2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧
大晦日を迎えた。1週間分ほど書きためている原稿はブログのサイトにある。そこの「公開」ボタンを押せば終わりだが今日ばかりは書き下ろしにしよう、と目覚めて決めた。 今日は何日で何曜日?そう言われてもすぐには答えが出てこない日が続く。会社員の頃は…
高原のとある観光スポットで働いている。毎日多くの観光の方が見える。独りで来る人、仲良しグループで来る人、会社関連で来る人、そして家族や夫婦で来る人…。様々だった。グループで来る人はたいていこの場所のレストランやラウンジでお酒を飲み赤くなって…
カメラと言えば今は誰もがスマホだろう。ズームもあるしレタッチまでしてくれるのだから。割と簡単に露出補正も出来る。フォーカスが合った前景と背景をぼかすこともやってくれればパンフォーカスも出来る。夜間撮影でもブレない。アンドロイドスマホをずっ…
「私は生姜焼きで」そんな声が座敷から聞こえた。一回の発声で店員さんに声が届いた。彼女はえいやと座敷に座り直して出されたお茶を飲んだ。白い毛糸の帽子は手製だろうか。花柄が織り込まれている。ご年齢は・・・。八十は超えているだろう。昼下がりだっ…
テレビなどで女子力という単語を初めて聞いた時、何という言葉だろうとまずは思った。女性は少なくとも存在しているだけですべての男性の力になるのに、その上に「力」とはなんだろう。想像する。例えば気遣いをする。化粧や、ネイルをする。何でもよいがも…
「今年も残すところあと〇日です。皆さんお掃除や年賀状などは始めていますか…?」などとテレビでも耳にするようになった。一年前にだれしもが目標を立てたのだろうか、一年の計は元旦にありと言われるのだから。 自分はと言えば何もない。予定していた高原…
背広はサラリーマンの制服だ。テーラーであしらえてつくる人も中にはいるのだろう。自分はいわゆるスーツ量販店だった。一度だけ入社前に東急百貨店で作った。もう無くなった渋谷の東急本店だった。結婚指輪もそこで作ったのだからその百貨店が好きだったの…
え、又これやるのですか…。そう口にした。しかし実はまたできることが嬉しかった。以前これをやった時は楽しくて仕方が無かったのだ。初めは悔しかった。思うように頭の中で視覚と短期記憶そして手指の動き、そんな信号線がつながらないのだった。しかしそれ…
明け方にトイレに行く。カーテンを開けると外は明るい。あ、きたか。とうとう雪が降った。ちらちらと舞ってはいたが、そして数日前からは南アルプスや八ケ岳の峰々を覆い尽くしていたが、この高原もとうとう白一色になった。初雪だった。 朝の気温はマイナス…
学期の変わり目に春恵はクラスでこう紹介された。 春恵ちゃんは今日から転校しますと。みんなさようならをしてください、と。春恵の行き先は特別支援学校だった。発達が少し遅れていますから学校を変わってゆっくり勉強しましょう、と言われていた。 先生は…
クラシック音楽と聞いてあまり興味がない方は一体どんな音楽を思い浮かべるのだろう。候補は色々あるがまさかブラームスやブルックナーが、マーラーやましてやショスタコーヴィチが最初に出てくることもないだろう。ラフマニノフやマーラーは映画に使われて…
自分の知る限り、女性は焼きいもが好きな様に思う。母がそうだった。姉も好きだった。そしてなによりも家内がそうだ。結婚したばかりだった。家の外から聞こえて来た。「石やきぃイモ、お芋。おいも・おいも・おいもダヨ」。するとにわかに彼女は色めきだつ…
「リーマンショックで暫くこの先就職厳しいのよ。だから今から就活を始めるのよ。」NHKの朝ドラで、主人公の友人がそう話していた。ああ、リーマンショックね。あったあった。アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻を発端とした世界的な金融…
物価の上昇が著しい。高級品や滅多に食べないものならあまり気にならないが、キャベツやピーマン、トマトにキュウリ、そんな日常の野菜、油やお菓子など。原材料費の値上がり、人手不足、為替変動、色々な要因があるのだろう。「市場経済にて個人が利益を追…
友人の所属する地元の吹奏楽団の定期演奏会だった。第14回演奏会だという。昨年より指揮者が変わった。傍目に聞いても若い気鋭の指揮者の下で音楽に一段と輝きを増したように聞こえた。 異なるアマチュア吹奏楽団には会社員時代の先輩が所属している。クラシ…
