日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

こんな日もあるだろう

いや、今日は大変だったね。お疲れ様。ほら、まずはカンパーイ。

コロナ前の神田や新橋あたりでは当たり前の風景だ。夕闇迫るガード下や雑居ビルの焼き鳥屋だ。コロナが始まってすぐに自分は会社勤めをやめてしまったので今の風景は知らない。しかし仕事を終えてまずは「ビール一杯」で始まるひと時は懐かしくもある。空ジョッキが増えて空きグラスがふえてくると「全く今の職場はなってないな。そもそもさ・・・」といった具合に始まりしまいには会社改革論までが論ぜられよう。

社会福祉法人にて非常勤職員で働く自分。職場では常勤職員がいつも奮闘している。自分が携わっている地域交流の仕事とは別に高齢者に向けての包括支援や対個人のケアマネジメントをする部門、そして実際に高齢者の介護・デイサービスを行う部門がある。いずれも相手とする高齢者は体や認知機能が衰え始めている。それぞれの家庭事情も異なる。そんな中で快適な生活実現のお手伝いをする。デイサービスでは入浴支援、排泄支援、レクリエーションなど盛りだくさん。現業の厳しさが良くわかるのだった。

デイサービスの担当をされる職員さんは自分よりも十歳は若い。まだまだ社会の中核の年齢だ。部門は慢性的に人が足らずにいつも忙しそうだった。デイサービスを利用する方が多いと法人としてはありがたいのだが、力仕事の現場サイドとしては大変になる。痛し痒しと言うところだろう。今日も何とか回った。全くいつ人が増えるんだろう、そんな事をぶつぶつ話す声が今日はひときわ多かった。

閉館時間が近かった。ああ、早く帰ってビールでも飲まないとやってられない。とため息が聞こえた。彼は誠実で責任感がありかつ打たれ強そうななかなかの好漢だった。自分の仕事では多少の汗はかくが目が回るほど忙しくもない。ミスもないように、翌日に迷惑を残さないようにすればよい。だからあまりストレスは無いのだがそれでも仕事を終えると心地よい疲労と共にホッとする。彼のため息に自然と声が出た。「コンビニ飲み、いきますか?」と。

コンビニ飲みとは自分の造語だが、コンビニにあるカウンターの椅子に座り、その場で買った飲み物で乾杯と言う訳だ。手にするは缶ビールと乾き物やちくわなど。ホットスナックに手を出すと長居しそうなのでそこは止めておいた。ボヤキの量に比例するのか彼は500㏄缶だった。乾杯して一通り話が咲いた。21時を過ぎた住宅地のコンビニは駅からのバスが着く度に4,5人おりてくる。束の間店内に人が増える。ビール一缶などすぐに空になるがこの先はやめた。彼の自宅はここから1時間近くかかるというから。 …仕事が思うようにいかない。回したくとも人員が増えずに自分の業務は増えるばかり。愚痴の一つも言いたくなる。こんな日もあるだろう

僅か20分。充分に言いたいことは言えたのか彼は楽になった様だった。僕にはそんな吐くべき不満もないがこうして現役バリバリの方と話すことは楽しい。過ぎた日への郷愁と言うよりは、いかにもそこに生きる事がある、自分もそんな社会の一翼にある、そんな実感が自分を喜ばせてくれるのだ。

彼はバスに乗り僕は自転車にまたがる。良い時間だった。

コンビニ飲み。一服したり宅急便の伝票を書いたりするカウンターだろう。少しばかりこんな用事で使わせて頂く。普通に疲れた自分は350㏄、ボヤキの多かった彼は500㏄。何にせよそれで幸せになる人もいる。こんな日があって良いだろう。

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