日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

お好み焼きイノベーション

革新、イノベーション。それはいつも会社人生では求められできた。イノベーションには「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」がある。前者は既存市場での顧客の満足度を上げていく取り組み。後者は既成概念にとらわれず新発想を取り入れ新しい製品やサービスを創造する取り組み。そんなふうに学んだ。

前者は既存製品を改良しユーザにとって使いやすくすることなどが代表例とされていた。日本企業の得意とするところだ。後者にはローエンドモデルといいサービスを新しい価値と共に安価で提供しビジネスモデルを改めるものがある。また新市場創造モデルもある。スマートフォンの出現によってデジタルカメラや携帯電話、ミュージックプレイヤーが放逐されたこと、ネットでのサブスクリプションによりレンタルCDやDVDの店が無くなったことなどが好例だろう。この手の創造は日本人の育った土壌では生まれにくい。

説いているのはアメリカの経営学者、クレイトン・クリステンセンの「イノベーションへの解」だった。事業企画を考えるうえでは必須の教科書だった。しかし自分は読んだだけで何も実践できずに会社生活を終えた。そして、もう要らない、と、テキストも古本屋に売ってしまった。  

十年振りに広島を訪れた。そこで高校の同級生とビール片手に食事をした。予め「お好み焼きを食べさせてくれ」と彼にはお願いしておいた。広島ならばこれしかなかった。中学高校の六年間を彼の地で過ごしたお陰で大好きになった。

早速活気あふれる店に入った。あの頃から変わらないメニューで「ソバニクタマゴ」とした。呪文でも符丁でもない。広島では普通に通じる言葉だ。お好み焼きの具は焼きそばに豚バラ、タマゴ、の意味だ。クレープ状の小麦粉生地の上に千切りキャベツとモヤシ、豚バラを乗せる。ひょいと裏返しにしてじっくり蒸すように焼く。傍らで焼いていた焼きそばと目玉焼きの上にそれを載せてまたひっくり返す。オタフクソースで出来上がり。中学の頃から店でオバチャンが焼くのを飽かず見ていたので体に染み付いている。時々ホットプレートで自分も作る。

友と話しながら鉄板を見て気付いた。山盛りのキャベツともやしは昔の作り方ならば生地にそのまま載せて直ぐに裏返していたはずだった。しかしこの店ではそれらは鉄板の別の場所で別に作っていた。炒めているのではなく強い火力で蒸していた。こうしてキャベツの甘みを引き出しているようだった。

果たしてそれが奏功したのか、野菜の甘味と肉の脂がマッチしてとても美味しかった。「イノベーションじゃ」と友は言う。彼は地元の自動車メーカーで製造技術のエンジニアだった。常に製造工程での改善を考えていた男だった。その言葉に頷いた。

お好み焼きという庶民の食べ物でも絶えずイノベーションがされていた。持続型イノベーションで良いではないか。これはあまりにも完成された食べ物で、破壊的イノベーションは、不要だろう。しいていえば材料だけ提供して客に焼かせる、そんなローエンド戦略もあるだろうか?いや、あれは無理だ。素人には鉄板の上がカオスになる。プロの技も味の内だ。

問題は直ぐにまた食べたくなることだった。広島に来ないと味わえないことだった。地味にお好み焼きも進化している。今後もするだろう。楽しみが一つ植えた、そう考えることにした。

中高六年間で一体何枚食べたことか。店にもよるだろうがあの頃の作り方からは変わっていることに気づいた。イノベーションのお陰で変わらぬ味は進化しているように思えた。また行きたくなってしまう。それが問題だろう。

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