日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

目の毒

都内の街角で見かけてしまった。思わず足を止めて見とれた。バイク乗りを辞めて15年以上経つ。しかし今でも密かに心の中におき火が残っている。それは時々燃える。

自分がバイクに熱心に乗っていたのは1980年代から2000年あたりまでだった。当時のバイクにはレーサーレプリカもあればDOHC四気筒のスポーツ車もあった。自分が選んだのは当初はSOHC二気筒という使いやすい商用車のエンジンを載せたアメリカンバイクだった。本当は一気筒エンジンのオフロードバイクに乗りたかったのだが、脚が短いので諦めてしまった。あまり好きでなかったバイクはやはり手放す。そしてとうとう200㏄のオフロード車に乗り換えた。赤のホンダXLだ。以来その程度の排気量のシングルエンジンオフロードバイクばかり乗ってきた。スズキSXに乗り換え、セルが欲しくなりホンダSLに回帰した。それらにテントとシュラフ、わずかな生活道具を載せて林道に分け入った。グランピングでもキャンプでもない。それは野宿だった。

実はもう一つ憧れの車種があった。クラシカルなカタチのツーリング車だった。ホンダGB250、そしてヤマハSR400。どちらもエンジンは単気筒だ。シリンダー一本で走る車。振動が良い。音が良い。潔い。全てが好きだ。低速で走るのが絵になるバイクだ。

バイクの速度感に体が追随していない、ヘルメットが群れて頭がかゆくなる。頭の痒みは我慢するにせよ、動体視力と反射神経の不一致には危険を感じた。そんなころ海外転勤もありバイクを手放した。

町を歩いて自分の琴線を刺激するバイクがあるとどうしても足が止まる。そこにオーナーがいれば話し込む。自分のバイクに関心を持っていると知るとライダー諸兄は丁寧に対応してくれるものだ。如何にこの鉄馬が魅力的かを語りだすと止まらないだろう。

このバイクは初めて見た。大きなシングルエンジンは400㏄だろうか?クラシカルないで立ちだ。これに跨り高原や海辺の風を感じたらさぞや心が弾むだろうな、と思った。しいていえばホイールはスポークであってほしかった。リアブレーキはドラムが外見上は望ましいが安全性を考えるとディスクで良いと思う。キックでなくセルは楽だろう。キャブレターでなく電子燃料噴射だからそこも良い。冬場を過ぎてシーズンを迎え乗る際にも困るまい。ホンダHnessと書かれていた。調べるとCB350とある。GBではなくCBの称号か。それも好い。車検が必要だな。250㏄は出ないのだろうか・・。

音を聞かなくてよかった。オーナーに会わなくてよかった。250㏄がラインアップされていなくてよかった。音とオーナーの話を聞き250㏄があったなら、きっと自分の前には迷い道が待っているだろうから。目の毒だったと思う事にしよう。

美しい形、良く粘りそうなエンジン。その音と振動。そんな鉄馬の起こす風を思うと気が遠くなる。夢を見たことにしたいと思う。

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