日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧

水風呂

自分が住む八ケ岳南麓の高原には日帰り温泉が多い。八ヶ岳の逸話としてはこんなものがある。相まみえる富士山と背比べの戦いをした。富士山より背の高い八ヶ岳は富士山を怒らせてしまいボカンと殴れれてしまう。殴られて山は砕けて八つの峰となった・・。確…

通せんぼ

犬の繁殖施設で五年ほど過ごした彼は一体どんな環境で育ったのだろう。人間もそうだが、犬もまた育った環境、幼少期の記憶がその後の性格に大きな影響を与えるように思う。彼が繁殖施設から保護団体に保護されたのはその施設の経営者が何らかの理由で施設の…

モンペ買ったら

幸いに今日は高曇りだった。一月前に刈った庭の雑草が伸び放題となり折角植えた野草やグランドカバーが埋もれてしまった。余りの雑草軍の戦力にやる気を失った。きっと太平洋の島で数えられぬ上陸用舟艇に乗ってやってくる米軍を見た日本軍守備隊もそう感じ…

アームストロング・コリンズ・オルドリン

娘が会社に復帰してから数か月経った。都会では保育園に入れるのも大変だから、と探し回りやっと手にした保育園の空き枠。そこに息子を通わすためには彼が一歳になる前に預け入れる必要があったという。一歳児を越えると保育園の競争率は更に上がってしまう…

甲斐からの山・霧訪山

・霧訪山 長野県塩尻市1306m 自分が住む海抜九百メートルの高原台地は時として霧に包まれる。それは駆け足で空間を蹂躙するような大きな塊でやってくることもあれば、いつの間にか忍び足で風景に浸潤していることもある。こいつらの正体は何だ?と捕まえよう…

錆びたクワ

「私の言うとおりに学ばないのならば、宿題をやってこなければ、どうぞこの部屋から出て行ってください」 それが彼が自身の自己紹介の後に最初に口にした言葉だった。そこは勤務していた会社とそのグループ企業の研修センターだった。事前に分厚い本を買って…

豊作ゆえに

庭に作った家庭菜園。わずか八平米という狭いものだが、そんな畑が出来たのはちょうど一年前辺りだった。庭木を植えるために造園屋さんが小さなユンボで敷地の奥に入ってきた。ユンボはまずはこちらが注文していたブナの樹を二本、そしてコナラの樹を一本を…

ロックねーちゃん

今度の曲、何にしようか? 社会人なり立ての頃のバンド活動は学生時代のそれの延長でもあり、誰もがやりたい曲を持ち寄ってきた。バンドとしてのコンセプトもないのだからその音の方向はバラバラだった。自分が好きな曲を演奏出来ることが大切だった。そんな…

達成・充実・陶酔・喪失

スポットライトが眩しい。浴びせなくていいよと思う。ああ途中で逃げ出したい、といつも思う。まだ五曲も残っているのか、やだなぁ、そう思う。それが減りあと三曲となる。あと二曲、あとこれをやれば解放される…。演目が終わるのが嬉しいのか、淋しいのかも…

クワガタ

高原のコンビニ。建物の壁に何かが貼り付いている。どうせカメムシだろうとおもったが大きい。立派なクワがあり、クワガタだった。 クワガタは少年にとってカブトムシと同じほど人気がある。クワガタ派とカブトムシ派に人気が二分したように思う、自分はクワ…

漏洩

間違えなく何処かに漏れてしまった。そう思うのだった。 Eメールを真面目に見なくなって久しい。ソフトの受信箱に来るメールの題名は見るけれど開く事はほとんどない。送り主に心当たりがあり関心ある事項が書かれているときだけ開いてみる。 様々なメールが…

ヒグラシの夕べ

窓を開けてソファに横たわった。移住した高原の家は広くはない。二人と一匹が快適に住めれば良いので、ダウンサイズを心掛け小さめな造りとした。その為にはたくさんの物を捨てた。ソファもそうだった。ガランとした新しい部屋に感動した。しかしゴロリとな…

重たい直方体

週に二回だけ入荷するという。それを求めてわざわざ山の中腹の別荘地からカラマツ林を抜けて降りてくるご婦人を知っている。散歩の途中で何度も顔を合わせ知り合いとなった。話好きな自分ではあるが彼女もそうだった。そんな中で教えてもらったのだった。 水…

おままごと

なぁ、ままごとみたいだよな。いい歳こいたのになぁワシら。おままごと、それでいいんじゃない? ウッドデッキに置いたテーブル上のオイルランタンに火をつけた。そこにワイングラスを二つ、バゲットを四つに切りレタスにチーズ、トマトにベーコンを挟んで切…

じっくりと登る

あちちち、慌てて人差し指を水に浸した。コーヒーメーカーの底には耐熱ガラスのコーヒーサーバーを載せるようになっているが、そこが本当に熱いのか探ろうとふと触ってしまった。右手の人差し指だった。あまり何も気にしなくて触ってしまう。何だろうこの無…

