日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

著者選集

栄養ドリンクマニア

病院に着いて、長い待ち合いに舌打ちする。 退院してからまだ日が浅い。通いの化学治療、楽ではない。雨の日というのもあるのか、まだ体に力が入らない。だから売店で買ってしまう。カロリーが気になるからライト系にした。 ねえ、そういうの効く? 路上教習…

そしていつか 

「いきますよぉ。」 掛け声とともに苦しそうな吸引音とむせび音。 カーテン越しの向かいのベッド、辛そうだ。あぁサクションか。あれはきついな。自分自身が数か月前脳腫瘍を摘出した直後の集中治療室で何度も味わった苦痛。それを生々しく思い出す。 隣のベ…

去りし日の「ライ麦畑でつかまえて」

僕の奥さんは先月からいわゆる「児童館」のようなところで受け付けのパートをやり始めた。1回数時間で週2~3回程度。これでは厚生年金も貰えない。しかし、二人の1ケ月分の食費のなにがしかの足しになるので、病気で仕事を辞めた自分にとっては精神的に助か…

本を読む少女

本を読む少女 散歩をしていた犬の足がふと止まった。テンションのかかっていたリードが緩む。 「前方注意」、そうでも言いたそうに彼は僕を振り返る。 僕はいつも通りに好きな音楽をスマホで聞きながら歩いているので気づくのが遅れた。 この時間帯は小中学…

冴え返る朝

冴え返る朝 病室の窓。そこからの風景は余り季節感はない。しかし眼下の梅の樹木と遠景の山でそれを想う。 曇った丹沢と、萎んだままの眼下の梅、今朝は 「冴え返りの朝」 を感ず。 この数か月、いや、一年。退職も,入院もあった。嬉しいこともあった。そう…

懐かしい味

懐かしい味 スーパーで見つけたので迷わず購入。 中村屋のチーズあられ。もう50年も昔から確実に存在しているお菓子。あられというよりはチーズ焼き菓子。しかし後のチーズビットなどにあるような濃厚なチーズ感とパウダーっぽさがある訳でもなく、薄い塩味…

小さな秋の使い

小さな秋の使い 夏の終わりを分明に感じるのは何時の事だろうか。9月に入っても日差しはぎらぎらするし気温は30度を越えることも多い。この時期はまだ夏が優位で秋の気配もない。しかしふとした時、例えば風向きが変わった時、陽射しが陰ったとき、木陰に入…

完璧な虹

久々に見た完璧な虹だった。こんな冗談のようなアーチは見たことがあったかな?まだ幼稚園児の頃、家族で旅行した信越線の車内から見た虹の記憶が鮮明だった。生まれて初めて見た虹だった。もう50年以上前の話だ。その後も虹は見るもここまで綺麗な形はあっ…

夏の子供たち

スーパーに食材の買い出しに出かける。 レジ前の一角に花火コーナーがある。あぁ今でもこんな「夢の袋」があるんだな。 子供の頃、各種の花火が詰め込まれていた花火の袋は、まさに「夢の袋」だった。それは自分たちの二人の娘にしても、そうだったに違いな…

等しい歳月

ワンコを散歩させているとご近所さんに知り合いが増える。いわゆる犬仲間という奴だろうか。それは、買い主の名前も知らないけどワンコを中心としたファミリー構成はいつしか頭に入っているという謎のソサエティかもしれない。 ご近所さんにはご夫婦で俳優活…

幸せの焼き鳥屋

「ちょっと今混んでるから30分はかかるけど、宜しいですか?」 バンダナを鉢巻のように巻いた青年の面影を残す腕の太いお兄さんだった。やや尖り気味の眉毛が、昔はヤンチャだったのでは。と思わせる。漂う煙の中クルクルとなれた手付きで串をまわしてく。1…