日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

少しづつ、変わってほしい

2023年4月1日から自転車でのヘルメット着用義務が課されることになる。その一報に接し口に出た。「ああよかった。しかし実現まで遅かったな」。

18歳の時から乗っていたオートバイ。転倒は3度ある。急制動によるものが2回、カーブで後輪を取られて転倒が1回。急制動の一回は後輪が路面の浮き砂にとられたのだろう、頭部を痛打した。ガツンという感触は今も覚えている。右肩と右側頭部だった。ヘルメットには丁度バイザーの根元辺り・耳付近に大きな傷跡が三カ所残った。三つの小石にぶち当たったのだろう。フルフェイスのヘルメットでなくハーフカップだったら、そしてヘルメット顎紐をしていなかったら今ここにはいない。まさにヘルメットに救われたのだった。

スポーツサイクルに本格的に乗り始めた時からあの経験が忘れらず自分はヘルメットを欠かすことは出来なかった。自分の好きな自転車は1970年代から80年代初めまでに人気のあったランドナーという車種。細身の鉄のフレーム、地面に平行なトップチューブ、ダウンチューブには左右二つのレバー型変速機。泥除け。そんな今見るとレトロに思えるようなスタイルのクルマだ。この手の自転車や同時代のロードレーサーバイクの愛好者の間にはファッションもしかりで、ヘルメット要・不要論がSNSグループで話題になっている。当時のファッションにはもちろんヘルメットなど無くロードバイカーにカスクがあった程度だろう。SFっぽい今のヘルメットがこれらのクラシックさを美とする自転車に似合わないことは自分も先刻承知だ。

今そんな議論を見ても「ランドナー(やクラシックロードバイク)にはヘルメットは似合わない」「着用義務でしょ」「安全第一」「自転車は自由な乗り物だよ」「自分はつけない」「結局自己責任だ」。色々な意見がある。

自分がバイクで転倒した時はいずれも時速30キロ以下だった。側頭部を痛打した際の速度は10キロ以下だったかもしれない。いずれも自転車の常用速度と変わらない。同じ二輪車なのだから急制動に路面要素などが絡まれば確実に同じ状況になる。制限速度30キロの原動機付き自転車にヘルメット着用義務があるのに、同レベルの速度の出る自転車にその義務が無いのが不思議で仕方が無かったのだ。

仮に双方に過失がなくとも車とぶつかることもあるだろう。その場合自転車乗りのヘルメット有無で車の運転手さんが問われる罪は過失傷害か過失致死か、変わってしまうだろう。ドライバーにとって運命の分かれ道になる。誰もそんな貧乏くじを引きたくない。まさに自転車乗りでもあり車のドライバーでもある自分は、ヘルメットなしで乗っている自転車、多くはママチャリと呼ばれる軽快車に乗っている方になるが、それを見かけると追い越しをかける時はその自転車が横に転倒しても自分が轢くことが無い程余裕をもって追い越すことにしている。自分も外れくじは要らない。

半年以上前だろうか、犬を散歩していると前後に幼子を二名乗せ電動軽快車が来たので、思わず言ってしまった。「少なくともお子様にはヘルメットしてあげたほうが良いですよ。お母さんが転んだらお子様は受け身を取れずに真横に頭を打ちますからね」と、しかしそのお母様は返事もしなかった。むしろ不快そうな表情だった。「何だこのうざい親父は」程度に思ったのだろう。

言いだしたらキリがない。ヘルメットに加え車道の左を逆走してくる自転車もお母さん・学生・子供を中心に多い。車の運転手がどれほどあれを怖いと思っているのかも知らないのだろう。一方で車道走行というがそれも怖い。道が狭くドライバーによっては嫌がらせなほど寄せて抜いていく車もある。結局、自転車と車、それぞれの運転手の認識が変わっていかなくてはいけない。

そんな中で自転車にヘルメットの着用義務が課せられたことは大きな一歩だと思う。自分を守る事でもあり、ドライバーを守る事でもある。次のステップとしては左側通行の徹底か。歩道走行の制約については道路事情を改善しないまま強いるのはなかなか難しいように思う。ドライバーへの自転車への啓もうを深めるのも大切だろう。

ヘルメットに命を救われた自分。自転車を愛する車のドライバーとして、自転車マナーと車のマナー、どちらも少しづつ、変わってほしい。

オートバイ用と比べると軽易ではあるがこれに救われることもあるだろう。ロードバイク用が主流の自転車用ヘルメットはどちらかと言うと頭に載せる感じで、かつ空力追及で尻尾が長いという形状。自分はバイクでの転倒で側頭部を痛打した経験から少しでも側頭部も守れそうなデザインのものにした。もちろん尻尾が無いもの。街乗り用とある。最近はデザインも多様化し、帽子型もあるのでありがたいだろう。(OGK KABUTO社Maxity)

ランドナーにせよロードにせよ、その巡航速度は自分の場合時速20キロ程度。転倒して打ちどころが悪ければ何が起こるかも分からない。車を巻き添えにしたら相手は過失を問われる。過失傷害か過失致死か。相手の人生も変わる。自分も相手も守る手段は、なんだろう。ヘルメット要不要の議論を待つまでもない。