期日前投票

ここしばらく長閑な高原の地にも選挙カーが走っている。候補者の名前を連呼するのだった。初めて選挙権を持った時、自分は神奈川県の中央部に住んでいた。さていったい何の投票だったか、全く覚えていない。もしかしたら市長選だったかもしれないし県知事選…

珈琲の日

コーヒーが自分にとり日常的になったのは何時からなのだろう。小学生の頃、北杜夫と遠藤周作という自分の読書癖に大きな影響を与えた二人が森の中で珈琲を飲むテレビコマーシャルがあった。どくとるマンボウと狐狸庵先生が飲む珈琲はインスタントではあった…

初夏のマチネ

八ケ岳山麓には音楽が溢れている、そう実感する。確かにウィーン・フィルやベルリン・フィルがこの地にやって来ることはないだろうが、小さな音楽会なら森のペンションでも、高原の音楽堂でも、里山のホールでも、プロでもアマチュアでも何処でもいつも聞く…

石探し

栃木県は佐野でラーメンを食べた帰りか、いや佐野から宇都宮までのサイクリングの途中だったか。佐野市と栃木市の境あたりの低い山に登った。海抜128メートルだが関東平野と日光や足尾の山との境にあるのだから眺めが良いだろうと。 山道の縁は切れ落ちて…

夢うつつ

電車にのる。目をつむる。眠くなり意識は遠のく。とある駅に着いた。なぜだろう駅のホームに回転木馬がある。珍しい。お父さんが子どもをそこに懸命に乗せようとしている。扉が閉まりそうだ。僕も娘を乗せようと慌てて彼女を抱え電車を出た。ガタンと車両が…

変奏曲

変奏曲と言う音楽がある。一つのテーマがある。それをもとに和製やリズム、そして旋律も変化させていく曲だ。不眠に悩む伯爵の為に書いたと言われるバッハのゴルドベルク変奏曲が有名だろうか。しかし一時間にわたり様々に展開してゆくその変奏曲を聴いてい…

梅実る小径

犬の散歩を兼ねたいつものコースだった。つい先日にタケノコを抜いたのも、蕗を手に余るほど摘んだのもこの場所だった。 この季節は朝九時には太陽もさんさんとして海抜900メートルでも暑い。太陽の光は強烈な熱量を放射する。彼は何を燃料としてあんなふ…

悲しいトンカツ

会社員時代の同期がSNSに投稿していた。彼は今日お昼に会社の近くでトンカツを食べたと。美味しそうな揚がり具合で香りが漂ってきそうにみえた。 とんかつは大好きだ。それも上品なヒレではなく出来れば下品なロースが。食べ応えを満たしてくれるから。東…

自家製の一品

春先に植えた野菜たちが大変なことになっている。わずか八平方メートルの小さな畑なのだが、収穫期で気ぜわしいのだった。厳しい冬が明けて最初にやったことは畑の鍬入れだった。そして旺盛な雑草を刈る。小さめの畑にして良かった、とこの時に感じる。この…

甲斐からの山・茅ケ岳

・茅ケ岳 1704メートル 山梨県北杜市・韮崎市 残念だっただろうな、この山もさぞやインデックスに付け加え立っただろうに。小さな石碑を前にしてそう思った。しかし実際は大木のようにそこで倒れてしまい直ぐにいびきをかいたと言われているから苦しむことも…

かすがい

ある金具を探していた。庭に枕木を敷いた。各々の枕木が動かないように固定したい。直ぐに頭に浮かんだ金具があるがあれは何と言う名前だろう。ともかくもまずはホームセンターに行けばよいのだった。 自分の欲しい金具を店員さんに伝えた。「並んだ木材を一…

夢中になる前に

バンドのリハが続いている。初めてその曲を聴くと一体どうなっているのか、何を弾いているのかも聞き取れないし、変拍子について行けない。実際にメンバーでやってみると到底纏まらない。譜面がネットで見つかるような曲でもないので誰もがコードを耳で聞き…

わらしべ長者

順風な会社員生活ではなかった。そもそも「他で頑張ってくれませんか?」と定年を三年後にして会社を追い出されたのだから。部下からの突き上げでメンタルを病み、望んで閑職へ。そしてコロナとなり希望退職を選んだ。すぐに決まったキャリアカウンセラーの…

旅に出ませんか   

うーん、うーんと唸っている。それは緩やかで小さな唸りだった。それで僕は目が覚めた。寝言だった。横を向いて寝ている。寝顔を見た。穏やかな顔で少し嬉しそうにもみえた。そう、それはまるで幼女のような顔だった。しかし鼻の上に横ジワが数本ある。これ…

熨斗袋二枚

実家の鍵を開けた。住む人を失うと家の劣化が早くなる。独り住まいをしていた母を自分の地元の近くの施設に引き取った以上は時折この家の風を通す必要がある。 母は一昨年に銀行の届出印をなくしてしまい、自分はあらゆる引き出しをチェックしたが見つからな…