日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

罪作りな器たち

中華鍋の把手にはタオルでも巻き付けられている。そこを握り鍋を揺らす。もう一つの手は玉杓子を踊らせる。この時の音を形容するならカラコンカラコンとなる。米は宙を舞い鍋に着地する。ウルトラCだろう。オヤジの鍋杓子使いは神業か。最後に中華鍋をもう…

二つの鍵・台湾的風景

そのお寺は広くはないが多くの市民で溢れている。ホテルから地図を片手に適当に散歩する。とある路地に迷い込んだ。幅2メートルか。長さは数百メートルありそうだ。ビルの狭間の通りはウナギの寝床だった。一間取り二メートル程度の店舗だ。そこにはさばいた…

憂いもなく

新年を迎えて早くも一月が経とうとしている。月日の経過の速さと年齢を重ねる事にはある種の相関関係があると思っている。それは直線で表現できるものではなくそこに何らかの偏向が働く。十歳の時、二十歳の時、五十歳、そして今。感じる一日の速さは高齢に…

危ない所だった

中古品を買い取り販売する店は言ってみれば中古再販店だろう。元は古本屋だったが古着やハードウェア一式を扱うようになっている。不景気も手伝ってか規模の大きな店から小さいものまで何種類もあり、売る方も買う方も人が絶えない。自分も不用品や本を買い…

夜市・台湾的風景

街なかのマクドナルドに入った。眼の前の通りには二階建ての路面電車が走り的士と書かれた赤いタクシーが忙しそうだ。歩く人並みは東京よりも密度が多くざわめく。昨夜に到着した初めての外国、香港の風景だった。朝食にでもと入ったマクドナルドの店員はな…

お好きですな・・

とある高原の道の駅だった。週末は観光バスも入り近所の高級リゾート施設から流れてくるお客様でここは何時も満車だ。しかも敷地内には日帰り温泉もあれば東京の老舗広東料理店もあるのだから人気のほどが知れる。 空気が肌を刺すのはそこが海抜千メートルの…

鼻ぺちゃ天国・福之記9

港の見える市営公園だった。そこはクジラの背の様な丘の上を園地にしたものでドッグランやバーベキュー施設もある。一月の港を吹く風は冷たい。戸外で遊ぶにはまだ早いのかもしれない。しかし犬連れの散歩者が多かった。多くの犬種に会える。秋田犬やサモエ…

なぜか心沸き立つ

港にあるアウドドアショップに来た。一通り揃ってしまいもうアウドドア用品など今更買うものは無いのに、なぜかこの店は胸が弾む。もう四十年近く前にその商品を買ったブランドだが今では人気店で日本中全国展開だろう。今日では街着として人気のブランドに…

紙の上の箱庭

つい最近まで登山と言えば何時も二種類の地図を持参していた。登山ガイド地図と地形図だった。 登山ガイド地図はルートと所要時間などの情報が記されたものだ。自分達のヤマ屋世代では「エアリア」とだけ呼ばれる地図だ。ユポ紙で出来たそれは耐水性と耐久性…

富士山ここにあり

僕がこの地を知ったのは昭和40年代初めだろう。父親がこのあたりに家を建てようと土地を探していた。埃だらけの道をバスに揺られて走ったことを覚えている。 次にこの場所を意識したのは中学生か高校生だった。色気だって来る年齢だからそんな小説に惹かれた…

僕のセーター・福之記8

生まれた時から服なんか着たことは無かったよ。生まれたての記憶はないけどママが僕をたくさん舐めてくれたよ。それで目が覚めたのかもしれないんだ。 ボクは生まれてからすぐにママと離れてしまって、何故だろう、檻の中にずっといたんだ。時々お爺さんがや…

手作りの音・真空管自作アンプ1

音楽が好きならば多少はオーディオに金をかけるだろう。最近では昔ながらのレコード盤が人気と言う事で新譜をレコードで出すアーティストも出てきている。かさばる、扱うのが面倒だ、そんな理由でCDが世に出た1980年代半ばから自分はレコードを手放しCD…

歪み

車を売るなら〇ッグモーター、あの印象的なコマーシャルもすっかりテレビから消えてしまった。今の自家用車は二年半前にそこで買ったものだった。十年以上年乗っていたジムニーを手放したのは脳の手術をしてから衝突安全防止機能の付いた車が必要に思えたか…

不思議な匂い

甘い香りがして昼寝から覚めた。それは懐かしくもあり何故みか酸っぱさもこみ上げる匂いだった。 甘酸っぱいといえば初恋だろうが記憶の中でのそれは石鹸の匂いだった。中学一年か二年年だったろう。素敵な女子がいた。何度か交換日記を交わしたかもしれなか…

ペルソナと仮面

会社を早期退職して三年半だった。本来の定年の年をようやく迎えた。二年前からパートをしている。多少は頭を使うとはいえそれはある程度決まった業務だった。ジーンズにフリース、ナイロンのジャケット。汚れても良い格好で仕事をするのだった。 生活のリズ…

