夕食にピザが食べたいなぁ、そう言い出したのは妻だった。非課税世帯としては出費は控えたい。そもそも自分は趣味と称して山靴や自転車でそこら中に出かけては出費を重ねるのだから、日用のものは安い店で値引きシールの付いた品だけを買っている。加え、ここのところの食事はそれらのくたびれかけた成れの果てを冷蔵庫から引っ張り出しては整理するばかり。一週間の食事を3000円程度の一回の買い物でまずは出来る限り賄ってみよう、そう夫婦で決めてみた。何処までできるのだろう。なんとか進めている。が、なんとなく毎日の夕食がつまらなく思えていた。食事が楽しめないと、これもまた生活に彩りがなくなる。
- ピザね、確かに美味そうだな。生地から作るのは面倒だな。強力粉と薄力粉か。イースト菌はあったっけ?
- 冷蔵で売っている生地使えば良いじゃん。
なるほどそう来たか。ならば具を載っけてオーブンに入れるだけだ。
生地は冷蔵コーナーにあった。ニ枚組で300円。宅配ピザならMサイズだな。二人だけだからこんなもんだろう。シラスのピザ、ベーコンも、パイナップルも、チーズと蜂蜜も、良いな。
2枚で4味。頭に浮かんだすべての組み合わせだ。ケータリング店風に言うならハーフ&ハーフを2枚だ。ピザ生地と具で材料費は1000円もかからなかった。この程度の追加出費なら許されよう。わざわざ生地から作らずとも充分に美味かった。なーんだ、市販ピザ生地、良いではないか!つけあやせには大根の葉っぱのソテーとした。立派な葉がついた大根をスーパーの処分品棚から持ってきた。形が悪いから安いのだと思う。胃に入れば同じなのに。
少しイケてる夕食だった。これならワインだろう。ここのところはすっかり気温も上がり昼間は20度が近い。となるとよく冷やしたワイン。ロゼか白か。そんな迷いも楽しいものだ。夫婦で安ワインをカチンと、サンテ!。何故か伊仏混合になってしまう。セーブしていたはずの食費が増えた。
しかし夕食に久々に潤いがあった。やはりたまには心の鍵を外して楽しむ事だ。ここのところ低調な心の具合だったが、食事だけで気分は上向くものだと知った。やはり美味しいものを好きな風に食べるのが良い。極端に言うと生きていることを実感した。
その為には面倒なことは楽をする。幸いに食べ物に関しては社会はそう進んでいる。レトルト食品も冷凍食品も進化している。お惣菜も一昔前よりは色々種類が増えたように思う。利用しない手はない。何とありがたい話だろう。頑張る時は頑張って、手を抜くときは手を抜いて。心の鍵をはずしてもいろいろやりようもある。心地よく酔って、今夜は良く寝られそうだった。