日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

旅を巡る風景・コミュニケーション

サイクリングの旅。今回は駿河の国。新横浜から毎日、新幹線通勤で勤務していた三島の街。急ぐ必要のない自分は今日は鈍行で三島駅へ。そこで輪行袋からランドナーを取り出し組み立てる。いざ走行。そんなことで三島の街は、知らないところもない。我がランドナーはまさに水を得た魚のように小さな道を走り抜ける。

懐かしい職場を経て、予定通り沼津漁港を目指す。ここの海鮮レストラン街は圧巻だ。焼津や清水より栄えているのではないか。もちろん小田原・早川、大磯や葉山の漁港の比ではない。

ここに会社時代の友人が、わざわざ昼食を共に、と立ち寄ってくれた。友人と言うのもおこがましい。東京の勤務で職場の人間関係で何年にも及ぶメンタルの病にかかり悪化の一方。見かねた上司の計らいで「人間関係のリセット」をしていただいた。それが東京から遠く離れた三島での勤務だった。友人と書いたが彼は自分の11歳年下の上司だった。丁度役職定年になり管理職を外れた自分としては時期としては申し分もなかった。

彼は自分にいろいろごく自然に気を配ってくれた。下手くそな万年120を切れないプレイヤーの自分をゴルフに何度も誘ってもくれた。彼のやさしさに触れ、またストレスの根源から物理的に遠ざかったことで、自分のメンタル状態は飛躍的に元に戻った。

お礼をしてもしきれない。退職後も彼との交流はゆっくりと続いた。全くの思い付きで来たサイクリングにもかかわらず、突然の連絡にもかかわらず、自分の昼食時間にあわせてわざわざ隣町の、人ごみの漁港まで会いに来てくれたのだった。

もう上司でもない。前回会った時に、友達付き合いをお願いした。もちろん、恩義は忘れられない。無意識に「さん」がついてしまう。「ちゃん」で呼ぼうと決めたのに。

友との話は、楽しかった。今の職場の話も。最近の日常の話も。病んだ自分をゴルフに誘ってくれた時の笑顔で、友は自分と話をしてくれた。沼津らしい海鮮丼も、笑いながら食べるとあっという間だった。西へ向かう自分の今日のサイクリングはこれからが山場のルートで、又、彼は彼で庭仕事が待っている。「しまった、写真くらい撮っておけばよかった」。そう思い、隣の席の男女二組の四人連れにシャッターをお願いした。綺麗な英語をしゃべる四人だった。

Would you please take a photo for us?

Oh, Sure!!

前回の旅で英語がスムースに出なかった(*)ので、頭の中を少し整理して話しかけたものの、そこからの会話は、はずんだ。卓球の試合のように、会話がリズムよく進んだ。もう何も考える必要はなかった。

How do you come to know this restraurant? This is a local place, isnt it?
Oh, we are, acutually, living here.

なるほど、ジモティなのか。ならばここを知っているよな。

寿司は美味いし、伊豆はリラックスできてとてもいい所。今日は友人カップルが東京から遊びに来ているので、僕ら夫婦と共にここに来た。明日は南伊豆へいってSUPをするんだよ。

僕はこの地元に住んでいて、彼はヨコハマからサイクリングで来たんです。友人も綺麗な英語で会話に加わった。

SUPって、難しくない?立つばかりでなく、座ってもいいんでしょう。

Of course, why don't you try? It's a lot of fun. 

Ok, I may try in the future. But my problem is、that I can't swim at all.

Hahaha, anyhow, enjoy your journey. Your destination today still seems to be a bit far from here.

Have a great day.

そう笑いあって、彼ら4人は会計へ席を立った。友ともここで別れ、自分は田子の浦から富士川に向けて走り出す。

友との会話も、隣卓の方々との卓球の様な英会話も、とても楽しかった。既知でも未知でも、人と話す事って、どうしてここまで楽しいのだろう。目を見て、意思を伝える。懸命に相手の話を聴きとって、自分の中で整理する。すると次の会話は勝手に出てこよう。言語が何であれ、人と話す。コミュニケーションを通じて、僕は自分の知らない世界を知ることが出来る。押し黙って、自分の世界だけにいるのも今となってはもったいない。言葉のキャッチボールは、魂のやりとりだ。

すこし英語も戻ったな。これをこれからも続けていくと楽しいだろう。改めて調べてみた。NHKのラジオ英会話って、あるな。聞き損じても、ネットで、ラジコでも聴けるな。

懐かしい街を訪れ、お世話になった友に会えた。錆びついた英語もまぁこの調子なら、まだ腐って倒壊まではいかないだろう。

何といってもまだ老け込む年齢でもない。頭は使えば錆びない。コミュニケーションの相手は国籍・年代・性別を問わない。英語が使えればやはり相手も増える。ああ、なんという可能性のある将来。まだまだ、のんびりとはしていられない。

前頭葉の刺激、NK細胞活発化、セレトニンを沢山放出…。これ、今の自分にはこれからのキーワードだと思っている。何事にも興味を感じ「小さく始めよう」。そんな事の大切さに気づかされた、すばらしい旅の一瞬だ。

旅はやはり、欠かせない。高曇りの晩夏の日で右手の富士は雲隠れ。でも富士に会うよりも、貴重な一日だった。

友がわざわざ隣町から昼食同伴の為に来てくれた。アジ・生シラス・桜海老。伊豆らしい三食丼は、友との会話が加味されて、とても美味しいものだった。

沼津漁港で共と別れ、千本松原を西へ向かう。右手に見えるはずの富士山は雲隠れ。しかし大きな駿河湾は素晴らしい。友との、そして相席しただけの名前も知らない人たちとの会話が、自分の気持ちをここまで豊かにしてくれた。旅はやはり、止められない。

 

(*)ひと月前の山歩きの旅では、英語が上手く出なくて愕然したのだ。https://shirane3193.hatenablog.com/entry/2022/08/14/230804