日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

お好きですな・・

とある高原の道の駅だった。週末は観光バスも入り近所の高級リゾート施設から流れてくるお客様でここは何時も満車だ。しかも敷地内には日帰り温泉もあれば東京の老舗広東料理店もあるのだから人気のほどが知れる。

空気が肌を刺すのはそこが海抜千メートルの等高線にほぼ乗っているからだった。標高が百メートル上がれば気温は0.6度下がることは山屋なら誰もが知っている。それをベースに登山の服や装備を選ぶからだ。つまりそこは東京よりも気温がいつも六度低いことを意味していた。夏は気持ちの良い場所だが冬はどうだろう。確かにそこはとある三千メートル級山岳への夏山登山駐車場まで車で数十分ではあるが冬は雪に閉ざされる。海抜千数百メートルコンターを越えると雪の世界になる。そんな場所だった。

正午過ぎ。気温一度。しかし陽光は降り注ぎさほど寒さを感じさせないのが不思議だった。その山岳から吹きおろす風に体が縮んで季節を改めて知った。

買い物を終えて駐車場に戻って目を見張った。自分と同じ車、地元ナンバーの色違いが隣に停まっていた。メタリックグレイも悪くないなと思って眺める。野遊び心を持つアウトドアのクルマ。無骨で骨太。一切媚びない。自分のライフスタイルにピタリのボクシーなこの車を第一世代から続けて三世代乗ってきた。そしてすぐにわかった。多分その推量は当たっているだろう。グレイのオーナーも自分同様に第二世代に乗っていたのだろうと。アルミホイールがそれを雄弁に語っている。

二台とも同じスタッドレスタイヤを履いている。アルミホイルはどちらも二代目の純正ホイルだった。三代目の現行モデルの純正アルミホイルはこれらとはまた違うデザインだった。自分の車は二代目の七型限定車の純正ホイル。グレイの車は二代目の確か五型か六型限定車のホイルだった。好きな車なので街ゆく彼らをいつもじっくり見ている。スタッドレスを履くなら多くのユーザーは安価な純正の鉄ホイルに履かせるだろう。しかしあれはスチール感まるだしでスタイリッシュな足回りではなくなる。その点二代目限定車のアルミホイルはデザインが良かった。

自分は二代目を売却する時に三代目の購入を決めていたので、鉄ホイルからアルミホイルにスタッドレスを履き替え、夏タイヤをださい鉄ホイルをつけてから業者に売った。今の車は冬になると二代目限定車のアルミホイルのスタッドレスを履く事になる。なかなか似合うな、とつまらない笑みを浮かべていたら同じことをしたと思える車が横に来たのだった。

どんなオーナーなのだろう。こだわりがあるのかな・・。「あなたもお好きですな。実は私も好きな口で・・・」と揉み手で話しかける。そんな楽しい会話の夢想をしたが、残念なことにカラマツとアカマツの高木を揺らす高原の風の冷たさに負けてしまった。

人生下り坂になってもこんな風につまらない事で頭の中で遊んでしまう。でもそれは何と楽しいのだろう。様々な現実が自分を取り巻く。決して楽しい話ばかりではない。しかしいっときでも全てを忘れて楽しい事に没頭できる。それが日々の中での救いなのだと思わないと、やっていけない。

空気の澄んだ高原にて。貴方もお好きですな・・と話しかけたくなったのだが。

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