旅が好きな方ならば、だれしもがお気に入りの旅行鞄を持っているだろう。ヨーロッパの空港などで無造作にルイ・ヴィトンの大きなトランクケースがターンテーブルを回ってくるのを見ると、ああ、鞄冥利に尽きるのだろうな、と思う。そう、まさに旅の数だけ傷がついた鞄は良き旅の相棒だ。
自分の言う旅はトレッキングとサイクリング。従ってその相棒は大中小といろいろ揃っている登山ザック。そしてサイクリングバックになる。どれにも思い入れがあり、ヨシアシもわかっている。使い勝手が悪いから、あるいは破損しかかっているから改修や補修したモノも多い。自分で手を掛ければ長く使えるし、なによりも愛着がわき、伴侶感がより高まる。
サイクリングの鞄。最近はもっぱらロードバイクを見かける事が多い。高速走行に特化した自転車にはキャリア類もないので、多少なりとも荷物を持とうとなるとバックパックになってしまう。これは背中も漏れるしサイズも大きくなると重心は高くなる。なによりも自分の場合は体も辛い。日帰りの最低限な荷物でも、パンク修理対応工具、替えチューブ、輪行袋、携行食料、そして天気によっては雨具。このあたりは自分は持ちたくなってしまう。
幸いに自分の愛車はランドナーなのでフロントバッグを載せられるようにキャリアが付いている。これにサイクリングバックを載せる。 ここに載せるフロントバッグを少し手直しした。自分のバックはブリジストンの刺繍ロゴの入った緑色の帆布の鞄。80年代のものだろう。荷物の量によっては型崩れを起こすのが気になっていた。バッグはキャンバス地を縫い合わせたもので縫い代には立派なマチがついている。そのままでも自立はする。バッグの中には下面、左右側面、背面にと補強用のプラスチック樹脂の板が4枚入っている。崩れる理由は明白で、この補強板が4枚バラバラなので、立方体を維持するところまでいかないのだ。気になっていたが、秋の陽射しに誘われて鞄と向き合った。
やった事とは大げさなものではなく4枚の補強版をタイラップで締め付けて留めただけ。四つは連携して一つになった。さてつながった補強板をフロントバッグに入れると、バックは綺麗に自立してくれた。荷物が空っぽの状態でフロントキャリアに載せても、バッグの左右サイドがキャリアから落ちる事はなかった。これで見てくれも立派になった。
緑色の相棒に尚愛着がわいた。しかし彼が一番喜ぶのは「旅に出る」事だろう。旅先の彼は美しい。これから寒くなるな。寒風吹きすさぶ中のサイクリングも悪くはないが、指先が辛いな。頑張るか、日和るか。優柔不断なオーナーに愛想をつかしてほしくないところだ。