日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

ヒーローのポスター

自分の中でヒーローは一体誰だっただろうか。子供の頃はこう答えただろう。「サンダーバードのヴァージル」か「ウルトラセブン」と。キャラクターではなく実存する人間ならどうだろう。人によりさまざまだろう。アイルトン・セナを上げる人もいればアントニオ・猪木を上げる人もいるかもしれない。長嶋茂雄だという人もいるだろう。自分は誰を上げるのか。

そこは中古楽器店だった。店の中ではキングクリムゾンが流れていた。ああ、久しぶりに聴いたな。「ポセイドンの目覚め」か。なかなか良いオーディオシステムなのだろう、あらためて当時のクリムゾンのカッコよさに痺れてしまった。ヴィンテージのギターがずらりと並ぶので見ているだけで時の経過を忘れた。広くない店内を一通り見て回るがどれも見ごたえたっぷりのギターだから時間がかかった。壁の一角に来て「おっ!」と声が出た。間違えなく彼こそがヒーローだとこのとき思った。

ダブルネックギターという楽器がある。上のネックには十二弦、下のネックは通常の六弦。ギブソンが出していたチェリーワイン色のギターはとあるギタリストの代名詞だった。大学生の時に友と見た映画。当時はYoutubeもなくバンドのライブ映像に触れることなどできなかった。スクリーンの上で動く彼を見た時は気が遠くなった。あまりにカッコよかったからだ。映像の中で彼はそれを肩にかけていた。マホガニーの単板で出来ているギブソンSGはせいぜい重量3キロだろう。しかしこちらはネックが二本あるのだからまあ6キロはあるだろうか?腰も痛くなるしとても持てないだろう。バッキングは十二弦で、ソロは六弦でと魔法のように思えた。

ロック界で初めてシャウト唱法をとりいれたと言われる金髪長髪のヴォーカリスト、複雑で重たいリズムをただき出す腕っぷしの太い伝説化したドラマー、そして縦横無尽に動き低温でバンドを支え更にはキーボードまでを兼務する寡黙な凄腕ベーシスト、そんな稀代の四人で出来ているバンドだった。ダブルネックギターを抱えファンの間ではドラゴンスーツと言われる白サテン生地に龍の刺繍をした衣装を着たギタリストの姿はそのバンドのいやロックのアイコンだった。1975年あたりのステージフォトだと思う。僕は彼らに感謝しなくてはいけなかった。ヘヴィで腹に来るサウンドを教えてくれたのは彼らだったから。ロックの扉を開いてくれた。そこから自分の聴く音楽の幅は広がったのだ。

彼のポスターを何度も眺めた。目の前のヴィンテージギターには手が出ないが、これはどうだ?ただの紙だから。よほど譲るか売って欲しいと店主に言いかけたが気持ちを入れ替えた。これを飾ってどうなるわけもない。それよりもこの店に来る人に見てもらい「ああ、やっぱりジミー・ペイジだよね、カッコいいな」と言われるべきだと思う。

レコード収集を趣味とする友人は先日、彼らレッド・ツェッペリンのセカンドアルバムのファーストプレスを手に入れたという。プレミアが沢山ついて値段は18万円。1969年の生なましいサウンド。いったいどんな音がするのだろうか?今度彼の防音室でどでかい音で聞かせてもらいたいと思う。自分のCDとは明らかに違うのだろうから。

それを聞くとやはりポスターが欲しくなりそうだった。いつまでもワクワクできるものがあるというのは嬉しい事と思った。

白のドラゴンスーツを着てチェリーのギブソンダブルネック。そしてオレンジサンバーストのレスポール、ドラゴン模様サイケ塗装のテレキャスター、青いストラトキャスター、黒白のダンエレクトロ。さて、あなたの好みはどれだろう?自分は・・・全てだ。

 

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