日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

コロネーション・アンセム

コロネ―ション・アンセムという曲がある。高揚感漂う壮麗な曲。単語を直訳すれば「戴冠式賛歌」となろうか。戴冠式とは王の即位を祝う式。あらためてこの曲を調べてみれば作品番号にして四つに及ぶ曲と知った。自分はCDに入っていたままを通して聴いていたせいか、四つの曲と聞いてもピンとこない。通して聴いても一貫性があり不自然ではない。

一曲目は華やかな勇壮感がありそれは興奮を呼ぶ。もしかしたらサッカーファンには馴染みがあるのかもしれない。サッカーには疎い自分でも何処かで聞いたように思う。「UEFAチャンピョンリーグアンセム」という曲がそれらしい。UEFAとは欧州サッカー連盟と言う事らしい。そのチャンピョンシップ戦で流れるのだろうか?サッカーでは応援歌として他にヴェルディのオペラ「アイーダ」からの「凱旋行進曲」が良く使われている。いずれも力が漲る曲で王者の戴冠を祝い、好きなチームを応援するにふさわしいだろう。

CDショップでクラシック音楽の棚はこんな分け方がされている。交響曲、協奏曲、器楽曲、室内楽、声楽だろうか。自分は声楽に属するオーケストラやオルガンなどでの伴奏付き合唱曲が好きだが、それはオペラではなく宗教曲になる。ミサ曲やレクイエム、オラトリオ、そしてカンタータやモテットなどだ。イエス・キリストを信仰していないのに一体何処に惹かれるのだろう。荘厳さ、清澄さ、立体感か。確かに混声コーラスで対位法を演奏するのだからフーガやカノンが好きな自分にはたまらく魅力的だ。

これから職場だ、長い一日だがまぁやり通そう。そんな時はこのアンセムを聴く事が多い。残念ながらそれは欧州サッカー連盟チャンピョン賛歌ではないほう、原曲を流す。厳かに始まりそれに続く豊かなコーラスで一気に目が覚め頭の中には花が満開になる。そこからはただただ音の花が咲き乱れる中に、立派な音の構築物を前に、ただひれ伏すだけとなる。 The king shall rejoice .と合唱は続く。王様は喜ばれるだろう、と訳そう。こんな素敵な音楽で讃えられる王様はとても喜んだことだろう。

コロネーション・アンセムは十六世紀の作曲家であるヘンデルの作品。当時の英国の国王の戴冠式の為に書かれたという。ヘンデルと言えばオラトリオ「メサイヤ」だろう。その中のハレルヤは誰もが知る。そんな彼はドイツ人でありイタリアで成功し英国に帰化する。バッハと同世代ということもあるのか、時代の影響を垣間見るしイタリア風な歌謡性も伺える。イエス・キリストの為に厳格で宇宙的な音楽を作っていたバッハに比べてヘンデルの曲は明るくて漲る生の香りがあるように思う。この曲はイエスを讃えたのではなく国王の即位を讃えている。そこがこのポジティブさなのだろう。

さて、今日も一日。明日もまた一日。そして一年、二年。一体いつまで持つものか。誰もそんな事はわからない。しかし知っている。いつか果てるにせよ自分達の明日は輝くだろうことを。そう、王様は喜ばれるだろう。その王冠をかぶるのは多分、自分達だ。


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https://www.youtube.com/watch?v=vEnm-C8D7QI