2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧
自分の祖父は香川県は金毘羅さん参りで栄えた港町で自転車屋を営んでいた。広島県の福山や宮崎アニメ「崖の上のポニョ」の舞台として描かれた鞆の浦から、小さなフェリーが瀬戸内海を渡っているのだった。そんな潮の香のする田舎町だった。小学生時代は毎夏…
・根子岳 2128m 長野県上田市・須坂市 山スキーとはスキーの裏にシールと呼ばれる滑り止めシートを貼り踵の上がるスキー締め具を用いてスキーを履いたまま山頂まで登り、そこでシールを剥がして滑降するという、登山の一形態だ。いろいろと近年物騒な話題を…
横浜には結局自分は何年間住んだだろう。3歳から12歳までの10年間、21歳から60歳までの40年間。ただし40歳の後半から五十歳の前半までの七年間は海外に転勤していた。そうはいっても50年は横浜に住んでいた。すると好きな風景と言うものが出てくる。横浜に住…
今立て込んでいるのです。仕様が決まってから見積書をお送りします。すぐにご確認頂いてから取り掛かりますが、仕上がりは2027年になりますね。 二年か!随分と長いリードタイムだな、と思いながら目の前で受話器を握るご主人の電話を聞いていた。その店…
139と言うと一体何のスコアだろうか。139点も点を稼げるスポーツは?バスケットボールが近いかもしれないがそんなに多く点が取れるのだろうか。数字が多いほうが良いとするならばきっと139点は歓迎されるのだろう。ボーリングもそうだった。あれはパーフェク…
人は誰しもか悲しい気持ちになることがあるだろう。いわゆるセンチメンタルな気分と言うやつだ。自分はなぜだかそんな状態に陥っている自分が好きなのだった。 何かの曲を聞いては少しばかり感傷的になってくる。するともう少しその気持ちを先に進めたくなる…
白目をむくという表現はあまり好ましい印象はない。驚いたり恐怖を感じたりするときに使われるだろうから。しかし犬と生活をしていると目にするだろう。例えば彼は床に伏せている。何かの拍子で顔を上げずに見上げるならば黒目の裾に白目が見える。この表情…
大内塗と言う塗りものを知ったのは友人のお陰だった。両親は香川県生まれ、また自分も香川で生まれ、幼稚園からは横浜市民。そして広島市で中学高校と言う多感な時期を過ごした自分は「貴方のアイデンティティは?」と聞かれると、迷わずにこう答えるだろう…
山の作家・深田久弥の短編「瀟洒なる自然」を読もうと思い文庫を手に取った。春夏秋冬の四篇からなり、それぞれにその季節の山の思い出や随想が書かれている。瀟洒なる自然とはどんな自然だろうか。瀟洒とはあまり使わない日本語だが自分ならこんな風に使う…
美川憲一の歌に「三面記事の女」という歌がある。1974年の歌なので古い曲となってしまった。自分はまだ小学生だったのにけだるそうな歌声とその歌詞を覚えている。 ♪ ああ、私は三面記事の女 貴方の心を見失い 白い薬を飲みました♪ ああ、私は三面記事の女 …
二日前に降った雪も消えた。僅かに白いものが庭や路肩に残すのみとなった。太陽の力とはすごいもので日陰の部分の雪が残るのだが消えるのも時間の問題だろう。 今日は外気温14度と言う。高度差と百メートルあたりの気温の変化の公式で計算するならば海抜ほぼ…
朝目覚めると再び外が白かった。一昨日積った雪は昨日には溶けた。そこに又積もる。葉の未だ生えぬブナにもコナラの枝にもしっかり雪が載っていた。供に若い木なのだからこの程度の雪では枝が曲がることもましてや折れる事もない。しかしナンテンの樹は雪の…
ゴルフといえばお洒落でやや高慢なスポーツマンが、お金を持っていそうな腹の出たオジサンが頭に浮かんでいた。若い頃から腹は出ているものの自分には全く縁があるとも思わなかった。さらに言えば山歩きが好きな自分にとってゴルフ場はいまいましかった。豊…
ちんどん屋という方々を見なくなって久しい。幼い頃自分は競輪場のある工業都市に住んでいた。駅に出るとちんちんドンドンと鐘と太鼓を鳴らしながら、ラッパが、今思えばサックスかクラリネットだろうか、物悲しい旋律が流れる。新装大開店や大売り出しの紙…
隠し事をしながら間違えずにしっかりと確実に進めなければいけない事項がある。会社生活では人事考課・人事委員会というものがある。部門長は部下の人事考課をしなくてはいけない。そして委員会にかけて昇進対象か昇給対象かを個々に決めていく。良い評定が…
