日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

縁結び

一目あったその日から
恋の花咲くこともある
そんな貴女と見知らぬ貴方を
デートで結ぶ
バンチDEデート

そんなくだりをスルスルと言えるのは自分と同じ世代だろう。いまは知らないが当時は男女のカップルづくりの番組を明るくテレビで流していた。

男女の出会いは昔からお見合いという作為的な出会いづくりがあった。いつしか見合いは古臭くて格好悪いという風潮があったのか。テレビ番組は昭和五十年あたりだろうか。バンチDEデート、プロポーズ大作戦あたりだ。卓を挟んで男女五人同士が向かい合ってフリートーク。いざ意中の人のボタンを押す。卓の上の電光掲示板には皆の線が押した相手を目掛けて線となり伸びる。結ばれたらカップル成立。フィーリングカップル5対5など、はらはらして、早く大人になり参加したいと思ったほどだった。

男女の出会いはそんな化石のような仕組みやテレビ番組になるほどに永遠のテーマだ。容姿の冴えない自分とて大学生時のアルバイトは全て女子との出合いに全ベクトルがまっすぐに伸びていた。女性と知り合えるならとファミレスからハンバーガー店まで。しかし空振りばかりだった。

コロナになり授業はオンラインになりとうとう友達一人できぬまま卒業したという学生さんもいる一方でゲームやネットと言った仮想空間で結ばれた男女もいるだろう。結婚相談、出会い作りは大きな産業に成長したという。しかし縁結びを選ばない人もいる。価値観は多様化しているし正解などもないのだろう。かくいう自分。できればあまり苦労せずに良縁に巡りあいたいと思っている。そんな活動をここのところやっている。我が家の愛犬が世を去りあまりの寂しさにもう犬は飼わないと決めた。しかし心の隙間風があった。道を歩く知り合いの犬も多くいる。腕に抱える懐かしい温かみは何事にも変えられない。・・今の年齢を考えて無責任にならない前提でまた飼ってみようと思うのはいけないことだろうか?自分たちに何かが起きたらどうする?独立した子ども達と妻とで何度も相談した。

犬の譲渡会に行こうと決めるまで時間がかかったのはそんな理由もあるだろう。今日は二度目の譲渡会だった。数週間前の譲渡会で気に入った犬の里親に応募したが選ばれなかった。ボランティア団体の決めることだ。飼育環境も経験もあるのだが何故選ばれなかったのか。その理由も聞かなかった。年齢ならば仕方なかった。

ボランティア団体の手による里親募集には三種類あるだろうか。ブリーダーが用済みと手放した犬。何らかの理由で行政に保護された犬、飼い主が死んでしまい預けられた犬。どれもが彼らの前の姿を思うと涙が出てしまう。特にブリーダーから手放された犬は「卒業犬」と言われるそうだ。卒業と言う単語がかくも身勝手に使われているとは思わなかった。何から卒業したのだろう。飼い主が死んでしまったのは別として、他はやはり身勝手が生んだ結果ではないだろうか。人気の犬を大量に種づけ。目新しい商品も必要になる。するとありえない品種を掛け合わせて不思議なミックス犬を作る。保護犬はボランティアの家庭が預かっている。話を聞くとこの一年で一気に子犬の預かりが増えたという。コロナで巣ごもり化が進みペット需要が増えた。しかし生き物はこんなに大変なのかと手放すという。数年前の数字では減っているとはいえ未だ年間7000頭以上の犬の殺処分があるという。

二度目の譲渡会。予め保護団体のサイトを見てこの子と思う犬が居た。妻が見つけたのだ。会場で直ぐにわかった。あの子だ!まさに「一目あったその日から 恋の花咲く。ことも」あった。そんな彼はブリーダーからの「卒業犬」だった。一体何度の不本意な射精を強いられたのか、どんな過酷な生き様を、辛酸を舐めていたかもわからない。ああ彼には自分達しかいない、そんな正義感も湧くのだった。前回よりも一目見た時の電圧電流ともに大きく流れ、心のヒューズが切れそうだった。いや実際それは飛んだだろう。預かり主さんと団体代表さんと話をし応募書類を書いた。そこは前回と変わらない。

縁結び。どんな結果が来るのだろう。TV番組で見たようなあの電光掲示板机の矢印は結ばれるのだろうか?しかし同時に胸が痛む。そもそも団体のサイトを見て「自分はこの子が良い」と選んだではないか。その時点で命の選択をした。それは身勝手ではないのか。

膨らんだはずの期待は疑問や悔恨という言葉が刺さり空気はたちどころに抜ける。眠れない数日になるのかもしれなかった。

一回目の譲渡会は郊外の公園。熱意ある団体代表の下で多くのボランティアさんが自宅で飼育している。安易に手放す人もいる中でこういう方もいらっしゃるのだった。

二度目の譲渡会はビルのテラス。ホットカーペットの上で誰かをただ待っている。今はボランティアさんの家で平和に暮らしているが、永遠の飼い主を、待っている。

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