日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

勘違い

K銀行のATMだった。そこで見慣れないカードを入れてメモした暗証番号を打ち込んだ。送金は無事に終わった。さて通帳に記帳しようとATMに開いて差し込んでもすぐに戻ってくる。三度トライした。「磁気カードエラーで読み取れません」と表示される。舌打ちをした。

父親は先日世を去った。晩年は自宅で倒れてから三年間老人施設にいた。糖尿病起因で全身機能が低下した。九十二歳だった。色々病気をしたが大往生だった。

ツガイとは不思議なもので母も一年遅れで自宅での生活が難しくなリ自宅と施設を往復するようになった。こちらは加齢による足腰の弱み、それに加え父の施設入り、我が姉の若き逝去、そんな重なる心労だろうか。加え認知力は弱まる。昭和初期生まれの頑迷さだろう、核家族化に伴う家族の形の変化を理解せず第三者による介護には拒否が在った。自分の持っている価値観以外を受容できない母と自分の間にはただ対立があった。自分も感情的になる。母と息子は難しい。母は銀行届印を紛失した。まずいと思い通帳とキャッシュカードを管理するようにした。

父が死んでから葬儀、墓地と当面多くの出費が予想された。葬儀屋だけは父が施設に入居してから納得の行く葬儀社を探しておいた。幸いなことに菩提寺のお経と戒名には価格表があった。「お気持ちで」と言われずに済んだことは助かった。いずれにせよ短期間にまとまった額の出費が相次いだ。父の死後も月遅れでの施設の支払いが発生してくる。訪問診療の請求も、薬局の請求もある。母の施設の請求も来る。やがてどちらがどちらなのかわからなくなってきた。ただ金額と払い先を間違えぬように、といいう緊張があった。父の口座は死を届けでればすぐに凍結される。今後さらなる何かがあるかもしれぬ、と少しばかり自分の口座に移しておいた。一人は世を去り、一人は施設に居る。残った空き家保持にも金がかかる。ずっと定期的な支払いに奔走している。自動引き落としに出来る限り変えたいが、都度名義変更や各種の手続きで書類を埋めて押印する。自分自身、脳腫瘍で脳にメスを入れた後、細かくて神経を使う事が苦手になってきた。集中力は直ぐに途切れ、妙に疲れてイライラする。負の連鎖だった。一日に何件かまとめて支払えた。予定通りだった。早く帰って昼寝したい。最後の締めに通帳記入をしようとしたら、これだった。

頭にきた。磁気エラーは時々あるがよりによって今日か。窓口に居た女子行員さんに勢いづいて話しかけた。「通帳の磁気エラーなんですけど」。すると彼女は一瞥して言うのだった。「これはY銀行さんの通帳ですよ」と。なるほど。確かに自分はK銀行のATMでK銀行の自分の通帳で、同じくK銀行に口座を持つ石材店に送金をしようとして来たのだった。それを親のY銀行のカードで払った。それではそのトランザクションの記帳が出来るわけもなかった。

振込先と金額は間違っていなかった。小さな勘違いですんだ。ほっとした。しかし単純な話を自分で複雑にしてしまった。疲れか焦りか。認知力の不足なのか。だんだんと親の口座を預かる自信も無くなってきた。高齢者がやすやすと振り込め詐欺に引っかかる気持ちが少しだけわかる。日常的に疲れがたまっている事が老化だろうか。するとそこに少しでも魂を揺るがされるような出来事があれば財布が出るのか。

さて何とかしなくてはいけない。こんな時間まで起きていて反省文を書く時間があるなら早く寝るべきだ。体が欲しいのは水。脳が欲しいのは、酸素だろうから。暖かいデカフェを飲んで寝るとしよう。

花が水を欲しがるように、自分も水分が必要だ。我が脳は酸素を欲しがる。デカフェで体を温めて、眠ることでそれは叶うだろう。

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