日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

無知の露呈 確定申告

会社員時代は給与のみが収入の全てであったため確定申告には縁が無かった。40歳代の頃に肺炎になり2週間ほど入院したがその年だけは医療費が10万円を4万円ほど超えた。随分と苦労して資料を揃え申告し数千円還付された。労多くして功少なしと思ったがありがたく頂戴した。

一昨年は膨大な医療費だった。我が脳外科手術と悪性リンパ腫化学治療。入院と通院。治療費・交通費で100万円を超えた。これは沢山戻ってくる、と退院後に再び資料を揃えたが、対象外だった。これらの費用が医療保険ガン保険でほぼ全額に近くが還付されたのだった。保険の見直しは役職定年を迎えたことがきっかけで、出費を見直す策の一環だった。結局それはありがたくない形で役に立ったのだった。しかも保険は継続されるが今後の保険料の支払いは免除されている。それが約款だった。出費が減るのはありがたいがもう二度と使いたくない保険だ。

年が改たまった。市から昨年分の国民健康保険医療費通知書が届いた。毎月の腫瘍マーカー検査に半年ごとのCT。それなりに費用がかかる。15万円を超えていた。今度は保険の支払いもない。頭の中に電球が灯った。

医療費一式は市からの通知書で良い。交通費も対象になるのでこれは前回の申請のように医療機関ごとにサマリーをエクセルで作った。久しぶりのエクセルは会社員時代を色々と思い出させてくれた。海外営業から企画、管理と様々な仕事をしたが、スタッフ寄りの仕事が増えるとエクセルも重要性は大きかった。しまいにはエクセルをいじっていると仕事をしている気がするのだった。

そんな事を思い出しながら表が完成した。源泉徴収票も取り寄せた。念のために税務署に資料確認の電話をすると、昨年の源泉徴収額を問われた。ゼロ円と伝えるとそれでは医療費控除の対象になりません、と言われた。呆気ない問答だった。確かに、支払った税金からいくら戻るかの話だ。住民税も所得税も支払っていない非課税世帯の我が家にとって戻るものなど何も無いのだった。税務署員はなぜか申し訳ないですが、と謝ってくれ、資料をまとめた労をねぎらってくれたのだった。

この年齢になり、色々な社会の仕組みを知ることが多い。逆に言えば会社員時代は源泉徴収されていたのだから気にも留めずに済んだのだ。

一つ、無知が露呈した。「無知の知」とはソクラテスの言葉だった。私は何も知らないことを知っている。古き賢人は良い言葉を残してくれたのだった。これからはいずれ介護保険のお世話にもなる。これも複雑な世界だ。そんな事はこれからも山ほどあるだろう。知らないことを素直に認識し、学ばなくてはいけない。

還付金があれば妻と共に美味しいものでも食べるか、そんな目論見が消えてしまった。仕方なく、残った食材でいつもの昼食を作るのだった。

右の源泉徴収票に確かに記載されていた。源泉徴収額0円と。これでは還付金どころの話でもないと知った。無知を潔く認め、次に備えよう。