日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

2023-01-01から1年間の記事一覧

共同作業

今では顔見世興行としか思えない、一台誰のためにやっているのかも定かで無い、そんな宴がかつて存在した。そこでは友人はかくし芸をして歌を唄い、お年寄りには詩吟や日本舞踊をする人もいた。当の宴の主たちは洋装から和装に。いやその逆か。着せ替え人形…

幸せの506グラム

ヨコカワぁ、ヨコカワぁ。機関車連結の為当駅で七分停車します。 誰もが扉から外に出る。すると首から平べったい箱を下げたオトウサン目掛けて皆殺到するのだった。中には千円札を既に握りしめているオジサンも、大きなお尻でドアをブロックして決して私の前…

レジェンドとアルチザン

御年90歳近いご主人に会うのは二度目だったが相変わらずのお話し好きで自分達の自転車を見ては楽しそうだった。いつものようにまずは店内に自転車を入れて、と言われた。古いブレーキ用のワイヤーを買おうと思っていたので、それでは、とお店に入れた。彼は…

何が起きてもおかしくない

仕事から帰宅すると妻が重たい顔をしていた。「あかねちゃんパパが無くなったんだって。あかねちゃんママから連絡があったのよ。まだ六十一歳だって。」 そんな事を言っていた。あかねちゃんとは我が長女と同い年の女の子だった。近所だったのでママ活の公園…

闇深き巡業

そこに居るはずだった。行ってみるとショーケースには居なかった。店員さんに聞くと「今朝お店を移りました」と言われたのだった。そんな話は以前もあった。そこは隣県のあるホームセンターだった。そこで偶然見かけた。元気もあり可愛かった。数か月後にそ…

息を吹き返した君

ここ数年ほど浮気をしていた。ずっと蜜月だった。全く一目惚れだった。べったリになったのはまずは見た目が良かったからだ。眉目秀麗、いや容姿端麗というべきかもしれない。いずれにせよそんな言葉はこのことかと思った。何よりも大切なのは触り心地だった…

よろしく頼むよ

我が家の玄関に一年間いたうさぎは来月で引退だ。来年は辰年だ。 仕事でアメリカ人と付き合いがあった。中国系の人だった。ディナーのときだろうか、干支の話になった。自分はイヤー・オブ・ラビットの生まれだと言うとそれは通じた。彼はイヤー・オブ・ドラ…

犬が食べないもの

子犬から飼い始め虹の橋を渡ってしまったその十二年の間、我が家の犬は何でも食べていた。犬は味音痴だが食いしん坊。食べ物はあればあるだけ、口にできるものは出来るだけ見境なく食べると聞いていたがまさにその通りだった。ある日帰宅すると向こうからシ…

まぶしい草野球 

♪ 風の外野席 手のひらかざして 青い背番号 確かめてみる♪ エラーの名手に 届けるランチは クローバーの上に転がしたまま・・ きっとこの歌は、この場所を描いたのだと思った。なによりも作詞・作曲者の家から近いのだから・・・。 自分の人生の中で東京都民…

ひとごろし

テレビをつける。ドラマをやっている。ほぼ必ず人が殺される。犯人は誰かと謎とき。その背景にある人間関係と彩を探る。犯人が捕まる場合も、犯人もまた死ぬ場合があるだろう。大河ドラマでも死ぬだろう。こちらは景気よく大量死するだろう。武将の生涯を描…

山里の恵み

ハイキングでも良い。里山散策でも良い。長閑な風景の中を歩いてみよう。するとよく目にする。籠と料金箱だけを置いた「無人野菜販売」コーナー。多くは畑の一角であり、高台に位置する農家への入り口にあるだろう。プラスチックのコンテナであり手製の篭で…

仲間と愉しむこと

ムジィチーレン。そんな言葉はいつ覚えたのだろう。ドイツ語は詳しくないがクラシック音楽を聞いて関連書籍を読んでいるといずれ触れる単語だろう。自分は吉田秀和の著作あたりで知ったのだろう。ムジィチーレンとは「音楽をする」という意味と理解していた…

ガソリンスタンドでのお正月

もうすぐお正月がやってくる。「お正月くらいは家に帰って来なさい」。そんな言葉があった。大学生になり初めての一人住まいだった。夏休みに帰省したばかりなのに母はそう言うのだった。「お正月くらい」とは何だろう。正月はそんなに大切なのだろうか?確…

図書の旅35 山とスキーとジャングルと 本多勝一

●山とスキーとジャングルと 本多勝一 山と渓谷社 1987年 本多勝一の単行本を初めてどこで目にしたのかを一生懸命思い出そうとしていた。しかし記憶は曖昧としている。確かあれは学生時代だった。僕は友人と二人で女友達の引っ越しを手伝ったのだったように思…

ラチェットの唄

ラチェットが心地よく鳴る道は心地よい。その音をオノマトペで再現を試みるが良い表現もない。低速はカタカタカタ?チリチリチリ?中速以上はザー、ジー、ジャーッ?どれも違う。 それがよく響く道とは何処だろう。サイクリストなら問うまでもなくそれを知っ…

