日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

信頼関係・福之記5

ザイルパートナーと言う言葉がある。雪山でパーティを組む。ザイルで互いの身を結ぶのは一人が稜線から滑落したらもう一人が滑落防止姿勢を取りそれを防ぐ為だ。ピッケルと雪面に刺すと言うが、さてどれほどのものだろう。不幸にして流されることもあれば供に助かることもあるだろう。自分はザイルパートナーを求めるような登山はしない。しかし山スキーは違う。始めたころは雪崩の可能性の低く厳しくない山を中心に独りでスキーを履いて地図を読んで山頂に立った。下山はスキーの滑り止めを剥がしてワックスを塗る。地図を読んでいざ滑り始める。尾根を一つ間違える。気づかずに三十秒や一分でも滑る。するととても元の尾根には戻れない。晴天下なら、体力があれば何とか戻れるかもしれない。視界が効かず体力も使い切っていたらどうなるだろう。一分が命取りとなる山スキーに関してはいつか山仲間と行動を共にするようにした。頻繁に止まってはGPSで現在位置を確認する。次はあそこまで滑ろう、と話をする。先を行く仲間が転倒すれば見守るし逆もあるだろう。ザイルは付けないがこれもそんな信頼関係に立脚するパートナーだろう。

供に行動する以上相手の思考形態や行動の癖はいつの間にか知っている。だからこそ安心できるのだった。実際幾つも救われた。

もう他界した先住犬・ゴン太は最後まで自分達を信用したのだろう。例えば家を空ける。ちょっとした買い物で車の中で待っていてもらう。彼はすぐに丸くなり、主人の帰還を待つ。彼は歯ブラシを見るととても嫌がった。自分が股に彼を挟んで口をこじ開けるとのけぞってさらに嫌がるがある程度は歯を磨かせてくれた。ありがたい話だった。新しく生活を共に始めた福太郎はどうだろう。出来るだけ彼を一人にしないようにしている。彼をおいて数時間外出した。予定が伸びてしまった。車を車庫に入れる時に激しい吠え声が聞こえた。家の中は通せんぼのネットを倒し散らかしていた。危険なものは届かない高さにしておいてよかった。彼は間違えなく怒ったのだった。買い物で15分、大人しく待っていてなと話しかけて出る。戻ってくると数十メートル先から彼の吠え声が聞こえた。

必ず戻ってくるよ。と彼には分かって欲しい。福太郎は産まれてから保護団体さんに保護されるまでの約5年、ずっとブリーダー施設に居た。ブリーダーでは餌を与えて種付に励みあとは放置だったのではないか。保護犬ボランティアさんのご家庭で初めて人の愛を知ったのだろう。多分彼が一番恐れていることは放置されっぱなしにされる事なのか、と思うのだった。三つ子の魂百までと言うが、それを何処かで変えたいと思う。

必ず戻るから大人しくしてくれないかな。そう彼に話しかける。わかってもらえるだろうか。信頼関係が出来るまではもう少しだろうか。彼ともザイルパートナーになりたいのだが。

ザイル(綱)を曳く側、曳かれる側。両者の間に信頼関係はあるのだろうか?

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