日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

理解できない事

E=IR。「オームの法則」を習ったのは中学生だろうか。電圧=電流x抵抗 と考えるとああ成程と思う。学問は単純化すればわかりやすくなる例か。アマチュア無線技士という資格を取ったからにはやはり何処かで科学的な事柄に興味があった。それは当時少年漫画の巻末に「趣味の王様」と紹介されており「世界中に仲間ができる」という追記もあっただろう。通っていた中学校にはアマチュア無線クラブがあった。興味がありそこの部室に入りびたりだった。しかし免許取得は自分には難しかった。見せてもらった国家試験の教科書。E=IRなどは序の口で意味不明な公式に溢れていた。

しばらく興味は遠ざかってしまったがやはり一度興味を持ったことは帰ってくる。いつしか自分はアマチュア無線技士になっていた。はまり症なのでモールス信号通信の免許も取り、トンツーを始めた。更にアメリカとドイツのアマチュア無線局免許まで取得した。それに伴い電子工学への興味も膨らんだ。もともと子供の工作レベルのものは好きだった。単純なトランジスタラジオ、風呂桶満水ブザー、ワイヤレスマイク・・。そんなものを作ったのは小学生だった。アマチュア無線の知識を加え、電力増幅アンプ、マイクコンプレッサーなど色々な回路を本で見て作ったのは無線技士の免許取得の頃だった。なにせ楽しくて仕方なかったのだ。名残だろう、いまだにパーツ棚が部屋の一角にある。そこにはインデックスを付けたパーツ引き出しに無数の抵抗やコンデンサー、トランジスタ、コイル、ダイオード、LED、スイッチ、ICなどが在庫してあるが埃をかぶっている。

あらかた回路は分かったな、と思っていた。しかしそれを離れて幾星霜、さらにネットやIOTと言われる中、自分の知らない事ばかりになった。LEDが消費財に使われるようになってから久しい。もう蛍光灯や白熱灯などはとうに放逐された。LEDとは発光ダイオード。一般的なダイオード同様に電極がある。アノード(プラス極)とカソード(マイナス極)。2~3.5ボルト程度の電圧を加えると点灯する。電球のようにフィラメントに電流を流す訳ではないので発熱もなく低電圧で長寿命。いまでは照明器具から車両のヘッドライト、デジタルサイネージスマホのサーチライト迄、世の中の光はすべてLEDではないだろうか。

犬の首輪にかける散歩用のLED首飾りがある。緑色や赤色などリング状のLEDが夜間に光っている、あれだ。夜道に光る首輪は犬も飼い主も安心だ。さて我が家の犬にもそんなリングを買った。USB充電式で数百円だ。大きめの首輪なので愛犬のサイズでカットしてくれ、と書かれている。スポリと抜けるほうをハサミで切るような指示。確かに抜けた。リングは柔らかい光の棒になった。しかしこれを切るのだろうか?フレキシブルな光の棒だ。切ったらショートしないか。回路が中途分断されぬか。考えだしたらキリが無かった。個々のLEDは並列なのか直列なのか。直列でも並列でも光の棒の終端部分でプラス極がマイナス極に落ちないといけない。それを途中でぶった切ってしまうと電流がプラスからマイナスへ回らないではないか?悩んでしまう。

どうでもいいや、とぱちりと鋏で切った。スイッチを入れると普通に点滅した。我が家の犬の首サイズにカットして夜間の散歩を安心して行っている。切ったチューブの中身には一本のビニル被覆線があるのみ。ルーペでこれを見ても、これが果たしてLEDの棒なのか何者かもわからなかった。陰極陽極の線はどれだ?そもそも電気を通す線もない。・・・全くの不思議だった。「キミは誰だ?」と問いたい。ただ一つ分かった。もはや自分の知っている技術の時代ではなくなった、と。三本足のトランジスタが無数に集積されたものがICとなり、小指の先の鼻くそ程度の大きさに実装されている半導体。この光の棒とてそんな知らない技術のお陰だろう。

世の中に自分の知っている知識では理解できないことがあるのは悔しい。しかし何事も公式や方程式で解明できてしまう世界と言うのも、つまらない。遠き日に夢見た科学ロマンが何も考える必要もなく近くにある。世界の人と友達になれる、と謳われたが何もアマチュア無線機から発信された電波を介さずともネットでSNSで。日常だ。それで良いのではないだろうか。僕たちは難しく考えずに結果を前向きに享受すればよいのだ、とこの数百円の緑色のLED首輪が教えてくれた。

光る犬の首輪。愛犬のサイズに合わせてカットしてくださいとある。中に電気回路が端まで来ているのだろう、切って大丈夫かと思った。切った時にハサミでショートしたらどうなるか不安でセラミック刃の鋏を使った。そんな心配は杞憂に終わったが。

この回路はどうなっているのだろう?上の直列か下の並列か。直列は電圧降下が大きく難しいのでは?しかしいずれにせよどこかで終端をグランドに落としたい・・それを途中でぶった切れるのか?わからない。