「あの建物は?」「レストランですよ。」 そんな会話だった。森の中の職場。幾つもの建物があるがそこはガラス張りだった。外から見てもレストランと分かるのだが、何故そんな質問が出たのだろう。ほら、レストランだって。行こうか…。成程、彼は自分達を勇…
アルプスの少女ハイジだったか。ハイジがおじいちゃんと住んでいた家からは煙が出ていたように思う。小学校六年生だった。そんな年齢の男の子にでも憧れる女の子がいるものだ。明子ちゃんと言う名前だった。彼女とその親友の友子ちゃんと三人で何故か交換日…
もうそろそろすっかり冬模様だ。ちらちらと細かい白いものが舞っている。背景の山、さすがに3000m級の峰々は冠雪した。前衛の山は数日前の朝は真っ白だった。しかし翌朝は雪は消えていた。しかし今日はまた小雪が舞った。こんな風に少しづつ変わっていくのだ…
「おはようございます」、失礼にならぬ程度に大きな声を出していた。すると「愛の挨拶」が頭の中で流れて来た。エルガーが作曲した誰もが知るであろうあの曲だった。たしか日本語で歌詞が付いていた。あーさのあいさつこんにちは?だったか。いや、あーいの…
皆さん、前に見えるのは富士山ですよ。そうバスガイドさんは言うのだった。 高校の修学旅行だった。広島市の高校が皆そうなのかは分からぬがそれは初日に京都で乗り換えて富山へ。立山黒部アルペンルートを経て二日目には箱根、そんな中部山岳地帯から関東の…
ピンポン。玄関のチャイムが鳴った。この時間に?ははぁまた何か買ったのだな。自分とて本人以外には意味をなさない趣味のものなどを良く買うのだから、ネット通販で人の事は何も言えない。 毎年この日が来るとそのひと月もふた月も前からどうしようかと考え…
とうとう買ってしまった。足の間に挟んで電車に乗っている。 何度も自問自答したのだった。将来に何かしたいのか?途中でまた放り投げるのか?一人でシコシコやるのか?飽きないのか?部屋の飾りにしたいだけだろう?数多の問いに対する答えはあるが、ひどく…
僕は何をやっているのだろう、笑ってしまった。 頭の中に星取表が広がっている。特に勝敗を記しているのではない。 図書コーナーの有無と蔵書数。売店の充実度。展望。山は見えるか?鉄道は見えるか?建物や器具類は新しいか?野外テラスはあるのか?清潔か…
登山は通常山頂を目指すものだ。暗い谷から登り始めて斜面を高まいて尾根に登りつくこともあれば、最初から明瞭な尾根筋を捉えてそれを登ることもあるだろう。どんな山にも必ず一つは厳しい箇所が出てくる。鎖、三点確保、技術的に緊張を強いられる場所もあ…
干し柿を作っている。高原の我が家は区画整理がされた都会の街とは異なり番地ごとの境界線があいまいだ。もちろん境界石を辿り測量を行えば境界ははっきりしてくる。が、判明させたところでそこにフェンスやブロック塀を作るわけもないのだからすぐに明瞭さ…
山が好きな方にはそれぞれの自ら愛読される山の書籍、作者があるだろう。自分の場合は「日本百名山」の著者である深田久弥氏がまず来る。彼が残した短編集は濃密だ。僕は多くの日本語を彼の本から学んだ。そしてイラストレーターである沢野ひとし氏。彼の「…
「私ね、仕事に戻ってからはもう注射針が打てないのよ。だから人間ドックの担当にしてもらったの。」 「大丈夫よ、すぐに感を取り戻すわよ。」 「そうかしら?でも震えて、怖いのよ」 そんな話が笑いとともに三人の女性連れから聞こえてきた。彼女たちは病院…
朝、森の木漏れ日と鳥のさえずりの中でコーヒーを飲む。憧れの絵ではあったが流石に自分の住む地ではこの季節は無理だった。師走まであと数日。そんな朝は3度近い温度なのだ。ウッドデッキに出たら凍りそうになる。 仕事に向かう朝は職場近くのコンビニに行…
お世話になった銀行というものは誰もが持っているだろう。多くの場合、家は借金をして買うことになる。自分はとある信託銀行を選び住宅ローンをくんだ。金を貸す立場だからか担当者も親身だった。 早期退職をしてまず考えたのは退職金の運用だった。複数の金…
● カブールの園 宮内悠介 文集文庫 2020年 日系移民が登場する・舞台になる本は二冊読んだことがある。一つはアントニオ猪木の自伝、そしてもう一つは山崎豊子の長編小説「二つの祖国」だった。前者は貧困故家族そろってブラジルへ移民し、猪木氏は肉体的な…