2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧
川の源は小さな雫。岩の割れ目から落ちる一滴。いや地面から滲み出るシミかもしれない。 山歩きをしていると有名無名、本流枝流の多くの川の源に接するだろう。沢を詰めて稜線に上がるというルートが多いからだ。日本一長い川は信濃川だがその源流には水源を…
運河沿いの道は広葉樹から射す木漏れ日でまばらな陰影があり、それが風に揺れていた。大きな運河ではない。一隻の小舟程度の幅だった。自分はその道にたまたま巡り合わせただけで南西方向にある村へのサイクリングの途上だった。 一艘の船がゆっくり進んでき…
子供の頃近所に精神科の病院があった。鉄筋コンクリート3階建てほどの大きな病棟だった。病室の窓には鉄格子があった。その前を通るのは幼心にも怖かった。鉄格子から「出してくれー」とが腕が伸びて柵を壊すように思えた。実際に腕は出て奇声を発する方も居…
コロナとの共生も進んできた。それを受け海外旅行に行く人もいるだろう。とはいえ夜中に50万円程度の海外旅行のツアーをカードで購入する人はまれだろう。 ネットで物を買う事が当たり前になってきた今のご時世、一体何を買ったのか忘れてしまう事もある。仕…
400キロほど離れた北の街に住む大学時代の友人と電話で話した。LINEでも繋がっているがテキストメッセージや絵文字の交換ではなく肉声で話したいこともある。やはりアイツの顔も浮かんで話は弾む。ネット社会・IOTの時代でも電話と言うひどく原始的なツール…
● 図書の旅27 少年と犬 馳星周 文芸春秋 2020年 我が家には大切な家族がいる。自分と同じ誕生日に縁を感じて飼い始めた犬だった。彼は病床の患者を勇気づけるファシリティドッグや盲導犬のような顕著な役割をしているわけではない。しかし家族の一員として自…
● コンビニ人間 村田沙耶香 文藝春秋 2016年 何かが尖っているのだろう。主人公は女の子。小学生の時に校庭で死んでいた小鳥の亡骸を見て、クラスメイトか泣きながら埋葬の話をしている時に、彼女はこれを焼き鳥にしたい、お父さん焼き鳥好きだから。という…
一軒家が立ち並ぶ自宅周辺には野良猫がやたらと多い。通りを自由に歩いている。鈴をつけているネコもいるので、野良猫なのかどうかも分からない。 自分は猫を飼ったことはないが近所を歩くとその生態が何となくわかる。あるお年寄りの家では猫が来るのが嬉し…
とても音痴だ。すこし鼻の詰まったような声質がそこに加わり自分の歌など聞きたくもない。しかし子供時代からずっと音楽の授業での合唱が大好きだった。小学生では「気球に乗って何処までも」「夏の思い出」。中学高校になると「翼をください」「誰もいない…
多くの日を山で過ごしたはずだ。泊まりの山ならテントが多いだろう。避難小屋も多い。営業小屋を余り使ったことがなかったのは食事付きの値段が高い事もあるし夏場など一畳3人のスペース、などという言葉に恐れをなしたからだ。その点テントは気楽で自分の求…
国道1号線は片側二車線でどの車も結構な速度で走っている。家内を職場に送っていく途上だった。ガソリンスタンドの前の信号で停車となった。丁度その歩道に数人が居た。よく見ると高齢の人が倒れていた。信号が変わり後続車にクラクションで促されてしまった…
草刈り機にも色々な種類がある。長さ1.8メートル程度の棒の先端に回転刃がつき後端にエンジンなりモーターユニットがついているもの。肩から懸けて腰辺りに当てて回すように刈る。交流電源式や充電式もあるがやはりトルクの強いエンジン式が多い。しかしなか…
自宅から徒歩10分、そこには曹洞宗の大本山がある。古刹でもなんでもないが全国の曹洞宗のお寺からも若い修行僧がやってくる。仕組みはよく知らないがここの修行を「卒業」すればお寺の後継ぎとしては合格、晴れて住職さんなのだろうか。広い敷地のこの寺は…
昭和のお父さんの多くはプロレスを見ていただろう。当時は今のようなショーマンシップも危険な技もなくベビーフェイスがヒールを最後に倒すという筋書きに則っていた。しかしそうと知ってもわが父はいつも激しい集中力で見ていた。子供ながらに自分も見るよ…
犬を飼っているのなら彼らが水を飲む姿が好きなのではないかと思う。我が家は餌台をつかいそこに水のボウルと餌のボウルを置いている。犬の食欲は限りないように思える。可愛いからと人間の食べ物も含めて好き放題にあげるとしっぺ返しが待っている。彼も肝…
