日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

いらっしゃい・福之記1

とある縁があり我が家にワンコがやってきた。いらっしゃい、と迎えた。七月に十二年間共に暮らした犬が他界した。彼の最後は脾臓癌だったが一晩だけ苦しがった。翌朝昼食を二人で食べていたら苦しみでばたつかせていた四本の脚は止まり彼は永遠の伏床を得た。自分は背中をさする事しかできなかった。彼無き家には空虚があった。もう決してワンコは飼わないと妻と話しをしていた。しかしホームセンターに行けばペットコーナーに行き犬を見ている。それも彼と同じ犬種ばかり探している。何故だろう、また飼おうかと言う話になった。しかし今から子犬はない。一般的に自分達の健康年齢はあと十五年は残るだろうか。犬を後に残したくはなかった。とはいえよぼよぼになって先立たれたらもう気力が持たないだろう。現在で齢三から五歳辺りの犬が居れば算数の式は成り立つように思えた。

すると自然に里親募集という単語が浮かぶ。そこから犬の譲渡会には直ぐにつながる。試しに覗いてみたら他界した犬と同じ犬種もきちんといる。妻も自分はあの犬種が好きで他には目が向かなかった。初回の譲渡会では縁が無く、二回目の譲渡会で見た彼には縁があった。実際飼育されている方とボランティア団体代表による面談でまず一次予選通過だった。つぎに我が家の住環境を代表の方が視察に来られた。これもクリアし、トライアル同居が始まる。何かがあれば関係解消も可能というが、一体何があるのだろう。

彼は譲渡会の時には抱っこは禁止だった。ただ四キロ程度という体重で同じオスのシーズーだった先住犬が六キロあったのだから随分とスリムだった。実際背骨もろっ骨もゴリゴリ触れた。彼はブリーダーからの卒業犬だった。卒業犬とは上手い言い方だがブリーダーがご高齢になり事業継続を諦めたいとして引き取られたのだった。まずは短い散歩。ボランティア飼い主さんが言われていたが確かに人間好きでぐいぐいと人に向かって歩いていた。電柱で彼は片足を上げた。よくやった、とすぐにえさを取りに帰り、ご褒美に上げた。これまでどんな生活だったのか。彼の痩せた姿と心地よく振るもののいつも両脚の間にある尻尾が気になった。玄関の呼び鈴が鳴っても反応はしないくせに自分が室内を歩くと何処までもついてくるのだった。ここが彼に取り安息の地であればと思うのだった。

五歳の福ちゃん、よろしくな。まずはもう少し太らしちゃるけぇ、とお話しした。