日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

交わりあう多様な文化

数年間にわたり重いムードを作り出していたコロナ禍も、いつしか静まり街に三年前の平常が戻ってきたように思う。外国人を街でとりわけ多く見るようになったと思うのはなにもコロナを取り巻く環境が変わっただけではないだろう。そう、絶対的に外国人居住者の日本に締める割合は増えている。総務省が発表している令和2年国勢調査結果がネットにある。2015年から2020年の数字が分かるがCAGR(年平均成長率)が書かれていなので、エクセルのお世話になった。

日本人は年間0.1%減ってきた。最近よくマスコミを騒がせる日本人が減っていくという話題は、こうしてデータを見ると歴然だ。一方外国人は年間8.1%増加している。年間8%などという成長率は、およそ自分の周りを見るかぎり見たこともない。

明らかに外国人多く見るなと思うのはやはりコロナの沈静化とそれを受けての観光客、そんなこともあるのだろう。それはある意味スポラディックな現象だ。しかし8%の人口増を支えているのは身の回りにジワリと増えている外国人居住者だ。日本国籍を取得した外国人を入れるともっと多いだろう。

我が家から15分でも散歩をすれば必ず外国人を目にするようになった。コンビニやスーパーのレジでも機会が増えた。家の解体工事や建築をしている方々に話しかけるとブラジルありトルコあり。駅に出ればネパール料理店、ベトナム料理店。会話でもしない限り外見上は日本人と判別がつきがたい中国人や韓国人を合わせるとやはり肯けるデータだった。体感できるのだ。

こうなってくると外国人と如何にうまく共存していくかが課題になる。

そんな中、住んでいる区役所が主催する興味深い講演会に接した。「多文化共生論」という講演の題目に飛びついたのは講師が山形弁研究者を自ら名乗るダニエル・カール氏であることもあったが、やはりテーマに魅かれたからだった。妻と共に講演会場に出かけた。テレビ通りの氏だったがやはり年齢を経て貫禄ある素敵なお方だった。例の語り口で軽妙なトークは2時間近い講演だった。

米国カリフォルニアからハイスクールで交換留学生と来て来日し、日本に惹かれ山形に住むというプロフィールは知られているだろう。ハイスクールでは奈良に、二回目には佐渡ヶ島人形使いの弟子入りで、三度目が山形に、という事だった。日本に到着して多人種が当たり前の米国人としては右から左まで皆同じ人種の国というのには驚いたという。暇なときに佐渡の美しい田んぼに見とれているとそれだけで巡査に職務質問されたという。1970~80年代の日本はまだそんな世界だったのだ。三度目の来日でALT(外国語指導助手)として働き始めた当時は山形県ではALTが70人。それが今は5000人いるという。そんなカール氏が話してくれたものはすべてが興味深かった。

・初めて目にした日本の英語の教科書に This is a pen. というフレーズがあり驚いたこと。この有名すぎる文章が教科書から消えたのは平成20年とのこと。

・日本語は確かに難しいが、今やネットの普及も手伝いマンガアニメで皆独学で学べる言葉になっていること。

・日本に住む外国人の75%は自らの日本語に自信があること。外国人が日本語で聞いても日本人は無理して英語で答えようとするから、会話が続かないケースがあること。

また、たとえ日本語が達者でも外国人との円滑なコミュニケーションのために必要なポイントがあること、としていくつかの事例を挙げられた。

・主語のない言葉。下宿先の家での話。朝お父さんが「行ってくるよ」。誰がどこに行くのだろう。

・全ての代名詞になる便利な二文字。「あれ」。お母さん「あれ」取って。それでお父さんは望むものを手に入れる。今日は仕事が「あれ」だから帰り遅いよ。そんなアレは日本語ができても外国人には禁句。絶対に分からない。

・何事も婉曲的に言うこと。「あの人の職業?先生ではないと思うけどな。」実は先生ではないのだが、ストレートには言わないこと。

・謙遜。「立派な家ですね」「いえ、粗末で汚くてすみません」はて、なんと褒めれば受け入れてくれるのだろう。とても高価なお土産を頂く。「つまらないものですが」と枕がつく。対応に窮する。

・身内の謙遜は更に理解不能という。愚妻。出来の悪い息子です、などという言葉を使うと間違いなく西洋では離婚になる。

挙げられた全ての例にうむうむと首肯せさをるをえない。

氏は続ける。日本人という単一の民族であることとそこから来る文化に起因すると。以心伝心。また、物事を率直に言うと相手を傷つける。回りくどく言うと気持ち良い。へりくだり相手を立てると。

氏は決して日本文化を卑下しているわけではなくむしろ愛情をもって話してくれているのだと感じた。最後の締めくくりは、「洋の東西すべてが同じならつまらない。文化の違いこそが面白い。ただし文章の主語述語を日本語でも明らかにして、「あれ」を止めて、婉曲はストレートに、謙遜もほどほどに。それが日本語でも外国人との交流では大切であること」と要約できた。

冒頭の総務省のデータが説明する通り、日本人は減り続け、外国籍の方は様々な国に及びますます増えていく。そこに加えてネット社会だ。その傾向はやみそうにない。外国人と如何に共生するか、多様な文化が如何に交わるか、そんな話題は古臭いよ。と言われるような時代が間もなく来ると思うととても嬉しい。

ツーリスト向けは英語だけでは足りないが臆せず話しかける。そして在住者には指摘いただいた注意点を守りつつ日本語で。異文化と接することが出来るとは楽しい話だ。気楽にいこう。

改めてデータを表にするとよくわかる。日本人は減り、外国人籍は増える。自分が住む区の外国人比率は4.7%というから都会は平均値以上とわかる。23区は更に高い事だろう。日本人を如何に増やしていくかの政策とは?そんな政治的なことは口にしたくないが、単純に危機感を覚えるだろう。

地元の街の会場にて。ダニエル・カール氏は少し貫録を得ていたが楽しい語り口調で多文化共生論を講じてくれた。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村