日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

バンザイ突撃

お盆休みの渋滞がテレビで報じられている。お馴染みの東名高速は御殿場インターまで40キロの渋滞です。中央道は八王子インターから20キロ渋滞、新幹線の乗車率は200%…。

時期こそ地域によっては異なるがお盆だから故郷に帰るのは仕方が無いだろう。そこにお盆には無縁の行楽客も加わる。真っ赤に続くテールライトをヘリコプターから捉える映像は、もう見飽きた。あの中には入りたくない。しかしかつてはその中に自分も居た。

それは何もお盆の時期ばかりではなく五月連休や秋の連休などでも見られる。みんな何故それを覚悟でその行列に飛び込むのだろう。ある秋のシーズン、自分は車で神奈川県を抜けて静岡県に行くのに半日を費やした。高速の渋滞にしびれを切らし一般道に出た。しかし箱根を超えるのも渋滞だった。疲れるだけの無為だった。生死にはかからぬものの成功の見込みの立たない中にそれを知っていて飛び込むのは、自分には旧日本軍が追い詰められた際の最後の手段・バンザイ突撃を思わせる。悲壮感がありそれは幸福の対極だ。

とはいえ首都圏に住む以上不可避なのだ。それを避けるのは唯一つ、そんな行楽時期は大人しく家にいて、行くならシーズンを過ぎてから出かける事だろう。いや、発想のコペルニクス的転換をするならば、行楽地として人々が向かうところに最初から住む、という策もある。

リモートワークが増えたのはコロナの副産物だろう。コロナが余り取りざたされなくなった今、果たして再び会社員はすし詰めの満員電車に乗って都心へ通っているのだろうか。しかし毎日ではないならば考えようもあるだろう。実際にコロナは小さな移住ブームを生んだと言われている。自分はもう会社生活から離れてしまった。だからあらためて考える。本当に満足のいく生活とは何だろう。もう都会の持つ華美な雰囲気にも用はない。必要なものはネットで買える。人込みは疲れるだけのものだ。

今年は45年振りに中学の同窓会が広島市で行われる。「還暦同窓会」と名がついている。懐かしい人々に会える。広島は親の転勤で中学高校の6年間を過ごした街だ。今は何のゆかりも無いが瀬戸内海に面した街で生まれた自分には懐かしい。かの地の言葉も蓋を開ければ飛び出してくる。そんな広島へは日帰りの新幹線を選んだ。指定券だけは早めに買っておいた。悪い事に台風が本土に上陸するだろうというニュースもある。帰省シーズンに台風が直撃し、倒木にレールをふさがれ電気も停まった新幹線の中に一晩すし詰め。あるいは駅で一晩明かす。これらもよく見るニュース映像だ。そんな中にみずから火中の栗を拾おうと飛び込む自分も又、バンザイ突撃の日本兵だった。

ふとバンザイ突撃に出る日本兵の心中を察した。捕虜になればいいのに、戦陣訓という教えと皆がそうするからという横並びの気持ちが、飛び交う機銃弾の下に軍刀一つで飛び出させたのだろうか。誰もが皆きっと思っただろう。どうか自分には弾が当たらないで欲しいと。懐にしまった千人針のお守りが弾を寄せ付けないだろう、と。

自分も台風に遭遇せず、何事もなく700キロを往復したいと思っている。お守り代わりに多めの水分と薄手のシュラフでもカバンに入れるか。毎夏お馴染みのバンザイ突撃を味わうはこれで最後にしたい。

 

 

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