2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧
まもなく中秋の名月だな。しっかり見よう、そんなふうに三日ほど前から思っていた。写真に撮ろうと一眼に300㎜の望遠レンズをつけて準備をしておいた。昨日も一昨日も南西の空に高く丸い月が出ていたが少しだけ欠けていた。明日は期待できるな、と思った。 …
神父様。牧師様。はて違いは何だろう。ドリフターズでいかりや長介が扮していたのはどちらだろう。結婚式を教会であげたなら彼はこう言っただろう。「辞める時も健やかなる時も彼・彼女を愛しますか」と。とても素敵な言葉だと思う。黒い道衣を着て教え示し…
「あなたのことが好きなんです。お付き合いしてください」。 文字数はわずか二十五字程度しかない。短くして心を動かすものだった。 恋文とは甘酸っぱい。中学生だった。ある日背の高い女子がやってきて教室の隅で手渡してくれたのが白い封筒だった。「サチ…
他界した父の戸籍を取り寄せる必要があった。生まれてから逝去するまでの全てという事だった。区役所に行けばすぐ済むだろうと思っていた。父の住んでいた区の役所では本籍地は何処かをまず聞かれた。わからないと取れないという。父の本籍地など知るわけが…
常に平穏な心を保ちたい。何があっても激さず怒らず、気落ちもしない。喜怒哀楽で喜と楽だけあればどんなに人生は過ごしやすいだろうか。怒は周囲を破壊的に巻き込むし、哀は自分の首を真綿で締める。いずれもネガティブこの上ない感情だ。 どうやら僕は喜怒…
スーパーマーケットに買い物に行く頻度は出来るだけ下げたいと思っている。行くとどうしても目につくものに手を出してしまう。お菓子など最たるものだろう。一回の買い物で数日分の食材を買いたいところだが、あいにくと買ったものをしっかり消費できないこ…
週に一度は楽をしよう。そう決めてからしばらく経つ。楽をする、とはリラックスするという事で、簡単に言うと近場の銭湯に行く事だ。夏場はシャワーばかり。自宅の風呂とて体洗いに1分、湯船に2分。合計3分もかからずに出てくるのだからまったくカラスの行水…
すっかり忘れていた頃に郵便受けに封書が届いていた。ああ、そういえば結果発表の時期だったな、と思いだした。前回は何の通知も来なかった。今回は茶色い封筒が来た。なんだろうと封を開けた。 国語は好きだったが作文は苦手だった。夏休みの宿題にはいつも…
今年は還暦だった。知っていたので新春に厄除けにいったのは栃木の佐野市だった。街のお大師様は関東三大厄除け大師と言われるらしい。ならば隣町の川崎大師でも良かったのだがわざわざ佐野市迄行ったのはサイクリングと佐野ラーメンを目的にしていたからだ…
こんなことで家族四人が顔を合わせるのも皮肉だった。顔を合わせた誰もが目に涙を浮かべていた。気落ちしないようにと娘はケーキの箱を持ってきた。苺のケーキが入っていた。その箱を見て妻は涙ぐんだ。ああ、我が家に来たときもこんな箱だったな、と。そこ…
ストローの空袋がある。それを指に絡めたり折ったり丸めたり。一体どんな時だろう。例えば片思いの女性と二人でお茶をしている。彼は眼の前の素敵な女性に好意を伝えたい。しかし彼女はつまらなさそうな顔をしている。何とか場をもたせたい。失望させたくな…
子供のころから肥満体だった。結婚後数年間にかけてはさらに膨張した。流石にヤバイ、と甘い清涼飲料やスナックを控えたら少しは減った。しかし概ねBMIは27あたりだった。BMI25が正常体と肥満体のしきいとなる。自分の場合それは体重68.5キロになる。 BMI24…
「旧・東ドイツのエリアはこことは違う」そう言っていたのはドイツで働いていた頃の現地人社員だった。東西ドイツが統一され20年以上も経っていたが実際多くの旧・西ドイツ市民には統一後の税金が旧東ドイツの復興や格差是正に使われたと不満が多かったよう…
他人の話を聞く事で知識だけが先行する頭でっかちの人。そんな人を耳年増と呼ぶのだろうと思っていた。しかしそれは勘違いだった。広辞苑はこう書いているいる。「(若い女性が)他人の話を聞く事で、経験はないが充分な知識を得ている事。多く、性的な知識…
自分の脳の画像などなかなか見る機会はない。幸か不幸か脳腫瘍になったおかげで摘出前と摘出後から今日まで、病院には自分の脳のCT画像が時系列に保存されている。何時まで経っても取れないふらつき感。疲労は何だろう。神経内科の医師に脳の画像を見てもら…
