今回は駅の構内ではなく駅前です。よって駅ソバとは言えないかもしれませんが、慌ただしさとせわしさが限りなく「駅ソバ」なのです。
相鉄線の改札を出ての横浜駅西口。交番があり狭い路地があります。猥雑、そんな言葉が一番似合う一角で、かつての新宿駅南口あるいは大ガードあたりの雰囲気が残ります。
そんな場所の中では一等地である駅前にこの店はあります。あたり一帯甘じょっぱいだし汁の匂いが漂うのです。
人気の店でいつも人だかりです。特筆すべきは立ち食いにもかかわらず、店内のカウンターに収まり切れないお客様が道路で立ちながらソバをすすっているというカオスさ。アジアの極み的な光景です。1970年代の日本にはあたり前の光景でした。しかし今は少ないでしょうね、こういう光景は。ある意味「究極」です。
食券を買ってカウンターのオバサマに渡すと1分かからずに熱々のソバが出てくるのは「駅そば」そのもの。茹でる、汁をかけて具を載せる、洗う。それぞれの三工程を個々に別のオバサマが対応している、見事な分業。会話不要、阿吽の呼吸。シームレス・・そんな言葉が浮かびます。このそばが出てくるまでの短いスパンで、5,6人も入れば満員になる店内にて自分の「立ち位置」を見つけられなければ、道路で食べることは「ほぼ決まり」でしょう。しかし、それも悪くない。いや、むしろ「かくし味」です。雨の日以外は喜んで立って食べたい。それが調味料ですから。
麺は「シ〇ダヤ」の茹で麺、といった書き込みをネットで見ます。構いません。すぐに出るほうが重要ですから。そのフニャ加減も「味」です。
駅ソバメニューはいつものリトマス試験紙である「かき揚げソバ」で。甘くて濃厚でしょっぱい。かき揚げも香ばしいですがすぐに汁に馴染んでくれます。溶出します。
駅ソバは自分の中では3分から4分程度で食べ終えることにしています。いや、自動的にそうなっています。
「至福の3分」を過ごす。すると唇に塗りこまれて離れないかき揚げの油とネギ臭い口元が気になります。が、ものともせずに次なる所用に向かいます。
これぞ、「駅ソバ」。幸せ、ここにあり、です。