何の意味があるかわからないがちょっとカッコイイもの。例えば…
・アメリカンバイクに乗る人がかぶるテンガロンハット。デニス・ホッパーのように崩れた感じでやるとサマになる。
・アウトドアおやじの頭には今時どこで売っているの?と言いたくなるようなペイズリー柄の赤いのバンダナ。
・造り酒屋職人や醤油屋職人がきりりと巻く藍染の前掛け。
・土俵入り力士一同が腰に巻く、念の入った刺繍が目を惹く・化粧まわし。
・そしてまだある。レーシングカーや走り屋さんのタイヤのロゴの白塗り…。
いずれも「その筋」の人が身につけたり装飾したりすると、妙にかっこいいと思うのは自分だけだろうか。
はい、バンダナ。持っている。アウトドア親父ほどワイルドではないが、あれを頭に締めるとなんだかナイフさばきやロープワークが上手くなるような錯覚に襲われる。病の治療で髪の毛がすべてなくなった時に頭に巻いていたのは赤いバンダナ。それに藍染の日本手拭い。手拭いを巻くと、あら不思議。ふやけた初老親父もぱっと見は手打ちそばの職人となる。
それらは個々に独立したものだが、頭の中で関連性が出来上がっていて、自動的にイメージに結びつくのだろう。
テンガロンハットとアメリカンバイクは時代への反抗。赤いバンダナはヒッピー文化の名残か、既存の価値観を離れ自由に生きたいという想い。ヒッピー文化終焉を歌ったともいわれるイーグルスの名曲・「ホテル・カリフォルニア」。曲中でドン・フェルダーと共に見事なリードギターの掛け合いを聴かせるジョー・ウォルッシュもまた頭に赤いバンダナ。
藍染前掛けを掛けると身も心もきりりと締まり酒を造る気持ちが湧こう。化粧まわしは相撲社会というヒエラルキーの頂点に立つ力士の一団のみがゆるされる実力者の証。日本手拭いを頭に巻くと、日本の伝統芸能や伝統食の担い手になる気がする…。
しかし最後に挙げた、タイヤに浮かぶ白いロゴに至っては何の意味があるか、わからない。タイヤの性能が上がるわけもなく、むしろ軽量化がレーシングカーの肝ならば、塗料の分だけ重量も増すだろう。
昔のF1カー。アイルトン・セナやアラン・プロスト、ナイジェル・マンセルなどがしのぎを削っていた時代の一つ、二つ前。ニキ・ラウダやジェームス・ハント、ロニー・ピーターソンあたりが丁々発止の争いをしていた時代。あの頃のF1マシンのタイヤにはタイヤメーカーのロゴが白抜きされていた、そんな記憶がある。ファイヤストーンやグッド・イヤーなどのタイヤメーカー名はそれで覚えた。しかし未だに、あのタイヤの白字の意味は分からない。多分マシンコンストラクターの一環としての宣伝だったのではないだろうか。
今市中で走っているファミリーカーやミニバン。そしてSUVですら、そんな白字ロゴタイヤのクルマはまず見かけない。時折見かけるとしたら車種は限定されるだろう。ハイラックス・サーフ、ランクル70、ハイエースなどの大型ワンボックス、リフトアップして大径タイヤを無理やり履いている軽ワンボックス、そしてジムニー程度だろう。つまりは白字ロゴは角ばった、アウトドア志向のクルマ、ごつごつしたタイヤに似合うのだろうか。
散歩中に出会った近所のジムニーオーナー。前から白いタイヤロゴが気になっていた。洗車中の彼に思わずに話しかけた。「タイヤのロゴ、白いタイヤを買うんですか?」と。答えは簡単で「いや、自分で塗るんです」、ときた。「何のために?」とは聞き損じたが、自分の頭の中にも明かりが点灯したのだった。「DIYか!ならば自分も今度、やってみよう」と。
丁度我がジムニーもスタッドレスに履き替える時期だった。タイヤ用の白ペンというものが売られているのも知った。プラカラーよりはましだろう。
外した夏タイヤのロゴとモデル名を、白ペンでなぞった。鼻歌の一つでも出そうな、実に楽しい作業だった。塗りムラやハミダシもあるが、あまり気にしない。走ればどうせ汚れて消えていく。ついでに、ペンのインクは残っているようで、スタッドレスも塗ってみた。こちらはボディに装着された状態なので、道路に横になったりして塗った。傍から見れば、ただの変人だろう。
ブリジストンのロゴとダンロップのロゴ。塗ってみてわかるがいずれも良い意匠だ。さて白字ロゴになったタイヤを履いた我がジムニー。走りは何ら変わらない。しかし唯一変わったのは、ドライバーの気持ちの軽さだろう。なんだか、ウキウキするぞ。
ははあなるほど、F1マシンのタイヤにも白ロゴがあったのは、ドライバーの気分高揚の為だったのだろうか? よくわからない。
しかし「なんとなくカッコイイ」で充分ではないか。この年齢で羽が生えたようにワクワク出来るのだから。
PS・赤いバンダナと言えばやはりジョー・ウォルッシュが浮かぶ。似合っていてカッコよかった。そんな世代だから仕方ない。https://www.youtube.com/watch?v=09839DpTctU