日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

角刈り禁止

千円を機械にいれるとカードが出てくる。それを手にして待合の長椅子に座る。先客三名か。今日は二人体制だな、少し待つな、と足を組んだ。見慣れた風景だが壁の但し書きに目が行った。

「当店では角刈りとそれに相当する髪型のカットは受け付けておりません」と。

なぜか笑ってしまった。金を払うのだから注文通りやってくれ、といった野暮な話ではない。角刈りと言う言葉を少し懐かしく思い出したからだった。

角刈りにサングラス。するとショットガンが欲しくなる。角刈りにドスとなると腹に白いサラシを巻いてほしい。渡哲也に菅原文太高倉健。そんな往年のスターが思い出された。スクリーンから男気が匂い出てくる俳優さんだった。

頭頂部を平らにそろえて側頭部後頭部は上まで刈り上げる。角を四角くする。それはやはり闇の世界で生きる人を思い出させる。確かに今角刈りの男性は見かけない。その筋の人も今では茶髪にロン毛ではないか。高校生のスポーツ刈りとの違いも定かではないがあれは角が立ってはいない。しかも昨年の甲子園の覇者はそれぞれが自由な髪型だった。

角を立てる髪型がなぜこの店では禁忌なのかはわからないがあの手のハードボイルドはやはり印象が悪いのだろう。自分の住む街はあまりガラが良くない。駅の向こうには桃色ゾーンもある。泡姫の店もある。少しでもクリーンな街にしたいとの思惑なのだろうか。

髪の毛をカットしてくれた理容師さんは若く、ピアスを付けた今風の男性だった。クリーンな街づくりも解らぬでもないが、むしろ角刈りは多様性尊重の時代においては古びたアンチテーゼになってしまったのかもしれない。そう思うと腑に落ちた。

さて自分はいつもの通りに切ってもらった。髪の毛があった時代はいろいろ注文を付けたが、ガン治療の後はハゲのままだ。サイドを3㎜で上まで上げててっぺんはチョビチョビ立つようにと。しかし何を間違ったか今日はサイドを6㎜で、と注文していたようだ。バリカンのアタッチの話だ。どうもサイドの厚みが気になる。しかしあまり薄くすると角刈りになる・・。いや、頭頂部には間引いたカイワレ大根の程度の毛しかないのだからそうは見えまい。

気球のようにも思えるダサい髪型だが大丈夫だろう。これも多様性だから。

気球は高く飛翔し風に乗る。そこは多様性という空だ。

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