日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

整理整頓

誰しも何に付け得手不得手がある。身の回りの整理などは最たるものだろう。その人の机の上を見ればほぼどんな人かがわかる。現役時代の自分の会社の机の上には書類が軽く20センチは溜まっていた。それが一箇所ではなく机の左右に在り辛うじてPCと外付けモ…

面取り

木材は工作の前に角を面取りするように。そう技術家庭の時間に教わった。角材から木柱を作る場合でなくとも、木肌が手に接する箇所は角をやすりで綺麗に落とすように、そんな内容だったと思う。 心地よく晴れた休日だった。朝の散歩では北からの風は強かった…

メビウスの輪

不審なメールを妻が受け取った。契約している電力会社を名乗っていた。曰く、先月分の電気代が未払いで停止しますと。かなり一方的な文面だった。電気代は口座自動引き落としにしていたが使用量に無関心になってしまっていたので数か月前に支払い方法を振り…

不安定な均衡・台湾的風景

台湾旅行で自分たちが選んだのは空港からホテルまでガイドさんが随伴してくれるものだった。昔なら迷いなく航空券だけを買いあとは自力だった。それが旅行だった。アメリカやヨーロッパでよく見る風景・・揃いのバッチを胸に観光バスから降りてきて旗を持っ…

イヌリンピック・福之記9

子供のころから運動音痴だった。小学生なら誰しもが夢中になったのは草野球だった。空き地があればどこでもできた。だれもが王・長嶋になりたがった。自分は柴田が好きだった。王と長嶋は輝きすぎていたが柴田・高田・末次辺りは地味にかっこよかった。しか…

簡潔に追悼

小澤征爾氏が逝去された。八十八歳。今晩のニュースを見ていて知った。食事時、思わず箸が止まった。 娘からすぐにラインが来た。「パリで観た時凄かったね、残念」とあった。当時小学生だったのだが彼女はよく覚えていたのだろう。シャンゼリゼ劇場の最上階…

妻のプレイリスト

すまないけどこの曲をスマホに入れてくれない? そう言って紙切れに書いた曲の一覧が手渡された。どれもが自ら好んで聞く曲ではないので手持ちのCDも無かった。結婚した頃妻が買ったCDを引っ張り出した。自分はCDの入れ替わりが激しいので昔の盤で残っている…

私の子供達

「きちんと読んで頂きありがとうございました。コメントが沁みました。この作品はある実在の川を軸に過ぎた時間を積み重ねるような思いで書いたのです。」 そう言いながら途中で感極まって泣いてしまった。自分の書いたものを初対面の方々にしっかり読んでい…

小さな共同体

寒気到来、平野部でも降雪予想、要警戒。そんなテレビ放送が続いていた。警戒心よりも「そうか来るか」と妙にときめくのは雪に縁遠い瀬戸内海の生まれだからかもしれない。確かにその夕方から雪は強くなった。坂の多い街だ。バスは運行できなくなり誰もが諦…

隠れ家にて

そこは隠れ家のような店だった。赤坂から乃木坂に抜ける緩い上り坂から少し奥まった場所だった。 木の扉の上部にだけ細長いガラス窓が在った。この中を覗くのは勇気が必要だった。扉を開けるとマスターが店の準備をしていた。彼に会うのはもう四十年ぶりに近…

曇りのち晴れ

今の世の中、買い物に現金を使う人の割合はどの程度だろう。少なくとも駅で切符を買う人は新幹線などを除くとほぼゼロだろう。非接触IC技術が開発されてからはICカード一枚で事足りる世の中になった。バスも然りだろう。 いつもの駅とは違う私鉄に乗ろうとし…

白の上塗り

とある木工品を作っている。サンドペーパーで木肌を整え木工ボンドを使った。塗装する必要があった。色はトリコロールとした。フランスに住んでいた頃、パリの空の下で何気なく揺れている国旗には嫌みが無くて好ましかった。特に青空を背景にすると良く映え…

困ったことに

週に一度の銭湯巡り。贅沢日と呼んでいる。行き先のレパートリーも増えてきた。黒い湯の温泉、炭酸泉、ジェットバス、露天風呂。毎週違う湯に行く。何処も二人で千円。今どき風呂のない家はないだろう。しかしいつも人が多い。つくづく日本人は風呂好きなの…

風のいたずら

夜道を自転車で走っていた。仕事帰りだった。この時間は住宅地のバス停で降りた客が散っていくと路地を歩く人など誰もいなくなる。風の吹く夜だった。いや、木々は揺れるのだが風はもっと高い空に吹いていたようだ。その余韻が舞い降りて下界の木立を騒がせ…

教えと祈り

歌と楽器。どちらが先に生まれたのだろう。現代のデジタル知恵袋であるネットの知恵を借りると旧石器時代から打楽器が見られたとあり笛も同様のようだ。鍵盤楽器も紀元前、弦楽器は中世とある。 誰しも嬉しい時、悲しい時に歌が寄り添うだろう。歓びは歌にな…