ここ八ヶ岳南麓は降雪はあってもさして積もらず、風の冷たさと気温の低さに耐えれば済む、そんな経験則をこのこ十二月から四ケカ月の間に得ていた。 朝六時半に火を入れた薪ストーブは薪を足すこともなく十時までは暖かい。昼は余熱にエアコンで暮らす。夕方…
鍵のかかる野菜倉庫に誤って人が閉じ込められた。船の食糧庫は密閉性が高い。窒息直前の所を三等航海士が救い出し彼はドクターを呼ぶ。「ドクター、カンファー!」と。 息絶えようとする人に向い若い研修医はそれでも試みる。カンフル注射を、と。しかし主治…
工事現場などで交通整理の警備員がやり取りをしている。スマホではない。「上、止めておいて」「オッケー、通していいよ」それだけの会話。電話をかけるパネル操作はおぼつかない。ボタン一つでもっと簡易にやり取りができるツール。ハンディトランシーバー…
山田洋二監督・映画「男はつらいよ」が大好きだ。実質的な作品は全48作。全作を何度も見ている。毎年の盆と暮れに放映された国民的な映画だった。そんな作品を初めは十時間を超える飛行機の機内ビデオで見た。そしてその後はありがたいことにBSテレ東でほ…
親の銀行預金通帳を預かっている。母はだんだんと記憶力も認知力も衰えてきている。これまでも何度も紛失してはいつも狼狽していたのだから。ここにあるよと言って収納しても次に行った時はない。そして大騒ぎをしている。自分で置く場所を変えたのだ。それ…
習慣としてNHKの朝ドラを毎日見ている。画面には現在時刻が表示されるのだから、あ、朝飯食べ終えよう、歯を磨こうと追い立てられる。結果的にここ数年はどの作品も見てきた。半年タームの番組ではあるが中では自分も途中離脱するものもある。「反省会」…
おでんのネタで何が好きかと言われたら困る。オデン汁を吸い込んだ具材はどれもそれなりにおいしくて、具材の良さがおでん汁に溶け出して開くのだから。大根と玉子は必須だが自分はちくわぶが好きだ。ゴニョゴニョとした食感はただの小麦粉の固まりだが。家…
自宅の玄関の扉を開けるとそこは雪一面。クロスカントリーの板を履いてふかふかの雪を踏み出そう。ウロコ板は軽快に動き自分は自宅から真っすぐブナの森に向かう。そこには狐の足跡がありうやがてシラカバからカラマツの森になる。雪が再び振りだして手を伸…
ヨコハマから山梨に引っ越して驚いたことがある。その思いはまた隣県の諏訪で強くなった。車のマナーだ。 自分も決して人に言えない運転マナーの持ち主だ。まず気が短い。瞬間湯沸かし器なのだから、かっとなるとクラクションは鳴らすしパッシングはするしア…
職場は海抜700メートルの原生林の中に在る。ここ数日の積雪は日あたりも悪い場所には雪を残しそれが氷結している。この辺りを走る車は慣れたものでスタックする事もなく走っている。同僚が乗ってきた車がいつもとは違うのだった。彼は確かハイブリッドの車だ…
好きな異性の容姿というものがあるだろう。学生の頃、だれもが女性アイドルのポスターを部屋の壁に貼っていた。あいつは松田聖子だった。二枚張ってあった。あの男は川島なお美だった。隣に斉藤慶子もいただろう。粋がっていたアイツは薬師丸ひろ子だった。…
「木曽路はすべて山の中である・・。」 何という魅力的な一文だろうか。これに匹敵する小説の冒頭の文章はこれしか知らない。「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。」いずれもここからどのような話が進むのだろうか。そんな読者の想像力をかきたてる一…
スーパーに行った。ひな祭りの音楽が流れていて彩鮮やかなちらし寿司が並んでいた。バレンタインデーのチョコレート、その一月後のお返し、フードロス問題が話題となった節分の恵方巻など、季節に応じたマーケティング努力の賜物と言える食べ物が多い。ひな…
急速に春めいてきた。家の扉を開けたら空気が丸いのだった。雪を纏った甲斐駒は相変わらず剛毅として暖かい空気を寄せ付けないように気張っている。しかしそんな努力の甲斐もなく少しづつ空気の柔らかさに稜線が溶けていくのだった。こんな朝に車に乗る。車…
コラッと叫んでしまった。ついでにポカンと殴ってしまう。すると彼は尻尾を巻いて隅に行くのだった。 またやられた。前は「信州安倍川餅」だった。そしてその前は「西新井大師の栗もなか」だった。口の周りにきな粉がついていた。そしてもなかのかけらが散っ…