元気が無いのだった

シートン動物記とファーブル昆虫記。どちらも子供の頃に読んだが内容は全く覚えていない。犬が好きだった。昆虫は小学生の頃はクワガタが好きだった。造成地に残るクヌギ林は彼らの宝庫だった。が家には姉が居て昆虫をひどく怖がることもあり自分の昆虫体験…

好奇心は罪作り

雛鳥が初めてみた鳥を親鳥と思う。本当か?しかしよく聞く話だ。今後の音楽観が決まるという意味では初めて聴いた音楽がそれに当たるだろうか?自分は小学生の頃バッハのフランス組曲で音楽に惹き込まれた。あの学習教材の赤いソノシートには感謝している。…

竹竿使い

♪たけやぁ竿だけぇ 拡声器から聞こえるその呼び声はかつてはよく町の中で聞いていた。最近は聞かなくなったように思う。 そもそも竹竿は何に使うのか、今の生活ではあまり用途も浮かばないだろう。布団や洗濯物を干すために使うのだが、今はベランダで干すこ…

白い建物

別に離婚の調停をしているわけでもない。もめごとがあったわけでもない。重たい雰囲気のその建物は実に約四十年振りだった。白い建物と思っていたが記憶違いだったのか。薄茶色だった。建物を出て海を間近にする公園まで歩いた事を覚えている。 玄関の扉を開…

弁慶の七つ道具

街行く人はただ思うだろう。これは何なのだろう。空に喧嘩でも売っているのかと。そして風が吹いても倒れないようにしてほしいものだと。パイプの骨が為す役割に多少なりとも想像がつく人は更に思うだろう。何かを傍受しているのだろうかと。被害妄想の傾向…

図書の旅34 ホテルカイザリン 近藤史恵

●ホテルカイザリン 近藤史恵 光文社 2023年 普段あまり本を読まない妻が「この本を読みたい」というのも珍しい事だった。図書館に申し込んだら数日で電話が掛かってきた。前回の閲覧が終わり返本されたという。奥付の履歴スタンプを見ると今年の十月に納品さ…

怒る人

「おりゃー何やってんだ。今すぐ窓を開けて飛び降りろ。」そんな怒号が聞こえる。ああまたか、と思う。赤鬼のような小太りの管理職が激しく怒っている。そこは異なる事業部の国内営業部のエリアだった。自社商品以外も、なんでも売ってしまうというその事業…

勘違い

K銀行のATMだった。そこで見慣れないカードを入れてメモした暗証番号を打ち込んだ。送金は無事に終わった。さて通帳に記帳しようとATMに開いて差し込んでもすぐに戻ってくる。三度トライした。「磁気カードエラーで読み取れません」と表示される。舌打ちをし…

七回目のワクチン

行政から案内が送られてくるたびに律儀に接種している。コロナワクチンだ。もう今回で七度めだった。 コロナワクチン第一回目接種の時はある種のパニックだったと思う。テレビでおなじみの方々も罹患し逝去され秘密裏のうちに火葬される。罹患すると隔絶され…

スキーと白河ラーメン

一杯のラーメンを目にしていた。その店は間違えなく二回目だった。そしてそれは三十年以上前の話だった。 あの頃毎冬が楽しみだった。行くと思うと胸が踊った。スキーだった。原田知世主演の映画のヒットもありスキー全盛期だった。男同士のスキーは技術的向…

食は力なり

「今日も明るく元気にやって行きましょう!」そんなポジティブなメッセージを書かれるブロガーさんがいらっしゃる。僕はいつも楽しみに読んでいる。彼女のブログにはいつもページの最後に一家の食卓の皿が写真でアップされている。手の込んだ料理は如何にも…

日本家屋

近所の谷戸に古民家がある。それは何処からか移設されたものだが当時の状態で保存されている。その回りもまた花木園と称して谷戸地形の自然が残っている。散歩がてらに妻と歩いてみた。 秋というのに暖かい。二人は共に露出した腕や足首を蚊に刺されていた。…

曇り空

ここしばらく続いていた暖かい日。それは「秋」という単語を暖気が何処かに蹴とばしてしまったのだろう。そう思うしかないものだった。午後遅くにウォーキングをすれば汗ばむほどだった。Tシャツに短パンで歩くとなんと蚊にも刺されてしまった。「霜月」と美…

図書の旅33 金閣寺 三島由紀夫

●金閣寺 三島由紀夫 新潮社1990年 怖かった。書棚に近づけなかった。いつも見ないふりをして通り過ぎていた。それでいいのか、という声がしたが無視していた。これを読んだら自分も肉体改造にいそしみ、結社を作り、日本刀を片手に何処かに殴り込むのではな…

友の作ったソバ

学生時代など仲間内は渾名で呼び合うことが多かった。中にはあだ名しか知らずに本名は何だっけ?という困った例もある。 子供番組ピンポンパン。あれに出ていた河童のキャラクターがいる。その名前で呼ばれていた友人がいる。やや人見知りの気があるのだろう…