罪作りな器たち

中華鍋の把手にはタオルでも巻き付けられている。そこを握り鍋を揺らす。もう一つの手は玉杓子を踊らせる。この時の音を形容するならカラコンカラコンとなる。米は宙を舞い鍋に着地する。ウルトラCだろう。オヤジの鍋杓子使いは神業か。最後に中華鍋をもう…

二つの鍵・台湾的風景

そのお寺は広くはないが多くの市民で溢れている。ホテルから地図を片手に適当に散歩する。とある路地に迷い込んだ。幅2メートルか。長さは数百メートルありそうだ。ビルの狭間の通りはウナギの寝床だった。一間取り二メートル程度の店舗だ。そこにはさばいた…

憂いもなく

新年を迎えて早くも一月が経とうとしている。月日の経過の速さと年齢を重ねる事にはある種の相関関係があると思っている。それは直線で表現できるものではなくそこに何らかの偏向が働く。十歳の時、二十歳の時、五十歳、そして今。感じる一日の速さは高齢に…

危ない所だった

中古品を買い取り販売する店は言ってみれば中古再販店だろう。元は古本屋だったが古着やハードウェア一式を扱うようになっている。不景気も手伝ってか規模の大きな店から小さいものまで何種類もあり、売る方も買う方も人が絶えない。自分も不用品や本を買い…

夜市・台湾的風景

街なかのマクドナルドに入った。眼の前の通りには二階建ての路面電車が走り的士と書かれた赤いタクシーが忙しそうだ。歩く人並みは東京よりも密度が多くざわめく。昨夜に到着した初めての外国、香港の風景だった。朝食にでもと入ったマクドナルドの店員はな…

お好きですな・・

とある高原の道の駅だった。週末は観光バスも入り近所の高級リゾート施設から流れてくるお客様でここは何時も満車だ。しかも敷地内には日帰り温泉もあれば東京の老舗広東料理店もあるのだから人気のほどが知れる。 空気が肌を刺すのはそこが海抜千メートルの…

鼻ぺちゃ天国・福之記9

港の見える市営公園だった。そこはクジラの背の様な丘の上を園地にしたものでドッグランやバーベキュー施設もある。一月の港を吹く風は冷たい。戸外で遊ぶにはまだ早いのかもしれない。しかし犬連れの散歩者が多かった。多くの犬種に会える。秋田犬やサモエ…

なぜか心沸き立つ

港にあるアウドドアショップに来た。一通り揃ってしまいもうアウドドア用品など今更買うものは無いのに、なぜかこの店は胸が弾む。もう四十年近く前にその商品を買ったブランドだが今では人気店で日本中全国展開だろう。今日では街着として人気のブランドに…

紙の上の箱庭

つい最近まで登山と言えば何時も二種類の地図を持参していた。登山ガイド地図と地形図だった。 登山ガイド地図はルートと所要時間などの情報が記されたものだ。自分達のヤマ屋世代では「エアリア」とだけ呼ばれる地図だ。ユポ紙で出来たそれは耐水性と耐久性…

富士山ここにあり

僕がこの地を知ったのは昭和40年代初めだろう。父親がこのあたりに家を建てようと土地を探していた。埃だらけの道をバスに揺られて走ったことを覚えている。 次にこの場所を意識したのは中学生か高校生だった。色気だって来る年齢だからそんな小説に惹かれた…

僕のセーター・福之記8

生まれた時から服なんか着たことは無かったよ。生まれたての記憶はないけどママが僕をたくさん舐めてくれたよ。それで目が覚めたのかもしれないんだ。 ボクは生まれてからすぐにママと離れてしまって、何故だろう、檻の中にずっといたんだ。時々お爺さんがや…

手作りの音・真空管自作アンプ1

音楽が好きならば多少はオーディオに金をかけるだろう。最近では昔ながらのレコード盤が人気と言う事で新譜をレコードで出すアーティストも出てきている。かさばる、扱うのが面倒だ、そんな理由でCDが世に出た1980年代半ばから自分はレコードを手放しCD…

歪み

車を売るなら〇ッグモーター、あの印象的なコマーシャルもすっかりテレビから消えてしまった。今の自家用車は二年半前にそこで買ったものだった。十年以上年乗っていたジムニーを手放したのは脳の手術をしてから衝突安全防止機能の付いた車が必要に思えたか…

不思議な匂い

甘い香りがして昼寝から覚めた。それは懐かしくもあり何故みか酸っぱさもこみ上げる匂いだった。 甘酸っぱいといえば初恋だろうが記憶の中でのそれは石鹸の匂いだった。中学一年か二年年だったろう。素敵な女子がいた。何度か交換日記を交わしたかもしれなか…

ペルソナと仮面

会社を早期退職して三年半だった。本来の定年の年をようやく迎えた。二年前からパートをしている。多少は頭を使うとはいえそれはある程度決まった業務だった。ジーンズにフリース、ナイロンのジャケット。汚れても良い格好で仕事をするのだった。 生活のリズ…