山歩き会の会合の為に港区高輪のアウトドア店に行った。一階がアウトドアショップで地下に同店が経営するナチュラル・ダイニングカフェがある。一階で山道具などを見て気分を高め階下のダイニングでゆっくりと山の計画を練るのだった。 折角アウトドアの計画…
木漏れ日なのに陽の光に力がなかった。しかしそれでも空が明るいのは何故だろう。ぼんやりと見上げて気がついた。 いくつかの広葉樹の葉が少し色づいているのだった。弱くなった光でも明るく色づいた葉の力を借りて辺りを明るくしているのだった。 もうそん…
信用金庫に行った。街の中にある小さな支店でも駅前に立つ都市銀行や地方銀行とは違い、信用金庫は比較的空いている。いつもはATMだがカウンターまで行ったのは、先日世を去った父親の預金口座を締めるためだった。 受付で応対してくれた女性担当者さんは父…
横浜市の一番東に位置する鶴見という土地に住んだ期間は幼稚園から小1まで、そして大学四年から、6年間の海外転勤を除き今日まで。40年を越えていた。街は随分と変わった。ずっとJR線を挟んでの末吉台地と呼ばれる西側の高台に住んでいる。昭和40年代初めの…
ずっと申し訳ないと思うことがあった。それはもう五十年近く心に残っている。贖罪すべきだった。時折それは、自分の行動意欲の邪魔になってきた。 悪戯だった。悪戯と言うよりも集団いじめというべきかもしれない。中学一年生。体に第二次性徴が起きる頃。体…
軍艦の大砲が戦争を左右したのは日露戦争までだろうか。太平洋戦争では46センチ主砲を備えた史上最大の戦艦大和も武蔵も、4連主砲塔のプリンス・オブ・ウェールズも、また12本の36センチ砲を載せたアリゾナもその威力を見せずして海の底に沈んだ。大艦巨砲主…
近所のスーパーに出かけた。見たことのある高齢の女性が手押しカートに頼ってゆっくりと歩いていた。隣には彼女の息子さんと思しき男性が付き添っていた。 少し昔の記憶を紐解いて思い出した。僕は彼女を週に数度車に乗せていたのだった。彼女は自分が勤務し…
川辺に座り込んでしばらく波を見ていた。護岸工事でセメントの堤防ばかりの都会の川にしては貝殻の堆積した天然の浜があるのも不思議だった。風がある日でもないのに水面に波が立っていた。川は流れるものでゆっくりたゆたうものでもないかもしれない。いや…
脳腫瘍を摘出し化学治療を終えた時、山は遥かに遠い存在に思えた。 実際体はふらつき頭に痺れは残った。今もそれは概ね変わらない。しかし山やサイクリングといった体を使う趣味への思いは強く少しづつ試してきた。登り残していた山形の朝日連峰など気合のい…
アクション・ムービーを映画館で見よう、そう妻と話していた。何作も続いているスパイものの最新作。テレビで流れる予告編では主人公がバイクにまたがりアクセル全開で尾根道を駆け上がりそのまま岩山の頂上からダイブする、という相変わらず固唾をのむシー…
クリアファイルに入れたコピー紙の束が出てきた。入院中に行動療法士さんから与えられた課題用紙。新聞のコラムを毎日書き写してください。横書きコラムは縦書きにして、縦書きコラムは横書きにして書き写すのですよ…。それは脳外科手術をした自分にとって不…
どこかで道を間違えたのだろうか。会社を早期退職し第2の人生が始まろうとする辺りから自分の周りには予期せぬ出来事が起きてくる。肉親の死、自身の病、そんな風に大切な人も自分も少しづつ世を去りあるいは病になっていく。どこかで足を外し違った道と気づ…
年齢が50歳だとする。日めくりカレンダーを重ねたなら365を乗ずるので18,250枚になる。高さはいかほどなのだろう。一万円札の厚さは約0.1mmという。仮に日めくりカレンダーと一万円札が同じ厚みとし、それを積み上げていけば50歳とは1,825㎜、つまり182.5…
繁華街で目的の店に行く。するとたいてい寄ってくるのは「呼び込み」氏だった。「店はもうお決まりでしたか?」「今ならハッピーアワーですよ」と。結構わずらわしいのがだ、ビールもハイボールも安くなるハッピーアワーなら悪くない。話を聞いて店に入るこ…
ある旋律が頭の中に鳴り目が覚めた。まだ早朝だった。 その旋律には覚えがあった。しかし題名が分からなかった。今は便利なものでスマホ相手にそのメロディを口ずさめばたちどころに曲名が動画サイトの映像とともに出てくる。ははあなるほど、と思った。もう…