日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

納期の無い仕事

「ツギハ スローデ イクゼ!」 

東京ドームだった。例の粘っこい声でたどたどしい日本語を喋るのだった。するとキースとロニーはいつかアコースティックギターに持ち替えていた。次に始まったのは確かにダンスナンバーでもブルースでもカントリーでもロックンロールでもない。スローなバラードだった。アンジーあたりだっただろうか。しかしこの手の曲もやはりミックにかかると映える。流石名人芸だな、と思った。

時間をかけてやろうと思っていることが山積みだ。鉄道模型、飛行機プラモデル・・。あまり順序だてて物事をこなしていくのは得意ではない。齧りかけの物がそこら中にある。以前なら一気に集中して終えてしまった。が今は着手出来ない。ようやく重い腰を上げてやりだしたとしても今度は集中力が続かない。なぜだろう。脳外科手術の影響かあるいは加齢だろうか。直ぐに手術痕周りが痺れて疲れてしまう。しかし最大の理由は納期が無いからだろう。

仕事も、もともと納期ぎりぎりまで待ち一気に仕上げる事が多かった。それで過ごしてきたから何とかなるという変な自信もあった。しかしその納期が無いとなると自分を縛るものはない。すると自分と言う人間は簡単に安きに流れるのだった。

やりたい事は減らない。しかし時折波がやってくる。うまく乗れると着手できる。ここ数日、自分としては集中している。カーボン抵抗のカラーコードを読みテスターで抵抗値を測ってから基盤に載せる。何度もチェックして半田付けしていく。三時間は集中できる。ブログを書く事でも疲れて三時間は費やせない。下書き、推敲と少しづつ時間をかけている。

ハンダこては電子工作用の三十ワットのものだ。イチ、ニィ、サンと、過熱しこてをあて流し込みをすると芋ハンダにもならない。大型トランスの筐体を半田付けするのにはこのコテでは役立たず、八十ワットのコテで一気に仕上げた。しかし手間取る箇所も多い。電界効果トランジスタダイオード、そしてムカデの様な十八本足の集積回路パッケージは気を使う。ソース・ドレイン・ゲートと極性をぶつぶつ念仏の様に唱えながら方向に注意し一気に半田付けしていく。熱に弱いのだから手早さが必要だ。ムカデ足のハンダはホール間隔が狭く本当はICソケットを使うべきだったかもしれぬ。が作業の流れでハンダ付けをを終えた。

インピーダンス変換用のやけに重たい出力トランスを二個載せるとそれらしくなった。なるほど、7KΩを6Ωに変換するのか。しかし四日かけてこれは全体の工程の四割程度だろう。「♪一日一歩、三日で三歩」とは上手く歌ったものだった。

今日はこれで終わり。次は何時だろう。明日?明後日?何時でも良かった。出力抵抗は6Ωか。フルレンジで行くかツーウェイで行くか。はてJBLYAMAHAか。いや自作するか。何にしようかとも楽しみであるがまずは今着手しているものが完成し動作してからの話だった。

「次もスローでいくぜ」とミック・ジャガーの口真似をした。ストーンズザ・ローリング・ストーンズ)が今も現役でロック音楽の最前線に居られるのはもしかしたらスローという精神かもしれないと思う。活動歴六十年、出したオリジナルアルバムは二十五、六枚だろうか。黄金期は1975年あたりまでだろう。実際1980年を超えると年一枚は出ていたアルバムも数年、五年、十年に一枚といったペースになっていた。しかし焦らずにバンドメンバーの機が熟すのを待って活動していた、それが今でも良質なロックンロールを叩きだす八十歳の男どもの長続きの秘訣だと思った。

すると納期の無い仕事・作業は必ずしも悪い事ではないのかもしれない。ミックの口真似は、なかなか味があるように思えた。どうしたらあのように粘っこく喋れるのだろう。自分もそれに近いぞ。いや、単に滑舌が悪くなっているだけだった。スロウでイクゼ、とまた呟いた。

さて一体何が出来るのか。こちらはスローでやるのだからいつ完成するかもわからない。しかしその暁の事をいろいろ想像するのは楽しい。

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