日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

つけ焼き刃

毎月つけ焼き刃だ。学生の頃から試験前は一夜漬けで過ごしてきた人間としては、時間をかけてじっくりと、というのは習慣として根付いていないのだろう。今でも付け焼き刃をしている。

病の経過観察で、月に一度血液データを検査している。可溶性インターロイキン2Rという受容体の値を見るのだった。悪性リンパ腫の診断と治療効果測定の為だった。残念ながらこの値についてはどうもコントロールは難しいようだった。蓋を開けなくては結果が分からない。それゆえ毎月祈る気分になるのだった。強いて言えばストレスのない生活が少しは好影響を及ぼすのだろうか。

しかし血液データは血糖値、尿酸値、中性脂肪、善玉悪玉コレステロール… そんな生活習慣病系の数値も肝臓系の値も同時に示してくれるので、ある意味毎月ありがたくもある。こちらも同様にしきい値を越えたくないし少しでも良い方向に近い方がありがたい。そんな意味で、付け焼き刃が登場する。

社会人になりたての頃、仕事帰りに良く飲み屋に行った。いつもは大酒のみで終電車まで粘る先輩が今日ばかりはジョッキも盃が進まない。それどころか今日は控えるという。明日は人間ドックなんだよ、γ-GTPが不安でね。と先輩は言う。なるほど、付け焼き刃だな。しかし気持ちだけでも効果はあるだろう。その風景がいつも思い出され自分も毎月の血液検査の前夜はアルコールはやめ食事も控えめにしている。目下数字は暴れていないので一定の効果が「ありそうに」思える。

いつものクリニックで採血だった。ここの看護師さんはベテランで静脈に注射針を入れるのが大変上手い。これまで痛みを感じたためしが無かった。いつも右腕だが今日は左腕を差し出した。この後右腕で血圧を測ろうと思ったのだ。左腕は右より何故か少し静脈が細い。親指を拳に挟み込んで少し盛り上がってきた。

あれほど注射の上手い看護師さんも今日は苦戦された。刺した針を少し動かしても血液のブローバックが来ない。「右腕にしてください」と願い出た。しかしその右腕もいつもほど血管が浮き出ているわけでもなかった。

「昨夜くらいから水分補給を減らしましたか?」と言われた。確かに昨夜はビールも酒も控えた。今朝は朝食を取らないので朝起きてコーヒー一杯程度だったかもしれない。「水分摂取が少ないと血管がぺしゃんこになるんですよ。だから採血も大変なんです」。

なぜ朝食を取らなかったか?付け焼き刃なのだ。もちろん正しい血糖値測定の意味もあるが、少しでもすべての値を良くしたいという意識があったからだ。しかしいつも「下駄を履いた」状態の値を見ても仕方が無いのだった。生活習慣病の防止はまたローマ帝国のように一日にして出来上がるものでもなかろう。

さて審判は次回の通院日だ。一夜漬けの効果はあるだろうか。効果があればこれまで通りの生活習慣。効果なければもっとストイックに行かなくては。効果があっても付け焼き刃、なければビールも無い茨の道だ。付け焼き刃など効果が無い方が体には良いのだ。

さて自分は一体どちらを望んでいるのだろう。

終電車まで飲んでいたら明日の血液検査値は良くなかっただろう。しかしそれを止めても所詮付け焼き刃。大切なのは日々の節制。分かっているが…。

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村