日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

山の湯

登山の楽しみの一つは、山麓の湯だろう。三十年以上昔の政府の肝いり政策・ふるさと創生事業で支給された支援金を元で多くの温泉施設が至る所にできた。下山して緊張が解ける。そこに暖かい湯がある。いつか山が目的なのか湯が目的なのかわからなくなる。有…

僕の椅子

腰かけると少し音が鳴るのは油が切れているからだろう。もともと余りに大きくて決して気にはいってはいなかったのだ。今の家に引っ越すときに自分の部屋らしい一角を居間の角に設けた。狭い敷地に容積率ぎりぎりまで無理やり立てた三階建てだったが、寝室に…

グルーヴィな日々

グルーブという単語を知ったのは何時だろう。間違いなくそれはアース・ウィンドアンドファイヤ(EW&F)の1981年のナンバー「Let's Groove」だったろう。リアルタイムだった。敢えて邦題にするならば「グルーブしようぜ」になるだろうか。レッド・ツェッペリ…

遅咲きのスイセン

師走から年が明けた睦月あたり、千葉は内房に足を運べば一足早い春に会える。それはスイセンのお花畑だ。スイセンは日本の在来種ではないという。球根を誰かが植えたものが、あるいはそれが野生化したのかかは分からない。 内房には「スイセンロード」と呼ば…

陽だまりとからっ風

とある群馬県の古刹だった。古刹の裏手には湿地と澄んだ沼があった。数年前に来た時には気づかなかったが砂利敷の駐車場の隣にアスファルトの大きな駐車場があった。それほど有名とも思えぬこの場所にはやや不釣り合いな大きさだった。しかしその一角に真新…

遊びもほどほどに

ロックを聴き始めたころはギターの音色は歪んだものと思っていた。そんな音ばかり聞いていた。しかし今では切れ味の良いリズムギターが耳に心地よいのだから音楽的嗜好は変わるものだと思う。それらの音を出すコンパクトエフェクターはギタリストにとっては…

ソラナックスとゾルビデム

今までに数えた羊は何匹だろう。その数は数えていないがそんな民間伝承のお世話になったことはある。しかしあまり効果もなく、かえって開き直ってガバっと布団を剥いで起きてしまうことのほうが多かった。すると明日のことが気になり目がますます冴える。仕…

やはりそうなりますか

学生時代の友とは面白い。わずか四年とは言え同じ時間を共有した。当時の彼等の物の言い方も考え方も表情も声もすべて頭に入っているのだから、当時とはシームレスに会話が進むのだった。 あの頃は楽しかったわね。還暦を超えるなんて思ってなかったなぁ、そ…

つがい

♪しょ、しょ、しょじょじ、しょじょ寺の庭は・・・ さて皆出て来い来い来い、となるのだろうか。てっきりこの唱歌はこのお寺が場所なのか、とずっと思っていたがどうもそれは違うようだった。千葉の木更津らしい。しかし童謡の場所を探し当てて何の得があろ…

雪の残滓

白一色の無機質な壁、重く響く画像診断機の音。雪が降り続くとすべての風景は白に閉ざされる。美しいものも汚れたものも覆われて、区別がつかなくなる。白とは不思議な色だ、と滉一は思った。 自分の病で来たのではないにも関わらず、白い部屋は何故か心を落…

こだわる人

何事も自分の好きなことに熱中している人は傍から見ていて面白い。と言うよりも、良くもそこまで掘り下げるなと関心してしまう。手始めに彼にそれを質問した時、あまりのその世界の奥深さと彼のこだわりに畏れ入ってしまった。 彼は嬉しそうだった。念願の物…

迷走

ここの所苦戦している。堅苦しく窮屈なのは何事も思った通り事が進まないからだった。鶏が先か卵が先か、ブログに挙げる原稿の話もうまくいかない。ネタが溢れている訳もない。それは部屋の中で座っていると浮かぶという質のものではない。妻と話をする中で…

泪の量

一日に一体どれだけの涙が出るのだろう。人間の体の半分以上は水分という。体はある意味貯水池なのかとも思える。そこから出ていく水分と言えば、排泄物、汗、そして泪だろう。すると体重六十キロならば三十リットルの水分を放出できるのか。そんは話は医学…

迷ったうえで・真空管自作アンプ2

数か月前に造り上げた真空管アンプ。実は一度しか火を入れていない。卓上で聴く分にはこれも手作りのデジタルアンプと自分で組んだスピーカーユニットで満足のいく音が出ているからだった。1970年代までのブラックミュージックにロックは音が大きいほど心地…

オンライン診療

ここ数日悪寒が取れなかった。職場からの帰りで寒風を浴びたら体の芯から胴震いだった。温かい風呂に無理やり入ったが風呂から出るとまたもや歯が鳴った。 案の定夜半には発熱だった。布団にくるまり蓑虫のように寝るだけだったが寒気が取れない。頓服として…

