日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

尾翼のマーク

飛行機が好きだ。第二次世界大戦で使われた飛行機が特に好きだ。また小学生の頃はそんな好奇心を満たしてくれる書籍も多かった。日本海軍エース坂井三郎空戦記に始まり、本土防空戦、そしてバトル・オブ・ブリテンからドイツ本土防空戦、さらに数年前に友から借りたフィンランド空軍記まで。一体何冊の本を手にしたのだろう。そしてそんな軍用機のプラモデル作りは小学生から学生時代に熱中したがいまでも開封待ちのキットがある。

もちろん現代の軍用機も魅力ある。少し古いがベトナム戦争でのファントムとミグの空戦記録やヘリコプターを本格的に使ったヘリボーン作戦も胸が弾む。映画トップガンマーヴェリックも手に汗握った。戦争というその用途とは無縁な世界で、メカの塊として興味と憧れがが尽きない。空を具体的に飛ぶ夢はレオナルド・ダ・ヴィンチの絵からも見て取れる。そんな夢とメカへの魅力だろう。

交通手段としての飛行機も好きだが、旅客機も美しい。中型機以上は今やボーイングエアバスだけになり外見だけではなかなか区別がつかなくなった。747ジャンボは何処に行ったのだろう。三発エンジン機だったロッキードトライスターもMD10やMD11もいつか見なくなった。尾翼の横にエンジンを付けたMD80シリーズなども好きだったが今はもう見られない。一方小型機はボンバルディアエンブラエルもあり、更にはジェットもあればプロペラ機もある。そして低翼機もあれば高翼機もある。MRJの開発中止は惜しまれるが、こうなってくるとバリエーションが増え楽しい。

旅客機の楽しさはもう一つある。尾翼の塗装だ。あれを見てすぐに航空機会社が浮かぶならマニアではないだろうか。鳥などのモチーフを使ったもの。直線系のデザインをいれたもの・・色々ある。自分は余り国旗にはのめり込まなかった。似たデザインが多く覚えられなかったのだろう。しかし尾翼のデザインに惹かれたのは何故だろう。成田、フランクフルト、ヒースロー、シャルル・ド・ゴール、シカゴオヘア、そんなハブ空港に行くと様々な尾翼のマークに接することが出来た。それは異文化を教えてくれる使者のように思えたのだろう。おのずと覚えてしまった。

鶴丸トリトンブルーは日本のキャリア、日本航空全日空鶴丸は一時はライジングサンのデザインだった。トリトンはその昔はダヴィンチのヘリコプターを模したマークだった。尾翼のマークが変わったエアラインもあれば変わらないエアラインもある。変わってほしくないエアラインもある。

成田に行かなくなったのは仕事を離れて久しいからだった。羽田は近いのでサイクリングのルートになる。が飛来する国際線も減るので成田の様に航空機の尾翼マークを楽しめない。いつも鶴丸トリトンブルーばかりだ。しかし国際専用の第三ターミナルはときおり楽しい。少ないなりに見ることが出来る。多摩川に掛かる一般道路の最下流のスカイブリッジを先日川崎から羽田に向かい自転車で渡った。進行方面の真正面に幾つかの尾翼が並んでいた。

少しばかり記憶の底に沈んでいた海外のエアラインのマークが思い出された。駐機していたのはキャセイ、ユナイテッド、デルタだった。すべて新しいデザインの尾翼だったがそれらにもお世話になっていたので忘れようもなかった。

この尾翼マークになったころにキャセイはカイタク空港ではなくランタオ島の新空港に降りるようになった。九龍半島の街の上を直角にカーブしてかすめ飛んでいたキャセイだった。そこは自分が初めて行った外国だった。ユナイテッドはルフトハンザと並び一番乗った海外のキャリアだろう。マイレージのアライアンスがあるので自分は全日空とこの二社ばかりを選んでいた。デルタは数度しか乗ったことが無い。アメリカのエアラインはどれも「チキン or ビーフ?」と似たようなサービスばかりで実はあまり印象に残っていないのだった。

九龍半島のジャンクはまだあるのだろうか。暗い海の上に幾つもの灯りが揺れている。その上を飛びながらキャセイ機は海べりのランウェイに入るはずだ。香港と中国のナンバーを付けた二重国籍の様な相乗りアルファードのタクシーで国境を越えて入る湿っぽいシンセンの街、無秩序な人波・・・。あのユナイテッドは何処に行くのだろう。時間帯としては本土行きではないだろう。長い直線降下でサンマテオブリッジをすぐ下に見てランディングするサンフランシスコ空港を思い出した。明るい日差しに乾いた空気。そこはまさにカリフォルニアだった。

飛行機に憧れるのは見知らぬ世界を感じるからだろうか。尾翼を見てそのエアラインの国を思い浮かべる。知った国、初めて行く国。頭の中に広がる光景・・。今ではそんな異国へ行く機会も無くなったが寂しいとは思わない。病気をしてから毎日が旅の一部だと思うようになったからだろうか。何かに疲れたら、また様々な尾翼を見に来ればよいのだった。

初めての海外だった。九龍半島の街並みを窓の外から眺めたが手に汗を握っていた。

モノレールのレール奥に三機。キャセイ、ユナイテッド、デルタ。異国の香りがした。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村