車を売るなら〇ッグモーター、あの印象的なコマーシャルもすっかりテレビから消えてしまった。今の自家用車は二年半前にそこで買ったものだった。十年以上年乗っていたジムニーを手放したのは脳の手術をしてから衝突安全防止機能の付いた車が必要に思えたからだ。ジムニーは自分のライフスタイルにピタリと合った素晴らしい車だが古い車にその機能は求めようもなかった。妻も運転するので運転しやすい車を探した。軽自動車ジムニーでの生活を通じて普通乗用車の必要など一切感じなかった。むしろコンパクトさと税金など所有コストの安さに惹かれていた。軽の乗用車タイプで四駆を探すが苦労した。ジムニーや軽バン、軽トラ以外には軽の四駆は余り出玉が無いのだった。必然的に中古車在庫の多いその店に行きついた。
車は快適で、スタッドレスに履き替えて行動範囲も伸びた。ターボはついていないがその分燃費は良く高速道路でも不自由が無かった。ジムニーのような堅牢感はないが四駆スタッドレスは凍結にでも積雪でも安心感がある。床の低いコンパクトなハッチバック車はとても使いやすい。
買って半年後に車検があったが流れでその店で車検を行った。話題となった手抜きやわざと壊されはしなかったか、交換不要のパーツも交換されなかったか、事件後に一連の報道を見ては少し不安になったのは事実だった。
新たな車検の時期だった。きちんとくだんの店から案内の電話が来たので、悪いのは経営陣と企業風土であり従業員個人には非が無いだろう、と考え話を聞いた。数社聞いた中では見積もりが一番安かった。納得できる内容と価格だった。しかし前回から変わっていたことがあった。
前回は同社の車検工場から朝早く代車で店の方が見えて、自分の車に乗って工場に行く。夕方に自分が代車に乗り車を取りに行く、そんな流れだった。しかし今回は朝早くにまずは車で工場まで乗ってきて欲しい、あとは代車で帰宅してほしいと言われた。車検工場は横浜新道から万年渋滞の保土ヶ谷バイパスに出て国道２４６号線に行かねばならぬ。渋滞無くとも三十分だが朝晩は軽く一時間はかかる。それは自分には耐えられなかった。
前回通りのやり方は出来ないのか？と聞くと、出来なくなったのですという答えだった。人員が減ったからです。と素直に言われた。結局そこは止めて近場の少し値段のはる車検場を選んだ。
折角その気になったのに叶わなかった。一度堕ちた会社の評判は巡って会社自身を傷つける。そして会社は歪む。多くの社員が去ったとネットなどでは書かれている。この会社がこれからどうなるかは自分は知らぬが、電話口の社員の実直そうな声と申し訳なさそうな謝罪が耳に残った。彼らは悪くないのに歪みに巻き込まれて残念だなと思うのだった。
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