日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

2024-01-01から1年間の記事一覧

フキ三昧

子供の頃、原っぱにたくさん咲いていた名も無い花を姉は無心に摘んでいた。それは小さな花束になり持ち帰ると母は「マーガレットね」と言うのだった。姉の嬉しそうな顔と花を摘む後ろ姿はよく覚えている。眼の前の路傍の草の前にしゃがんでプチプチと音を立…

桜並木の見沼用水

埼玉県の見沼公園あたりの風景を知ったのは誰かのブログだったろうか。いや、ランドナーというキーワードで検索したWEBサイトだったかもしれない。ランドナーとは今流行りのカーボンやアルミのロードバイクではなく、鉄のホリゾンタルフレームに泥除けのつい…

羽やすめ

次回のバンドのリハーサルに向けてベースギターの練習をしていた。新しい曲の音をようやく拾えた。まずは曲を流して全体像を掴みたい。リズム楽器はノリが大切で音源を流しながら体で拍子をとって弾いていた。曲の途中で止めると体の中のグルーブ感が止まっ…

薄いコーヒー

♪冷えだした手のひらで包んでる紙コップはドーナツ屋の薄いコーヒー ほっと一息は良いものだった。僕には陶器のカップに入った目の前のそれは歌の様には薄くは感じられなかった。 駅前のドーナツ屋は店舗統廃合だろうか、一度廃業し違うテナントが入っていた…

歯磨き・福之記12

ドリフの「八時だよ全員集合」が大好きだった。番組の最後では出演者一同がステージに並び「いい湯だな」を歌うが、そこで一番人気のカトチャンがこう言う。「歯みがけよ」と。しかし歯磨きは好きではなかった。痛いし面倒くさかった。色気づき口臭が気にな…

捻じれたチェーン

油まみれの指先を見て思い出した。香川で自転車屋をやっていた祖父の指だった。子供の頃毎夏遊びに行くといつも祖父はパンクを直しチェーンに油を指していた。その彼の指先は真っ黒で石鹸で洗ってもとれていない。もはや地肌の色と化していた。黒い手指に笑…

親指サイズ

娘から妻にラインが来た。「円形脱毛症になった」と。それなら自分もなった、直ぐに治るよ、と話したが「相変わらずね。あなた私の円形脱毛症を見つけて指摘したでしょ、結婚前の話よ」と妻は続けたのだった。 すっかりそんな出来事は忘れていた。まだ二十代…

ザノースフェイスのマウンテンパーカー

自分がアウトドア趣味に目覚めた1980年代とは少し混沌としていたな、と思う。国内外の文化が混じっていた。アウトドアのファッションとしての話だ。 ハイキングや山登りは昭和30年代から流行り始めたようで当時は英国スタイルなのかツイードのジャケットを着…

腹帯

友人の娘さんが妊娠されたという。結婚後三年目と言う話だった。その娘さんは母である友には妊娠三カ月でそれを告げたそうだがしばらくは口外しないようにと言われたという。安定期に入り旦那さんからそれを夫の実家に伝えたそうだ。 腹帯などは今も使うのか…

何かが起こる予感

強い風の吹く日だった。木造三階建ての家は揺れる。風は立ち向かうものではなく受け流すものだと知った。梁がたわんで家全体で受け流していると思うと家の揺れは気にならない。頼むぜ頑張れと応援する。これでまともに耐えたらどこかで崩れるだろう。思えば…

世界平和の平均律

ダニエル・バレンボイムの録音に初めて触れたのは指揮者としてではなくピアニストとしてだった。ただそれが何だったかはあまり覚えていない。ベートヴェンのピアノソナタだっただろうか。当時のLPレコードは手放してしまったし、あの頃はバックハウスやケン…

終わりと始まり

暖かくなったのか寒いままなのか、よくわからないまま数週間が過ぎている。日中の陽射しは陽だまりを作るがそれはすぐに北風に蹴散らされてしまう。ただ、確実に春が近づく風景は、確かに在る。梅の花はもう散ってしまい樹は肌寒そうに思える。桜の蕾は少し…

天婦羅せいろ、大盛で

一人住まいの母を蕎麦屋に連れて行ったのは母が蕎麦を食べたがっているからだった。父も母も四国は讃岐の人間だ。讃岐はうどん。自分も香川生まれで、物心ついたころからうどんを食べていた。我が家は当時転勤で横浜に住んでいたが母と自分達姉弟は夏休みの…

オープンマイク

オープンマイクと言う言葉を知ったのはバンド仲間からだった。ネットにはこう書かれている。「店のマイクを飛び入りの客に開放する」と。カフェやライブハウスで行われるのだろう、ステージ飛び入りで歌う。バンドメイトの女性は自分たちがやっている音楽と…

上州三峰山

関越自動車道を北に向かう。ゲレンデスキーに熱中していた頃は毎冬の話だった。しかしテレマークスキーでのバックカントリーの楽しさを知ってからはスキー場は無縁になった。いつか関越道は登山やスキー登山のための道路だった。 高崎より北に向かうならその…

