と呼ばれていた。神戸では「なぎさ」と名乗った。そんな人もいたのだろう。彼女はきっと夜の女。幾つもの名前は源氏名。本名と商売の名前の二本立てだったろう。 十二年もの間そう呼んでいたのだから簡単には変わらないようだった。…

前向きな笑い

「高いな」。顔をゆがめてそう自然に出てしまった。しかしそこは人が多く、遠慮が働いた。声にせずに口を動かしただけだった。すると真正面でカートを押していた初老の女性が、僕の顔を見てにこりと笑った。とても嬉しそうだった。 「あれ、聞こえました?」…

かさぶた剥がし・福之記6

エリザベスカラー、なぜそう言われるのだろう。故エリザベス女王がつけていたわけでもない。ネットで調べると十六世紀頃の英国はエリザベス朝の頃に女性の首元に実際に使われていたからとの解説があった。確かにそんな絵画は美術や歴史の教科書で絵に見るこ…

忘れ物とCOPQ

オルリー空港はパリ市内の南にある。北側のシャルル・ド・ゴール空港は日本からの便も到着する国際便ターミナルを持つフランスの玄関だが、オルリーも小さい規模ながら近郊への国際便が入る。空港チェックインカウンターで指摘された。なんと、娘のパスポー…

予算達成

いつも予算達成だな。なんとも羨ましい・・。 決められた計画。達成したことはあっただろうか?ここで言う計画とは夏休みに何をするか、と言った小学生の立てる目標ではない。仕事の話だ。 仕事には多くの計画がある。事業計画と呼ばれる。会社はその計画で…

ダイバート

眠くて仕方なかった。12時間のフライト、そして15時間時計がずれたのだから仕方なかった。米国の入国審査は何処も時間がかかるがシカゴ・オヘア空港は特に長い。長蛇の列をクリアし「ビジネス?カンコウ?シモン」とガムを噛みながらしゃべる審査官にスタン…

納期の無い仕事

「ツギハ スローデ イクゼ!」 東京ドームだった。例の粘っこい声でたどたどしい日本語を喋るのだった。するとキースとロニーはいつかアコースティックギターに持ち替えていた。次に始まったのは確かにダンスナンバーでもブルースでもカントリーでもロックン…

信頼関係・福之記5

ザイルパートナーと言う言葉がある。雪山でパーティを組む。ザイルで互いの身を結ぶのは一人が稜線から滑落したらもう一人が滑落防止姿勢を取りそれを防ぐ為だ。ピッケルと雪面に刺すと言うが、さてどれほどのものだろう。不幸にして流されることもあれば供…

笑いすぎと引きこもり

クラッカーを食べていた。家内とテレビでも見ながら馬鹿話でもしていたのか。何がそんなにおかしかったのだろう?アハハハ、と、大笑いしていた。すると噛み砕いたクラッカーの一かけらが迷子のように気管支に入ってしまった。そこから咳が止まらくなった。…

理解できない事

E=IR。「オームの法則」を習ったのは中学生だろうか。電圧=電流x抵抗 と考えるとああ成程と思う。学問は単純化すればわかりやすくなる例か。アマチュア無線技士という資格を取ったからにはやはり何処かで科学的な事柄に興味があった。それは当時少年漫画の…

今年もありがとう母校・箱根駅伝

もう脈は薄いかと思っていたら往路では断トツだった。今年こそは気合を入れて応援しようと思った。翌日何故か朝は早く目覚めてしまった。 部活動に打ち込んたわけもなく学業に専心したわけもない。ゼミにも入れなかった。まさに無為徒食だった。顔の広い友が…

手を抜かぬこと、出さぬこと

年末年始は決まりごとが多い。師走の半ばから年賀状を出さねばならぬ。大晦日が近づくとお節料理の準備やお年賀などを買うだろう。元旦は初詣、子供たちの帰省、年賀状チェック・・。もともとそんな決まり事を「古い価値観」と考え敢えて軽視していた。が加…

願かけ

願い事にすがりたい。こうなってほしい、こうあってほしい、そんな思いは誰もがあるだろう。多くの日本人は八百万が神様と言われるがやはり神社仏閣を前にすると誰が教えたわけでもないが柏手をうちを頭を下げる。クリスチャンはイエス様を仰ぎ十字を切りロ…

元旦の朝

♪ダッ・ダララ・ダララ・・ ああ、今年も始まるな。 昨夜はたった一本の缶ビールで眠くなってしまった。NHK-Eテレでベートーヴェン第9の演奏会放映を見ているうちは起きていたが、後は憶えていない。年越しそばを食べる事もなく寝てしまったのはこの二週間収…

仕事納め

あの気持ちはなんと書いたら良いのだろう・・。会社生活での仕事は顧客との関係性において日々が出来事の毎日ではあったが、大きく見ると概ね平坦だったかもしれない。新入社員の頃はまだ月一度は土曜日の出社があった。完全週休二日になる半歩手前だった。…