VY FBな日

・・・- -・-- ・・-・ -・・・ 僕はそんな符号を口に出していた。 ・をト、-をツーで読み替えるとトトトツー、ツートツーツー、トトツート、ツートトトになる。何じゃこれはと思うが覚えてしまえばわけない話だ。その気になればだれでも覚えられる。…

図書の旅38 海と毒薬 遠藤周作

●海と毒薬 遠藤周作 角川文庫 昭和35年 コロナが世の中を変えてから発熱程度で気軽に通院する事が出来なくなった。発熱外来と言う予約制の診療科が出来た。病院に来る人の多くは発熱だろうから発熱外来とは何だろう、と思うのだった。昨年末に軽い誤嚥を起こ…

邪心の入る余地はない

関東には三大厄除け大師がある。何処だろうと調べるが川崎のお大師様と足立区の西新井大師はよく出てくるがもう一つとなると香取市の観福寺と書かれているサイトもある。すべてが真言宗だ。栃木の佐野厄除大師を挙げているものもある。調べると天台宗だった…

商売上手

昔から米は十キロの袋だった。いつしかそれは五キロになり今では二キロを買っている。家族も減りそこまでご飯を食べるわけもなく、麺類やパンも食べる。それに二人の食卓なのだからなかなか減らない。二キロはシルバーエイジには適当なサイズだった。 お米二…

物好きが興ずると

これ何だかわかる?と友人は嬉しそうに黒いポリカのパーツを見せるのだ。ああ、そう来たか!と思う。 乗り心地の良い車ではない。小回りも苦手だ。車に快適さを求めるのなら選ぶまい。しかし三代にわたり三台乗り続けている。遊び心が刺激されいつでも青年に…

右か左か

下山路だった。目指した山頂は先程まで足元にあった。都心を遠望できる冬枯れの低山だった。登山はピークを踏むばかりでなく無事に下山することで完結する。山頂を踏むと誰もが安心し何かを成し遂げた気がするのだろうか、道間違い、滑落、疲労による行動不…

風に揺れる耳

それは決してそよ風ではなかった。高速道路を走るトラックの荷台だった。幌はかかっているが捲れた布から大きな塊が見えた。番号札のついた耳が風に揺れていた。黒い肌の中に埋まったような真っ黒な瞳が少し動いた。高原のそよ風なら気持ちよかろう。しかし…

空想の庭

もし自分の家に広い土地があったら、どんな庭にしたいのだろう? 林の中に棲んでみたいという思いが芽生えたのはやはりアウトドア誌のお陰だろう。そんな雑誌を楽しむようになったのは社会人になってすぐだった。しかし生活の拠点は会社と家のある首都圏に限…

パタカラ体操

職場の二階は高齢者デイサービス施設だがそこに「パタカラ体操」と書かれたポスターがある。職員の手作りだがお爺さんとお婆さんが並んで大きく口を開けてパ・タ・カ・ラと言っている絵が描かれている。なかなかに可愛い昭和のご老人のイラストだった。入れ…

余り物は何でも使え

名古屋という街には余り直接的な縁がない。横浜の小学校を卒業した春に父は広島に転勤となった。そこへ向かう途中に何故か名古屋で一泊した。お城は立派だがコンクリート製だった。むしろその堀の中に敷かれていたレールに目が行った。名鉄瀬戸線。電車好き…

お母さんの店

焦げ茶色のやたらによく震える電車を降りると駅前から砂利道だった。ダンプカーの上げる砂埃を払いながら歩くと道沿いにぽつんと小さな建物があった。店舗と民家が同じ建物なのだろうか、そこからは昼ご飯の匂いが漂っていた。ガラガラとガラス扉を開けると…

バゲット一本

どの国にも美味しいパンがある。日本なら食パンだろうか。イギリスのパンから来たようだが日本の食パンは柔らかさを追求しているようだ。実際テレビのコマーシャルも生の食パンが如何にふわりと千切れるかを見せるシーンが多い。似た形でもこれをイギリスで…

俊英の筆

自宅で新聞を取らなくなって久しい。時事ニュースはネットが早い。経済記事は日経電子サイトがあった。こちらは有料だったがいつでも気軽に読めた。それもあり新聞を止めた。朝4時半にポストに投函される音で目覚める事もあったがそれもなくなった。 日経電…

我慢比べ

初めて飲んだ酒はビールだったか。いやもしかしたらお正月のお屠蘇だっただろう。たしかに子供でも一口程度は唇を濡らしたかもしれない。 大っぴらに飲みだしたのは大学生になってからだ。当時は十八歳であれお構い無し、そんな時代だった。一人住まいを始め…

北へ向かう鳥

春めいた一日だった。朝の散歩は犬の排泄も兼ねるので欠かせない。風も柔らかい。有意義な日にしようと思う。 朝食を食べながら考えた。県の西部へ梅を見に行こうかと。小田原の近郊は曽我の地に梅林がある。数年前、もしかしたら自分がまだ会社員の頃だった…