日陰の文化・亡き人宛の手紙

実家には老いた母が一人で住んでいる。介護保険の点数を使い切るように様々なサービスを入れている。ヘルパー、デイサービス、介護器具・・。ありがたい世の中で一週間絶えることなく人が出入りしてくれる。そのサービスまで持ってくるのは大変だった。いつ…

ゼロポイントのアルパインジャケット

もともとはコアな登山用品ブランドだったものが今ではすっかり街着のブランドになってしまったものがある。直ぐに浮かぶのはノース・フェイス、パタゴニア、そして国産ブランドならモンベルだろうか。いずれも街着としてのブランドステイタスを自分は知らな…

9ボルトが欲しい

おお、なんと13.8ボルトか。良かった、このまま使つていたら壊れたな。煙の一つも出たかもな。ホッとした。 ギター用のコンパクトエフェクターは9ボルトの乾電池で動く。外部からの直流アダプタも同じ電圧だ。乾電池が切れたので手持ちの他のマルチエフェク…

IDカード・福之記11

運転免許書、社員証、学生証、そしてマイナンバーカード・・。誰しもが自分の写真が写ったカードを持っているだろう。 犬の写真が入ったカードなど想像もしなかったが、それなら名前をもう少し丁寧に書けばよかった、と思うのだった。保護犬が家にやってきて…

ランステの会員証

「ステージでへたりたくないのよ、だから走っとかないと。ミックだって今もステージ狭しと踊りながら走り回るでしょ。彼八十歳なのに」 二人とも少し息が上がっていた。酒が入った上に乗り換え駅の階段をダッシュしたのだ。休日前夜の都心の駅でやってきた電…

娘の自転車

いいの、人の話は聞きたくないの。自分で決めるし人からああだこうだとウンチク聞きたくないの。・・私は一人の時間が欲しいから自転車を買ったの。 くそ、なんで混んでるのかな、渋滞の一番先まで行ってその原因を起こしている「ヤツ」を割り出して謝らした…

山の湯

登山の楽しみの一つは、山麓の湯だろう。三十年以上昔の政府の肝いり政策・ふるさと創生事業で支給された支援金を元で多くの温泉施設が至る所にできた。下山して緊張が解ける。そこに暖かい湯がある。いつか山が目的なのか湯が目的なのかわからなくなる。有…

僕の椅子

腰かけると少し音が鳴るのは油が切れているからだろう。もともと余りに大きくて決して気にはいってはいなかったのだ。今の家に引っ越すときに自分の部屋らしい一角を居間の角に設けた。狭い敷地に容積率ぎりぎりまで無理やり立てた三階建てだったが、寝室に…

グルーヴィな日々

グルーブという単語を知ったのは何時だろう。間違いなくそれはアース・ウィンドアンドファイヤ(EW&F)の1981年のナンバー「Let's Groove」だったろう。リアルタイムだった。敢えて邦題にするならば「グルーブしようぜ」になるだろうか。レッド・ツェッペリ…

遅咲きのスイセン

師走から年が明けた睦月あたり、千葉は内房に足を運べば一足早い春に会える。それはスイセンのお花畑だ。スイセンは日本の在来種ではないという。球根を誰かが植えたものが、あるいはそれが野生化したのかかは分からない。 内房には「スイセンロード」と呼ば…

陽だまりとからっ風

とある群馬県の古刹だった。古刹の裏手には湿地と澄んだ沼があった。数年前に来た時には気づかなかったが砂利敷の駐車場の隣にアスファルトの大きな駐車場があった。それほど有名とも思えぬこの場所にはやや不釣り合いな大きさだった。しかしその一角に真新…

遊びもほどほどに

ロックを聴き始めたころはギターの音色は歪んだものと思っていた。そんな音ばかり聞いていた。しかし今では切れ味の良いリズムギターが耳に心地よいのだから音楽的嗜好は変わるものだと思う。それらの音を出すコンパクトエフェクターはギタリストにとっては…

ソラナックスとゾルビデム

今までに数えた羊は何匹だろう。その数は数えていないがそんな民間伝承のお世話になったことはある。しかしあまり効果もなく、かえって開き直ってガバっと布団を剥いで起きてしまうことのほうが多かった。すると明日のことが気になり目がますます冴える。仕…

やはりそうなりますか

学生時代の友とは面白い。わずか四年とは言え同じ時間を共有した。当時の彼等の物の言い方も考え方も表情も声もすべて頭に入っているのだから、当時とはシームレスに会話が進むのだった。 あの頃は楽しかったわね。還暦を超えるなんて思ってなかったなぁ、そ…

つがい

♪しょ、しょ、しょじょじ、しょじょ寺の庭は・・・ さて皆出て来い来い来い、となるのだろうか。てっきりこの唱歌はこのお寺が場所なのか、とずっと思っていたがどうもそれは違うようだった。千葉の木更津らしい。しかし童謡の場所を探し当てて何の得があろ…