昔の名前で 福之記7

京都にいた時は「しのぶ」と呼ばれていた。神戸では「なぎさ」と名乗った。そんな人もいたのだろう。彼女はきっと夜の女。幾つもの名前は源氏名。本名と商売の名前の二本立てだったろう。 十二年もの間そう呼んでいたのだから簡単には変わらないようだった。…

前向きな笑い

「高いな」。顔をゆがめてそう自然に出てしまった。しかしそこは人が多く、遠慮が働いた。声にせずに口を動かしただけだった。すると真正面でカートを押していた初老の女性が、僕の顔を見てにこりと笑った。とても嬉しそうだった。 「あれ、聞こえました?」…

かさぶた剥がし・福之記6

エリザベスカラー、なぜそう言われるのだろう。故エリザベス女王がつけていたわけでもない。ネットで調べると十六世紀頃の英国はエリザベス朝の頃に女性の首元に実際に使われていたからとの解説があった。確かにそんな絵画は美術や歴史の教科書で絵に見るこ…

忘れ物とCOPQ

オルリー空港はパリ市内の南にある。北側のシャルル・ド・ゴール空港は日本からの便も到着する国際便ターミナルを持つフランスの玄関だが、オルリーも小さい規模ながら近郊への国際便が入る。空港チェックインカウンターで指摘された。なんと、娘のパスポー…

予算達成

いつも予算達成だな。なんとも羨ましい・・。 決められた計画。達成したことはあっただろうか?ここで言う計画とは夏休みに何をするか、と言った小学生の立てる目標ではない。仕事の話だ。 仕事には多くの計画がある。事業計画と呼ばれる。会社はその計画で…

ダイバート

眠くて仕方なかった。12時間のフライト、そして15時間時計がずれたのだから仕方なかった。米国の入国審査は何処も時間がかかるがシカゴ・オヘア空港は特に長い。長蛇の列をクリアし「ビジネス?カンコウ?シモン」とガムを噛みながらしゃべる審査官にスタン…

納期の無い仕事

「ツギハ スローデ イクゼ!」 東京ドームだった。例の粘っこい声でたどたどしい日本語を喋るのだった。するとキースとロニーはいつかアコースティックギターに持ち替えていた。次に始まったのは確かにダンスナンバーでもブルースでもカントリーでもロックン…

信頼関係・福之記5

ザイルパートナーと言う言葉がある。雪山でパーティを組む。ザイルで互いの身を結ぶのは一人が稜線から滑落したらもう一人が滑落防止姿勢を取りそれを防ぐ為だ。ピッケルと雪面に刺すと言うが、さてどれほどのものだろう。不幸にして流されることもあれば供…

笑いすぎと引きこもり

クラッカーを食べていた。家内とテレビでも見ながら馬鹿話でもしていたのか。何がそんなにおかしかったのだろう?アハハハ、と、大笑いしていた。すると噛み砕いたクラッカーの一かけらが迷子のように気管支に入ってしまった。そこから咳が止まらくなった。…

レニングラード攻防戦

小学生のころから自分はミリオタ、つまりミリタリーオタクだった。自分が小学生と言えば1975年まで。当時本屋には太平洋戦争での日本海軍撃墜王・坂井三郎の著作「大空のサムライ」が並んでいた。ドキドキして読んだ。当時の世の中はベトナム戦争が終わる頃…

理解できない事

E=IR。「オームの法則」を習ったのは中学生だろうか。電圧=電流x抵抗 と考えるとああ成程と思う。学問は単純化すればわかりやすくなる例か。アマチュア無線技士という資格を取ったからにはやはり何処かで科学的な事柄に興味があった。それは当時少年漫画の…

今年もありがとう母校・箱根駅伝

もう脈は薄いかと思っていたら往路では断トツだった。今年こそは気合を入れて応援しようと思った。翌日何故か朝は早く目覚めてしまった。 部活動に打ち込んたわけもなく学業に専心したわけもない。ゼミにも入れなかった。まさに無為徒食だった。顔の広い友が…

手を抜かぬこと、出さぬこと

年末年始は決まりごとが多い。師走の半ばから年賀状を出さねばならぬ。大晦日が近づくとお節料理の準備やお年賀などを買うだろう。元旦は初詣、子供たちの帰省、年賀状チェック・・。もともとそんな決まり事を「古い価値観」と考え敢えて軽視していた。が加…

願かけ

願い事にすがりたい。こうなってほしい、こうあってほしい、そんな思いは誰もがあるだろう。多くの日本人は八百万が神様と言われるがやはり神社仏閣を前にすると誰が教えたわけでもないが柏手をうちを頭を下げる。クリスチャンはイエス様を仰ぎ十字を切りロ…

マシラの如く・福之記4

マシラの如く山を歩いた・・。そんな文章に接したのは高校生だったろうか。そう、当時熱中していた北杜夫氏の何かのエッセイだった。旧制松本高校(現・信州大学)に在学し北アルプスを彼が頻繁に登っていたのはそんな旧制高校時代の話だ。彼の登山趣味は蝶…