●ぐりとぐら 中川李枝子昨、大村百合子絵 福音館書店 1963年
手にした施設の蔵書の絵本は第170刷、2007年とあった。初版は自分の生年の版だったのか。重版を重ねているのだろう。幼い頃自分も母に読んでもらった記憶があるし、妻が子どもたちに読み聞かせていたという記憶もある。
開いて閉じるのに3分もかからなかった。森の中に住む野ネズミのぐりとぐらは料理好き。どんぐりを拾っては砂糖湯で煮たりクリームにしたり。大きな玉子があった。持ち帰ることもできない。彼らは代わりにその場にフライパンや小麦粉。バター、牛乳を持ってきた。
「♪僕らの名前はぐりとぐら。この世で一番好きなのはお料理すること食べること。」 そう歌いながらそれは大きなカステラが出来た。くま、しか、イノシシ、リス、鳥。森のみんなが寄ってきてカステラを美味しく食べる。…卵の殻はぐりとぐらには大きすぎた。さてどうしよう。彼らはそれに車輪を付けて運搬の車にしてフライパンなどを森に持って帰ったのでした。
ぐりとぐらは兄弟なのか姉弟なのか友達なのかもわからない。作者は何も書いていない。どう取るかは読者次第だが読者もそれを気にしないだろう。
童話や絵本を手に取ることが僕は好きだ。何故なのだろう。もう失われてしまった豊かな感受性に対する懐古と憧憬だろうか。この本は森に住む野ネズミのおとぎ話だ。暖かい読後感が湧く。子供なら何を感じるのだろう。考えても何もわからない。子供の持つ豊かな感受性には解説は不要だろう。何事にも整数の解を求めるのは大人の悪い癖だ。こんな世界があり、それが版を重ねてこれからの子どもたちにも読まれるとすれば、きっといいことがあるだろう。
この項を締める前に妻に聞いてみた。ぐりとぐらの作者は何を伝えたかったのだろうか?と。「独り占めしないで、食べ物をみんなで食べる楽しさ、じゃないかな?」と直ぐに答えた。なるほど、森の全員で仲良くカステラを食べていた。童話や絵本には必ずメッセージがある。妻はあまり考えもせずに簡易に明瞭に答えるのだから、凄いものだと畏れ入った。
どこかですり減らしてしまった自分の感性。ゆっくりとでも良い。戻せるのだろうか。