日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

日々のスケッチ・随想

メビウスの輪

不審なメールを妻が受け取った。契約している電力会社を名乗っていた。曰く、先月分の電気代が未払いで停止しますと。かなり一方的な文面だった。電気代は口座自動引き落としにしていたが使用量に無関心になってしまっていたので数か月前に支払い方法を振り…

イヌリンピック・福之記9

子供のころから運動音痴だった。小学生なら誰しもが夢中になったのは草野球だった。空き地があればどこでもできた。だれもが王・長嶋になりたがった。自分は柴田が好きだった。王と長嶋は輝きすぎていたが柴田・高田・末次辺りは地味にかっこよかった。しか…

妻のプレイリスト

すまないけどこの曲をスマホに入れてくれない? そう言って紙切れに書いた曲の一覧が手渡された。どれもが自ら好んで聞く曲ではないので手持ちのCDも無かった。結婚した頃妻が買ったCDを引っ張り出した。自分はCDの入れ替わりが激しいので昔の盤で残っている…

私の子供達

「きちんと読んで頂きありがとうございました。コメントが沁みました。この作品はある実在の川を軸に過ぎた時間を積み重ねるような思いで書いたのです。」 そう言いながら途中で感極まって泣いてしまった。自分の書いたものを初対面の方々にしっかり読んでい…

小さな共同体

寒気到来、平野部でも降雪予想、要警戒。そんなテレビ放送が続いていた。警戒心よりも「そうか来るか」と妙にときめくのは雪に縁遠い瀬戸内海の生まれだからかもしれない。確かにその夕方から雪は強くなった。坂の多い街だ。バスは運行できなくなり誰もが諦…

隠れ家にて

そこは隠れ家のような店だった。赤坂から乃木坂に抜ける緩い上り坂から少し奥まった場所だった。 木の扉の上部にだけ細長いガラス窓が在った。この中を覗くのは勇気が必要だった。扉を開けるとマスターが店の準備をしていた。彼に会うのはもう四十年ぶりに近…

曇りのち晴れ

今の世の中、買い物に現金を使う人の割合はどの程度だろう。少なくとも駅で切符を買う人は新幹線などを除くとほぼゼロだろう。非接触IC技術が開発されてからはICカード一枚で事足りる世の中になった。バスも然りだろう。 いつもの駅とは違う私鉄に乗ろうとし…

白の上塗り

とある木工品を作っている。サンドペーパーで木肌を整え木工ボンドを使った。塗装する必要があった。色はトリコロールとした。フランスに住んでいた頃、パリの空の下で何気なく揺れている国旗には嫌みが無くて好ましかった。特に青空を背景にすると良く映え…

困ったことに

週に一度の銭湯巡り。贅沢日と呼んでいる。行き先のレパートリーも増えてきた。黒い湯の温泉、炭酸泉、ジェットバス、露天風呂。毎週違う湯に行く。何処も二人で千円。今どき風呂のない家はないだろう。しかしいつも人が多い。つくづく日本人は風呂好きなの…

風のいたずら

夜道を自転車で走っていた。仕事帰りだった。この時間は住宅地のバス停で降りた客が散っていくと路地を歩く人など誰もいなくなる。風の吹く夜だった。いや、木々は揺れるのだが風はもっと高い空に吹いていたようだ。その余韻が舞い降りて下界の木立を騒がせ…

教えと祈り

歌と楽器。どちらが先に生まれたのだろう。現代のデジタル知恵袋であるネットの知恵を借りると旧石器時代から打楽器が見られたとあり笛も同様のようだ。鍵盤楽器も紀元前、弦楽器は中世とある。 誰しも嬉しい時、悲しい時に歌が寄り添うだろう。歓びは歌にな…

罪作りな器たち

中華鍋の把手にはタオルでも巻き付けられている。そこを握り鍋を揺らす。もう一つの手は玉杓子を踊らせる。この時の音を形容するならカラコンカラコンとなる。米は宙を舞い鍋に着地する。ウルトラCだろう。オヤジの鍋杓子使いは神業か。最後に中華鍋をもう…

憂いもなく

新年を迎えて早くも一月が経とうとしている。月日の経過の速さと年齢を重ねる事にはある種の相関関係があると思っている。それは直線で表現できるものではなくそこに何らかの偏向が働く。十歳の時、二十歳の時、五十歳、そして今。感じる一日の速さは高齢に…

危ない所だった

中古品を買い取り販売する店は言ってみれば中古再販店だろう。元は古本屋だったが古着やハードウェア一式を扱うようになっている。不景気も手伝ってか規模の大きな店から小さいものまで何種類もあり、売る方も買う方も人が絶えない。自分も不用品や本を買い…

なぜか心沸き立つ

港にあるアウドドアショップに来た。一通り揃ってしまいもうアウドドア用品など今更買うものは無いのに、なぜかこの店は胸が弾む。もう四十年近く前にその商品を買ったブランドだが今では人気店で日本中全国展開だろう。今日では街着として人気のブランドに…