職場の第九

全くやられてしまった。職員の皆さんは帰宅したのでスピーカーの音量を上げたのだ。何故か鳥肌が立ちこれまた目頭が濡れてしまうのだから困りものだった。これははたして人類に存在する音楽なのか。ここは天上なのかと思う始末だった。 二十代三十代の頃に一…

年末年始大活躍

お買い物。師走も半ばを過ぎるとクリスマスソングが流れて慌ただしくなる。それを過ぎると流れるものは雅樂「春の海」に代わりお正月ムードが一気に高まる。年末は流通業から始まるようにも思える。彼らがそうもり立てるのかもしれない。アメヤ横丁には年末…

幸せのホルモン

がん病棟での日々。学生時代の仲間がすぐにグループラインを作ってくれた。自分は一方的にくだらない投稿を毎日山のように書いていた。脳にメスを入れて人格が変わったのか、止まぬ不安への裏返しなのか、それは凄まじいエネルギーだった。40年前の仲間たち…

高原の駅ピアノ

音楽が常にあるという事は素晴らしい。口ずさんでも良し、頭の中に流れているだけでも良し、もちろん演奏しても良し。エア指揮も良し。音楽は何らかの風景や思い出を頭の中に再現する。そこから自分の想像力は広がり、小さな旅が出来る。裏を返すと音楽のな…

離れてみるのも悪くない

鉄道旅。時間を潰すのなら車窓が最大の友になるだろう。風景に通暁した路線ならいざ知らず初めてやたまにしか乗らぬ路線ならば物珍しさもある。更にボックスシートの中距離列車で窓際に座れたら旅の楽しさは確約されたようなものだ。次に手を出すのはスマホ…

とんだ贅沢日

先日銭湯に行った。スーパー銭湯は高くていかないが銭湯なら手近だ。週に一度は行こうと地元の数軒を順に回っている。ラジウム温泉、ジェット風呂、秋田玉川温泉の北投石を使った風呂、電気風呂。日替わり薬湯。サウナは追加二百円だが五百円で十分楽しめる…

もう要らない

渋谷に来た。この街から東へ坂を登った先に母校がある。二年間の教養課程を神奈川県厚木市の新設キャンパスで過ごし専門課程からが渋谷キャンパスだった。 学校帰りはいつも渋谷の町に吸い込まれていた。センター街を歩き宇田川町交番の奥まで進むと輸入レコ…

縁結び

一目あったその日から恋の花咲くこともあるそんな貴女と見知らぬ貴方をデートで結ぶバンチDEデート そんなくだりをスルスルと言えるのは自分と同じ世代だろう。いまは知らないが当時は男女のカップルづくりの番組を明るくテレビで流していた。 男女の出会い…

高度一万メートルの友

旅行用のキャリーバックを手にしたのは久しぶりだった。かつては月に数度もゴロゴロとこれを玄関から転がしていた。機中泊を入れたとて五泊程度だろうか。これとビジネスバッグだけで出張していた。メンタルを病み閑職に移り海外出張は無くなった。もう不要…

困りもの

成人を迎えてから老境迄、体系の変わらない人などいるのだろうか?友人でも先輩でも、ずっとスリムな体系を維持している人もいる。スリムだったがあららと思うほど肥えてしまった人もいる。膨らんだり縮んだりする人もいる。立派に肥満を維持されている人も…

禁断

禁断と言う言葉がある。ある行為を差し止める事、法度。そう広辞苑には書いてある。禁断の果実を食べたのはアダムとイヴ。欲しくとも手にしないもの、すべきでないもの、そんな意味で使われるのだろう。禁断の愛は小説や歌劇のテーマになって来ただろう。大…

季節のご挨拶

お中元もお歳暮もずっと縁が無かった。自分の会社員時代には上司に季節のご挨拶を送るという習慣は既になくなっていた。もう他界した父は現役時代は百貨店に赴きこれぞと思う上司に送っていた。また父も又そんな風に思われていたのか当時の家にはそれらが多…

意味のないノート

♪オタマジャクシは蛙の子。そんな唱歌があった。もっともそのメロディにはさまざな歌詞がついていたような記憶があるが。実際にはアメリカの民謡でそこに日本人が歌詞をつけだだけのようだ。多くのバージョンがあるのもうなずける。 オタマジャクシと言うと…

共同作業

今では顔見世興行としか思えない、一台誰のためにやっているのかも定かで無い、そんな宴がかつて存在した。そこでは友人はかくし芸をして歌を唄い、お年寄りには詩吟や日本舞踊をする人もいた。当の宴の主たちは洋装から和装に。いやその逆か。着せ替え人形…

幸せの506グラム

ヨコカワぁ、ヨコカワぁ。機関車連結の為当駅で七分停車します。 誰もが扉から外に出る。すると首から平べったい箱を下げたオトウサン目掛けて皆殺到するのだった。中には千円札を既に握りしめているオジサンも、大きなお尻でドアをブロックして決して私の前…