日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

好奇心は罪作り

雛鳥が初めてみた鳥を親鳥と思う。本当か?しかしよく聞く話だ。今後の音楽観が決まるという意味では初めて聴いた音楽がそれに当たるだろうか?自分は小学生の頃バッハのフランス組曲で音楽に惹き込まれた。あの学習教材の赤いソノシートには感謝している。以降クラシック音楽は切り離せないのだから。ポピュラー音楽の入口は高校で聴いたロックだった。

ロックも何を最初に聞いて熱中したかによりその人の音楽嗜好は変わるだろう。高校生の学園祭では誰もがスモーク・オン・ザ・ウォーターをやっていた。レット・イット・ビーをやるバンドもいた。少し偏屈な自分はその対抗馬として位置づけられていたバンドを意識して聴くようになった。どちらもすぐには耳に入ってこないのだが、それしかないと意固地に聴いた。するといつかそれらにはまっていた。レッド・ツェッペリンローリング・ストーンズ、ともに中毒性があった。

彼らの音にはブルースやR&Bといったブラックミュージックが根底にあった。自分はやがて本家のブラックミュージックに辿り着いた。しかしブルースとR&Bは違う。奴隷生活の辛い日々から生まれた前者は単調だがエモーショナルに思えた。後者はそこにリズミカルな要素が加わったように思う。後者はさらにポップさや強調し、ビートを取り込み、ソウルやファンクなどになると言う。そのあたりに熱中した。しかしこの分野の歴史や分類には自分は素人だ。先達者はたくさんいる。幸いにバンド仲間からそのあたりをたっぷり教えてもらえた。

次回はどんなサウンドを目指そうか?ライブが終わるとそんな話がメンバーから出てくる。ブルースやそれ寄りのR&Bをやりたいね、となってくると俄然自分は嬉しくなるのだった。

メンバーで話す曲は1960年代70年代初めのその手の音になったがそのうちにコンセプトが固まる。好きな分野であるブラックミュージックをルーツまで辿ろうと話が進む。戦前のデルタ・ブルースやゴスペルも視野に入るだろう。ルーツという定義であれば白人のルーツ、トラッド・カントリー・ブルーグラスも入るね。と声が出てくる。佐渡おけさはどう?と言う声も上がる。カードを広げてからはまとまっていくだろう。このあたりの過程は楽しい。

まずギタリスト氏はブルースプレイには欠かせないスライド奏法をマスターすると宣言した。今頃彼は指に嵌めるボトルネックを入手しただろう。ドラマー氏はスティックの代わりにブラシをそしてウォッシュボードやカホンも買おう、と自ら話をしている。アコーディオンバンジョー、ヴァイオリンが欲しいね。と声が上がる。僕はギタリスト氏にはドブロをお勧めした。メタルトップのアコースティックギターはこの手の音には欠かせない。高いものだが彼はネットで検索をしているようだった。悪いことを言ってしまった。好奇心が引き金となり新しい世界が広がっていくさまを見ているとこちらも黙ってはいられなくなる。

バンドが目指す音はエレクトリックサウンドではあってもより素朴で生音に近くなる。アコースティックもあるだろう。ベース奏者としてどう対応するのだろう。音はソリッドではなくファットに行きたい。手持ちのベースギターでも弦の選び方や弾き方次第で対応できよう。しかしカタチも大切で、セミアコースティックかアコースティックベースが欲しくなる。楽器屋まですぐに行く。試奏すると狙い通りの音だった。ブルースハープのプレイヤーからは「これどう?」とオススメが来た。アップライトのベースだった。コントラバスのエレキ版だ。ベースギターもこれまで何本も持っては扱いきれずに手放していた。そんな中にまた手に入れるのだろうか?

この年齢になるとたくさんの都合の良い言い訳のやり方を知っている。アマチュア吹奏楽団の友人はトランペッターだか何度か機種が入れ替わっているように思える。いつしかコルネットも所有されていた。吹奏楽への興味と熱意が常に彼に前進する力を与えているのだろう。好きなことがあってのめり込むことは大切だ。だから物欲も好奇心というありがたい言葉で片付ける。

好奇心とは罪深い。広がり深まるなら出費を伴うのだ。しかしそれがなくなってはつまらない。楽しく生きるための出費だ、と都合よく言い訳をしよう。
 
さて自分はアコースティックなベースギターを入手するのだろうか?そう考え出すと止まらない。風呂の中でトイレの中で。箸を持ちながら、寝ながら。頭の中は丸くて美しいシェイプのギターに満ち溢れる。キダーの形はコーラの瓶のカタチに近い。そしてそれは女性のシルエットを模したという。ならば魅了されて当然だと自分を納得させるのだった。

自分を魅了するベース達。セミアコは音も柔らかく薄くて軽いボディは弾きやすい。アコースティックは箱がデカく引きづらいが音は更に柔らかい。どちらもフォルムが美しい。そんな理由で買うのだろうか?いや、やりたい音楽に合致するからだ、と自分に理由をつける。