ギター教室も回を重ねてきた。毎日とはいかないけれど数回弾いていくうちに少しだけタブ譜面をなぞりパワーコードがスムースに弾けるようになった。一通り第一の課題曲の楽譜の下段を終えたことになる。さぁ今度はリードギターですよ。譜面の上段です。そう言われる。随分とペースが速い。しっかり練習をしないと受講料が無駄になってしまう。
「はい、そこはハンマリングで。ここはプリングです。プリングは苦手のようですね。指を離すときに弦に指を引っかけるのです。そう、そんな調子で。」
物腰の優しい先生で良かった。一対一で教えてくれるのでありがたい。彼の講義の全体像をまだ聞いていないけれど、リズムとリードプレイをシリーズに教えようというのだろうか。そして練習曲の難易度が上がっていき、いつかコードストロークもリードギターも出来上がっている、そしていずれ生徒の望む曲を練習する、そんなストーリーだろうか? 彼の講義を信じれば良さそうだ。しかし今はそれを気にする時期でもないのだった。
レッスンが終わって聞いてみた。ところで生徒さん達の成果発表はあるのですか?と。すると駅前のホールを借りて、発表会をすると知った。次回発表会は来年の六月だという。そのホールは知っている。知人のタクシー運転手さんが主催するピアノの発表会をそこに聴きに行ったのだ。小規模のホールだが室内楽や器楽曲の演奏会に使えそうな立派なホールだった。
それは凄い。是非参加させてもらいたいです。そう返事をした。まだ10ケ月弱あるではないか。それでどこまで行くのか。先生の作曲による課題曲を披露するのもピンとこない。発表会では先生も一緒に弾いてくれるという。ならば彼にはベースを頼んで、自分はせめてブルースを弾いてみたいものだ。シャッフル系のブルースは多分うまく弾けない。スローブルースで。エディ・ボイドのファイブ・ロング・イヤーズあたりどうだろう。いやミィディアムだったら・・アルバート・キングかな。
そんな事を想像していたらニヤニヤしてくる。本当にやれるかどうかも分からない少し遠い未来の小さなゴールだった。あの壇上で独りでギターを弾くのか。しかもブルースを。いや、先生にベースをお願いして、伝手でドラムスに誰か入ってもらうことも可能かもしれない。今迄はベーシストであったけれど今度はギタリストだ。新しい自分を見つけたい。
目標があると嬉しいし励みになる。まずは目の前の課題をこなしていかなければならない。小さなゴールに向けて。