富士山ここにあり

僕がこの地を知ったのは昭和40年代初めだろう。父親がこのあたりに家を建てようと土地を探していた。埃だらけの道をバスに揺られて走ったことを覚えている。 次にこの場所を意識したのは中学生か高校生だった。色気だって来る年齢だからそんな小説に惹かれた…

歪み

車を売るなら〇ッグモーター、あの印象的なコマーシャルもすっかりテレビから消えてしまった。今の自家用車は二年半前にそこで買ったものだった。十年以上年乗っていたジムニーを手放したのは脳の手術をしてから衝突安全防止機能の付いた車が必要に思えたか…

不思議な匂い

甘い香りがして昼寝から覚めた。それは懐かしくもあり何故みか酸っぱさもこみ上げる匂いだった。 甘酸っぱいといえば初恋だろうが記憶の中でのそれは石鹸の匂いだった。中学一年か二年年だったろう。素敵な女子がいた。何度か交換日記を交わしたかもしれなか…

ペルソナと仮面

会社を早期退職して三年半だった。本来の定年の年をようやく迎えた。二年前からパートをしている。多少は頭を使うとはいえそれはある程度決まった業務だった。ジーンズにフリース、ナイロンのジャケット。汚れても良い格好で仕事をするのだった。 生活のリズ…

昔の名前で 福之記7

京都にいた時は「しのぶ」と呼ばれていた。神戸では「なぎさ」と名乗った。そんな人もいたのだろう。彼女はきっと夜の女。幾つもの名前は源氏名。本名と商売の名前の二本立てだったろう。 十二年もの間そう呼んでいたのだから簡単には変わらないようだった。…

前向きな笑い

「高いな」。顔をゆがめてそう自然に出てしまった。しかしそこは人が多く、遠慮が働いた。声にせずに口を動かしただけだった。すると真正面でカートを押していた初老の女性が、僕の顔を見てにこりと笑った。とても嬉しそうだった。 「あれ、聞こえました?」…

かさぶた剥がし・福之記6

エリザベスカラー、なぜそう言われるのだろう。故エリザベス女王がつけていたわけでもない。ネットで調べると十六世紀頃の英国はエリザベス朝の頃に女性の首元に実際に使われていたからとの解説があった。確かにそんな絵画は美術や歴史の教科書で絵に見るこ…

忘れ物とCOPQ

オルリー空港はパリ市内の南にある。北側のシャルル・ド・ゴール空港は日本からの便も到着する国際便ターミナルを持つフランスの玄関だが、オルリーも小さい規模ながら近郊への国際便が入る。空港チェックインカウンターで指摘された。なんと、娘のパスポー…

予算達成

いつも予算達成だな。なんとも羨ましい・・。 決められた計画。達成したことはあっただろうか?ここで言う計画とは夏休みに何をするか、と言った小学生の立てる目標ではない。仕事の話だ。 仕事には多くの計画がある。事業計画と呼ばれる。会社はその計画で…

ダイバート

眠くて仕方なかった。12時間のフライト、そして15時間時計がずれたのだから仕方なかった。米国の入国審査は何処も時間がかかるがシカゴ・オヘア空港は特に長い。長蛇の列をクリアし「ビジネス?カンコウ?シモン」とガムを噛みながらしゃべる審査官にスタン…

納期の無い仕事

「ツギハ スローデ イクゼ!」 東京ドームだった。例の粘っこい声でたどたどしい日本語を喋るのだった。するとキースとロニーはいつかアコースティックギターに持ち替えていた。次に始まったのは確かにダンスナンバーでもブルースでもカントリーでもロックン…

信頼関係・福之記5

ザイルパートナーと言う言葉がある。雪山でパーティを組む。ザイルで互いの身を結ぶのは一人が稜線から滑落したらもう一人が滑落防止姿勢を取りそれを防ぐ為だ。ピッケルと雪面に刺すと言うが、さてどれほどのものだろう。不幸にして流されることもあれば供…

笑いすぎと引きこもり

クラッカーを食べていた。家内とテレビでも見ながら馬鹿話でもしていたのか。何がそんなにおかしかったのだろう?アハハハ、と、大笑いしていた。すると噛み砕いたクラッカーの一かけらが迷子のように気管支に入ってしまった。そこから咳が止まらくなった。…

理解できない事

E=IR。「オームの法則」を習ったのは中学生だろうか。電圧=電流x抵抗 と考えるとああ成程と思う。学問は単純化すればわかりやすくなる例か。アマチュア無線技士という資格を取ったからにはやはり何処かで科学的な事柄に興味があった。それは当時少年漫画の…

今年もありがとう母校・箱根駅伝

もう脈は薄いかと思っていたら往路では断トツだった。今年こそは気合を入れて応援しようと思った。翌日何故か朝は早く目覚めてしまった。 部活動に打ち込んたわけもなく学業に専心したわけもない。ゼミにも入れなかった。まさに無為徒食だった。顔の広い友が…