日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

悪い癖が出ました・エクセル好き

表計算の定番ソフト、エクセル。会社生活を始めたのは1986年。当時オフィスには国産コンピュータが数台あるのみで、理系上がりの先輩がちょっとプログラムを組んで売り上げデータを入れたのだろう。「おー!」と課長をも含む皆から嘆息が漏れた。兎に角数字が画面に出る事と、訳の分からないプログラムを組んで管理データを作った先輩の手腕の両方に対しての、ため息だった。

表計算ソフト・マルチプランを使い売り上げデータの管理。MS-DOSのコマンドを覚えれば割と容易だったが分かりづらかった。PCの世界が身近になったのはWindows95ではないだろうか。1995年に世に出たこのOSから世の中は大きく変わったのではないか。その前のWindows3.1は完成度が低かったが95でようやくGUIも板についた、そんなところだろう。もちろんマッキントッシュはもっと先を進んでいたが。

社内にずらりとPCが並んだ。一人一台が当たり前になった。仕事のツールとしてEメールが普及するのはもう少し後だったかもしれない。通信手段としてのテレックスはその地位をファクシミリに譲っていた。ビジネス文書はWindowsのワードで作り印刷してファックスする。そんな時代もすぐにネットの普及とともにEメールに変わった。ワープロの出番は減った。

しかしエクセルは別の世界だった。表計算。グラフにもなる。社内の報告資料に事業計画の策定に不可欠だった。データの推移など一目瞭然になり、売上実績も利益率も時系列の折れ線グラフで並べられては言い訳のしようもなかった。ワードを使わずにこれがあればビジネス文書も作れる。

営業部門から管理部門、企画部門へ。キャリアの推移とともにエクセルの比重が高まった。一日中PCのモニタはエクセルだった。しまいにはこれさえやっていれば「仕事をしている」気になるのだから罪深かった。さらに「凝ろうと思えばいくらでも凝れる」のもエクセルの悪い所だった。

仕事を離れ、エクセルで何かを分析したり誰かにデータを説明したりする必要もなくなった。毎日使っていた「Xマーク」のアイコンは縁遠くなった。毎月末になけなしの資産額を残高表に入力、家内にシェアするだけ。また生涯のキャッシュフロー推測を更新する程度。この推測の際にはターミナルバリューを考えなくてはいけない。自分の寿命がいつ果てるかを決めるか?仮置きで85歳にした。横軸はいくらでも伸ばせるのでもはや卓上の遊びだった。又、通貨価値の下落も考えなくてはいけない。精緻にやろうとディスカウントキャッシュフローにしてしまうのも悪い癖だった。

退職してからはエクセルは手慰み。しかし病にかかり治療が終了すると格好のネタができた。血液データ。最大の心配事である悪性リンパ腫の状態を探る可溶性IL2Rの値。いつもしきい値の下で安定しているので毎月安堵するだけだった。気になる血糖値、コレステロール中性脂肪、尿酸、肝臓系、すべて良好。しかし暴れるデータも目についてきた。悪玉コレステロール。数か月ほど上限値を超えていた。

これは・・。スイッチが入ってたちどころにエクセルのアイコンをクリックした。更にグラフまで作ってしまった。グラフは全てを示してくれる。悪玉コレステロール値はスポラディックに上昇している訳でもなく、12月から1月に時間をかけて上昇している事も丸見えになった。なんだろう、これは!食事には気をつかい適度な運動はしているつもりだが…。お正月料理の食べすぎなのか。

エクセルは便利だが、ヴィジュアルな結果に追い詰められるのは現役時代で十分だ。今はエクセルに軒を貸して母屋を取られても仕方ない。悪い癖だ。これがもとで心配のネタが増えては元も子もない。エクセルは時系列のデータ入力だけのおつきあい。グラフにするのはやめておこう。

エクセル好きもほどほどに。何事でも、凝り性は良くないという訳だ。

コレステロール中性脂肪。気になる。グラフは噓をつかないが追い詰められたくもない。深入りせぬようにしなくては。(データは仮値)