日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

ゼロポイントのアルパインジャケット

もともとはコアな登山用品ブランドだったものが今ではすっかり街着のブランドになってしまったものがある。直ぐに浮かぶのはノース・フェイス、パタゴニア、そして国産ブランドならモンベルだろうか。いずれも街着としてのブランドステイタスを自分は知らない。多くの方が着ているから人気なのだろう。

出会いは自分がアウトドアに目覚めた1980年代後半だった。モンベルは国産品であり細かいところまで気を使った製品作りだった。そんなモンベル製品の初めはテント、そしてゴアテックスのレインウェア上下だった。テントはバイクでのキャンプツーリングの為に買った。一方のレインウェアは山に行く予定が決まり慌てて登山道具店に駆け込んだものだった。季節外れだったのか入手できたのは上下ともピンク色だった。パタゴニアは創業者の名前を付けたその前身ブランド・シュイナードの山スキー道具しか知らない。使ったことはない。ノースフェイスの製品は当時はザックを使った。サイズ感が日本人に向いておらず使い勝手を考慮した作り込み感も感じなかった。色々な意味でアメリカ製品だった。

いつしかウェア類を中心にモンベル商品が増えてきた。ザックや登山用のテント、登山靴などは他のブランドだった。ゴアテックスのレインウェアにはお世話になった。10年近く使ったらゴアのレイヤーが剥がれた。登山道具店に持っていくと真新しい同モデルに無償で交換してくれた。ゴアテックス製品に対しては永久保証です、と言われた。モンベルの方針なのか、ゴアテックスフィルムのメーカーの方針なのか、はたまた登山道具店の方針なのかは分からない。以来レインウェアとしてのモンベルとその登山道具店は自分の気に入るところとなった。

ゼロポイントというブランドは今は無いのだろうか。これはモンベルの中でも登攀用や冬山用などのコアな登山ブランドだった。当時は同ブランドのアタックザックもあった。自分が持っているのはアルパインジャケットだった。ハードな冬山用のゴアテックス三層ラミネートの防水・防風アウターはスキーを使って登山する、そんな山スキーの為に買った。保温材は無い。雪山をザックを背負いスキーで登ればすぐにわかるがアウターに保温材があると汗をかいていしまう。そこはミドルウェアで調整するのは今も変わらない。雪山のアウターに求められるものは強力な防水防風性能、それに背負ったスキーやピッケル、アイゼン、それに岩角などで傷ついても破れない強靭性だ。三層式のゴアテックスは前提で、加え重いザックを背負ってもへたれない強いシェル素材である必要がある。

自分のアルパインジャケットはもう25年以上使っている。テレマークスキーにシールを貼りこれまで幾つの山頂にこのジャケットで立ったかを数えた事もない。登ってきた雪山の数とそれは同じだろう。

酷使したのだろう、インナーレイヤーに張られているシームテープが剥がれてしまった。縫い目のミシン目の裏地として貼られているテープだった。これが剥がれるとミシン目から水が浸入することになる。冬山に使うには致命的だった。修理でモンベルの店に持って行ったのはもう十年近く前だった。店員さんは驚いた。よくぞここまで使って頂きました。修理できるわからないけれど預かりますと。

シームテープを貼り直して戻ってきた。7000円程度だっただろうか。次に剥がれたら、寿命ですよ。と言われた。シーズンが変わり再びテープが剥がれてきた。もうこれでお役御免だろうか、と思った。

色々なメーカーのウィンターシェルを探している。しかし帯に短したすきに長し。ゼロポイントのアルパインジャケットに比肩しうるものが見つからない。ご本家モンベルもピンとこない。全体的にスリムなシルエットになったようだがそれも自分にとっては向かい風だった。

自分がこれを使うのは残雪期を中心とした好天の日と決めている。降雪降雨が予想され視界を失う天候では予報の段階で行動をしない。すると縫い目の目止めテープが無いにせよ使えるのではないか、とも思うのだった。しかし予期せぬ風説のビバークにも対応することもあるかもしれない。

もう一度リペアに持ち込むか新しいゴアのアルパインジャケットを買うかは決めかねている。これまで多くの山を共にしてくれていたのだから安心がある。色々悩む。悩むのはこれからも出来る限りテレマークスキーにシールを貼って山頂を目指し滑りたい、バックカントリーを楽しみたいからだ。それは自分にとって幸せな事だと思っている。

長らく使っていたゼロポイントのアルパインジャケット。信頼瀬はあるがシームテープが剥がれてきた。今度貼れば三度目になる。悩みどころだ。