日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

歯磨き・福之記12

ドリフの「八時だよ全員集合」が大好きだった。番組の最後では出演者一同がステージに並び「いい湯だな」を歌うが、そこで一番人気のカトチャンがこう言う。「歯みがけよ」と。しかし歯磨きは好きではなかった。痛いし面倒くさかった。色気づき口臭が気になる頃、お好み焼きの青のりが気になる頃、それは高校か大学の頃だったが、丁寧な歯磨きはその頃にようやく定着した。今も面倒くさがり屋だが、歯間ブラシや糸ようじで歯の隙間を綺麗にし歯ぐきから出血すると嬉しくなる。ガン病棟ではしかし歯ぐきから血が出るほど力を入れて歯磨きせぬようにと言われた。抗癌剤で白血球が大幅に低下しており雑菌感染を懸念してだった。

親の入れ歯を見た時は驚いた。特に他界した父親は総入れ歯だった。なぜそうなるのかと思えばやはり虫歯だろう。そういえば彼らが歯磨きをしている風景は余り思い浮かばなかった。

歯と言えば犬にもある。そして犬にも虫歯がある。治療には全身麻酔するという。我が家の犬は初代も二代目も小型犬のシーズー。彼らの前歯などは米粒のようだ。犬歯だけはこれぞ犬の証であるぞとでも言いたそうにさすがに尖っている。奥歯は人間同様に太くなる。彼らの歯磨きにはてこづった。歯磨きガムなどもあるがそれで歯の汚れが落ちるのだろうか?やはりブラッシングが分かりやすい。初代犬は五歳の頃から歯磨きを始めたが嫌がった。膝に挟んで口を引っ張り歯ブラシを無理やり突っ込む。体をよじって抵抗する。満足いく歯磨きはなかなかできなかったがいつも獣医さんからは「歯は綺麗ですね」と褒められていた。

初代犬は子犬で飼い始めたので一歳にならないうちに去勢した。一方で二代目犬はブリーダー施設から保護団体のボランティアさん経由で来た保護犬で、保護された五歳で去勢された。そのせいか二代目犬は初代犬より少しだけ体が大きい。力も同様だった。彼に歯磨きを初めて試みた時は大変だった。全身全霊を込めて抵抗してきた。歯ブラシを突っ込んでも磨く事もままならない。顔を押さえる時に大きな目玉を気づ付けぬか心配になる。不完全燃焼だった。

ペットショップで指サックに歯ブラシが付いたものを買った。「痒い所に手が届く」とはこれの事で、顎や頬を引っ張り上手く口の中に指を入れたらあとは表裏、前歯奥歯共に意外に簡単に磨けた。なによりも飼い主の指が突っ込まれていると理解しているのか、小憎らしいであろう指を嚙み千切ろうとはしないのがありがたい。何回かこれを繰り返すうちに楽に歯磨きを終えることが出来るようになってきた。彼は観念したのか飼い主を信じる事にしたのかは、わからない。

口腔ケアと言う単語がある。父親が老人施設に入った頃に知った単語だった。自分がガンで入院していた病院では歯科とは呼ばずに口腔外科と呼ばれていた。高齢者に口腔ケアが特に必要であるのは咀嚼や嚥下能力を維持するために、加え口の中の雑菌による感染の防止をするためだった。それはいずれ自分も妻も向き合う話だ。犬も同様だろう。

力の強い二代目犬に関しては家内が犬を抱え自分が磨くのだが、今日は一人でやった。いつも通り嫌がったが昨日よりも一昨日よりも歯磨きが楽になっていた。好い調子だな、と思う。口からやってくる病とはこれでおさらばできるだろう。

福太郎と名付けた二代目シーズ―。力の強い彼に歯ブラシは難しい。ブラシ付き指サックにかえて少しづつ馴れてきたようだ。彼の歯が元気で福が来れば、何も言う事は無い。

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