日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

等しい歳月

ワンコを散歩させているとご近所さんに知り合いが増える。いわゆる犬仲間という奴だろうか。それは、買い主の名前も知らないけどワンコを中心としたファミリー構成はいつしか頭に入っているという謎のソサエティかもしれない。

ご近所さんにはご夫婦で俳優活動している芸能人のご家族もいるが、彼等ご家庭のかわいいワンコを通じて挨拶などすることもある。これは犬を飼っているという以外に飼い主を知っているという点で稀な例もしれない。

近所のバス停でバスを待っていると一匹のコーギー犬が若いお母さんと散歩で角を曲がってきた。この辺リのコーギーか、あの家かあの家か、などと思っていると、突然大きな泣き声とともに小さな坊やがお母さんを、追いかけて飛び出してきた。余りに慌てていたのか、あるいは、お母さんの気をひこうとしているのか、その男の子は下半身はスッポンポンで、パンツを履く時間もなかったのかな? 小さなおちんちんが一生懸命走る男の子の足の間で水槽から飛び出た金魚のように、懸命に揺れ動いている。頑張れぼうや!可愛くも微笑ましくもある。

坊やの叫びは言葉にはなっていないがさしずめ、「ママーいかないで」、か、「僕も一緒に連れてって」、てところだろう。

お母さんの顔とワンコのセットに即座にピンと来た!ああ、あの時の!

それは小さなコーギーを連れた若い女性だった。犬絡みでの挨拶での明るい笑顔が印象に残っていた。笑うと細い目がより細くなり、満ちあふれるエネルギーは若さと颯爽さに満たされていた。


その女性はあるときには妊婦服になってており、元気なコーギーに引っ張られるように、大きなお腹をかばいながらバス停沿いの細い歩道を注意深くもやや辟易がちに歩いていた。ワンコ挨拶の時のとても嬉しそうな笑顔と弾む声も心に残る。

そして次かその次か、会ったときはコーギー君は自宅だったのか、もう、彼女は乳児を抱える「お母さん」だった。


あの時の小さな赤ん坊が、いまここで必死に転びそうに走る坊やと、ようやくここで結びついた。コーギーを引いて先に少し困った顔を浮かべながらも笑いながら息子を抱き抱えるその様はすでに「堂々としたお母さん」になっていた。

そうか、あれからまた歳月が流れたのか。あの間、家族と自分にも様々な事が起き他のだった。上の娘は結婚して家を出て下の娘も他県に移り社会に出た。。自分は会社を自ら早期退職したし、期せぬ病で入院もした。

すぺてに時が流れる中、彼女にも等しく時が流れていたのだ。よく考えれば至極当たり前の事ながらも、思わず感慨を持たずにはおれない。次に彼女に会うときはあの坊やはもう小学生かもしれない。

誰にも等しい歳月。これからの自分にも未だ未だ訪れるし皆にも同様。これからの自分と家内を待つそんな時間について、何が来るのかと思うと楽しみで仕方が無い。それは新緑の映えるこの季節のように何か新しい期待を持ってきてくれるものと思っている。

(2021年4月22日記)

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