日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

魔法の調味料

パスタは美味しい。初めて食べたのは何時だろう。母親が作っていたものが最初だろう。それはフニャフニャの麺をケチャップで炒めたようなものだった。大学の学生食堂ではミートソースのスパゲティがあった。挽肉のソースが美味しかった。がこれまた柔らかな麺だった。が250円という値段は魅力的だった。それは「スパミ」と略して呼ばれ多くの学生から人気があった。食べ終わると口の周りが赤茶になるので女子学生を前にする時は無意識で手で口を拭っていた。

初めてそれらしいパスタを食べたのは渋谷だった。壁の穴という名前のレストランだったろうか。それはソフト麵にミートソースをかけたものではなくもっと手が込んでいた。とても美味しかったが何を食べたのかも覚えていないのは憧れの女性と向かい合わせだったからだろう。左手にスプーンを持ち右手のフォークでパスタをスプーンの上でぐるりと巻いて食べるのか、、、。ラーメンではないからすすっては駄目だな、そんな事を知った。

社会人になった頃からブームもあったのかイタリアンレストランが増えた。ただリストランテ、トラットリア、オステリアなどの違いは知らなかった。友人が企画してくれた自分達の結婚式の二次会は六本木のイタリアンだった。カジュアルで気楽な店だった。出張で行ったマンハッタンのリトル・イタリーの街並みにはずらりとイタリア国旗が並んでいた。そこで初めて外国人の手によるパスタを食べた。とても美味しかった。シーフードのトマトソース、そしてベーシックなアリオリオぺぺロンチーノだっただろうか。映画で見るようなイタリアンマフィアの銃の乱射がある訳もなく満喫できた。

ドイツ駐在時には仕事で毎月ミラノに行っていた。昼はいつも気楽なピッツェリアかトラットリアだっただろう。フランス人と同じくランチにワインはつきものだったが仕事の相手は昼間はワインを止めていた。イージーゴーイングな人たちと思っていたが意外と几帳面だった。その代りドルチェを楽しんだ。バニラアイスクリームにエスプレッソをかける。ほろ苦さと甘さが絶妙で、何とかの一つ覚えで自分はアフォガートばかりを頼んでいた。

パスタと言ってもスパゲティばかりではなくリングィネ、タリアッテレ、カッペリーネ。それにこれまた多くのショートパスタ。色々ありそれぞれに似合うソースもある。奥が深くいつも何を頼むか悩むのも楽しみだった。

いつしかパスタは自分でそれらしく造るようになってきたが、アリオリオペペロンチーノかそれにトマト缶を加えてのトマトソースばかりになった。時に自己流で醤油や出汁、味噌を使い和風にもするが、基本は具材が変わるだけだった。手のかかるラグーソースのパスタなどは最近余り作らなくなった。アボガドとサーモンのカッペリーニはこれからの季節だろう。時折イタリア料理ではないナポリタンも作る。・

それらのレシピをネットなどで見るとだいたいこう書いてある。「ここでパスタの茹で汁を加え・・・」と。茹で汁を加えたら味が薄くなるではないか?そう思い半信半疑だった。が、茹で汁を入れ熱を加えてソースを乳化させると味に深みが出た。「これが味のキモだったのか!」友人からそれを教わった時は感心した。以来少しだけパスタ料理の腕が上がったように思う。

そんな魔法の調味料がいったいどんな味なのかは知らなかった。今日の昼食はバジルソースを使ったパスタだった。もちろんそれは瓶詰の出来あいのソースだった。挽肉と玉ネギ、にんにくを加えただけだった。最後にパスタの茹で汁を加えて加熱する。はて、この茹で汁は一体どんな味なのだろうか。お椀にあけて飲んでみた・・。

パスタ100g・お湯1L・塩小さじ1というのが茹で汁の教科書だが、二人前200グラムとすると2リットル必要になる。流石にそれは無理でいつも水は減らし気味。塩は適当に入れている。そんな茹で汁はややしょっぱい。そしてパスタから溶け出したであろうでんぷんを感じる。これか!乳化の理由が分かった。でんぷんとオリーブオイルが溶けあい微妙なコクがでるのだな、と納得した。ソバ屋でモリ蕎麦を頼むと最後に蕎麦湯が出てくる。茹で汁だ。それをそのまま飲むとこれもまたソバの香りのするどろりとした汁だ。それと同じだとわかった。

正体が分かったのでこれからは味が薄れるなどあまり気にしなく使うといいだろう。何事も知ってしまえば安心に使える。知らなければおそるおそるのままだった。こんな事は自分の身の回りにもまだまだあるのではないだろうか。それは損をすることになる。何事もトライということか。

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