日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

前向きな笑い

「高いな」。顔をゆがめてそう自然に出てしまった。しかしそこは人が多く、遠慮が働いた。声にせずに口を動かしただけだった。すると真正面でカートを押していた初老の女性が、僕の顔を見てにこりと笑った。とても嬉しそうだった。

「あれ、聞こえました?」
「はい、とても良く聞こえました」

互いに笑いあってしまった。彼女は口に出なかった僕の心の声を瞬時に読んだのだった。なぜか?それはきっと彼女もそう思っていたからだろう。

そこはスーパーの店内のお弁当コーナーだった。食事の具材を買いに行ったのだが時間も遅くなり今から作るのも面倒だった。出来あいの品を買って帰ろうと思った。どの弁当も五百円を切る事もなく安くは無かった。二年前から二割は上昇しただろうか。同時に中身も貧弱になったように思える。これでもあと百円安ければ買うのだが‥、そう思いながら棚を一回りして、最後に吐いた心の声だった。

この数年、全ての物価が体感できるように上昇している。不利に向かう為替と不安定な世界情勢。遠い世界の話ではなくボディブロウのように市民生活を直撃してくる。金利は実質ゼロ。物価上昇は何パーセントだろうか。現金の価値がますます失われていくのだった。それは誰もが痛切に感じている。

政府の方針が悪い。何をやっているのだ?今増税か?違うだろう、早く有効な手を打ってくれ。

そう言いたくなるが、しかし同時に思った。政府の無策をけしからんと口角泡を飛ばして毒づくよりも、そんな苦しみを憂いながらもそれを笑いとばした方がよほど心と体には良いだろう、と。今朝の彼女と共有した互いの笑顔はまさにそんな現代での福音ではなかろうか。どんな苦しい時も、文句を言うより時に諧謔の精神で跳ね飛ばすことが良いのではないか。心まで重くなったらすべてが悪い方向に回るだろう。笑いはをそれを逆回転させるブースターであると。

さて、今日は最後に半額シールの張られた品を手にしてようやく気が落ち着いた。これから買い物でも例の一言を口走りながら一体何人の方と笑いを共有できるだろうか。沢山笑いあおうと思っている。笑いは総てを前向きにしてくれるだろうから。

「高いな」無言の言葉でも口が動けば共感を得た。彼女もそう思っていたに違いないから。しかしそれを笑いとばせば人生は楽しくなる、そう僕は彼女の笑いを見て思った。幸いに「半額シール」商品を手にした。これでよし、と店を後にした。

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