例えばフライパンを洗っている。汚れが激しければ水につけておく。フライパンの油はやがて浮き上がってきて縁に付いたり真ん中に浮かんだりする。小さな港に行ってみる。漁船の機械室から漏れたのであろう、燃料の油が水面に浮かんでいる。防波堤を越えてや…
「先日来た人は今日で三日目、でも彼女辞めてしまうんだって。初めて見た時そう思ったのよ。この人は長続きしそうにないなって。」 そう職場の同僚は口にした。彼女はこの職場の受付にいるので来館者の多くに最初に接する。職場の職員はいつも不足気味で人材…
友人が所属する吹奏楽団の演奏会を聴いてきた。年に2回定例演奏会がある。金峰山や茅ヶ岳、八ヶ岳に鳳凰山、北岳に甲斐駒。そんな名山が眼の前に広がる高原台地に木をふんだんに使った素敵なコンサートホールがある。海抜は700m程度だろうか。澄んだ空気が音…
・日本百名山を楽しく登る 岩崎元郎 山と渓谷社1999年 山の作家・深田久弥氏が著した「日本百名山」が主に中高年ハイカーの目標として人気になったのは何時頃からだろう。30年以上前に自分が山の世界に入ったころは違っていた。しかしその数年後にはブームに…
・へこきよめご 虹野智治 ひかりの国(株)2004年 職場の蔵書。読んでいて思わず吹き出してしまった絵本。題名がなまっているように思えたので何となく東北の話ではないかと想像した。しかし子供に夢を与える本に一番向いていないのは地名などをつまびらかに…
シャッターに閉ざされたとあるショッピング・モールの通路に開店前から立っていたのはそこが冷房が効いて涼しかったからだ。開店前から行列して何かを買うということではない。そもそもアウトドアや音楽、模型と言った自分の趣味の店と大型書店、それにフー…
初めてニッコウキスゲの花を見たのは何処なのか?消えかけている記憶をたどって、それは北アルプスの常念岳だったと思い出した。正確に言うと常念岳から蝶が岳へ向けての縦走路だった。大きな常念岳を喘いで登りきりガレ道を南下すると尾根道はいったん森林…
ふとしたことから基礎工事を見学した。基礎工事とは家の土台の工事だ。どんな風にやるのだろうと興味があった。そこはとある高原だった。簡単に言えばハウスメーカーの指定通りに作るのだが相手は土なのでなかなか精密にもできないだろう。 始めに土地の境界…
なにもそれが美しいからではない。その本質を見極めようとしているわけでもない。そうしなければならないから、微細に調整するのだった。自分にも何処かで似た風景があったなと考える。思い出した。リニアアンプの調整だった。リニアアンプと言ってもオーデ…
・カラヤン幻論 裄野 條(ゆきのじょう) アルファベータ 2013年 自分が初めて自ら欲しくて手にレコード。小学校1,2年の頃だ。それは資生堂のテレビコマーシャルで流れていた壮大で優美な曲だった。どうしてもそれが欲しくてレコード店に行った。その店でうろ…
会社員になって初めて手にするものの一つが名詞だろう。出来上がったそれを手にするとああこれで僕も一人前だ、と嬉しく同時に気恥しかった。名刺は人事異動そして役職が変われば都度新しくなる。会社員時代の名刺は数枚づつ保管している。早期退職してすぐ…
今思うとそれは生物の授業だったのか古文だったのか覚えていない。普通なら生物の授業だろうが古文の授業か?と思った訳は教わった植物の名前が古式ゆかしく趣のある日本語に感じられたからだった。ウチダ先生の授業だったような気がする。するとやはり生物…
あ、こんなところにあったのか。ずっと探していて、もうあきらめて探していた事すら忘れていたのに。そんな事は無いだろうか。どうせ大したものを探してはいないのだがそうして見つけたものは宝物になる。大切に、今度は忘れないように、と分かりやすい所に…
週末休日の昼食担当は結婚してからずうっとだから30年以上経つ。いったい何食作ったのか計算する気にもならないが、果たして何を作って来たのかと言うと、これは簡単だ。ラーメン、うどん、そば、焼きそば、パスタ。おおくくりではこの5種類になる。これに具…
・おいしいらーめんのおはなし 岡田ゆたか ひかりのくに(株) 2004年 絵本を引き続き手に取っている。「おいしいらーめんのおはなし」と来たか。ファンとしては黙ってはおられまい。「麺巡礼」「麺修行」と称して悦に入って、好きなラーメンの為には車で数時…