どうしても飲んでしまう。暑いせいか?ならば冬は飲まずにすもう。しかしあの爽快感とそれに続く満ち足りた思い。飲まぬと一日が終わった気もしない。
休肝日くらい作らないといけないと思う。数年前の人間ドックでのエコーでは脂肪肝も指摘されていた。いくつかの薬は毎日飲んでいるし、本当に健気に働く我が肝臓なのだから大切にしないと。
休肝日を作っても、頑張っても週に一回がやがて2週に一回になり、いずれ消えたり。単に意思が弱いだけなのか。
最初の一口。いや、口ではなく喉に流し込む。喉越しで感じる爽快さ、食動に流れ込む冷たさ。胃の腑ですぐに吸収されるアルコール分が脳に信号を伝える。「美味い」と。この3つのステップ完了には一秒と掛からない。
これがビールの最大の魅力。休肝日にはその大切な役割をノンアルコールビールにお願いすることになる。
しかしこれがどうもピンとこない。3つ目のステップが体に入ってこないのだ。変わりに異質な感覚が残ってしまう。メーカーもあれこれと新製品を出してくる。ビールからアルコール分を除いた製法のものはかなりイケる。しかし0.1%でもアルコール含有あると車の運転もできないし休肝日にならない。惜しい。
スーパーでヒューガルテンのノンアルコールを見つけた。ヒューガルテンを始めとしたベルギービールは大好きだ。ヒューガルテンは白いビール。その意味では南ドイツのミュンヘナーに近い味わい。いずれも日本で主流のピルスよりもフルーティな香りとコクがある。さらに、トラピスト系のビールになるとぐっとアルコールも濃くなり色も赤褐色になる。グラスに注がれたアンバーは見た目も美しい。味は爽快さに重量感が加わる。いずれも下面発酵のラガーではなく上面発酵のエール。(※1)
日本人がコンサバなのか、気候、風土、食事にマッチしすぎているのか、また、大量生産に向いているからか、大手4社の代表製品はラガーばかり。しかし最近は地ビールなどのクラフト系でエールが出てきて、ようやく選択肢が広がった。エールはラガーのように枝豆や焼鳥には合わないかもしれないが、ヴルストやシュニッツェルのようなヘビィな肉料理にはもってこいだ。バルサミコの効いたサラダにも、ワーテルゾーイのような濃厚なチキンの煮込みシチューにすら似合う。自分はやはりこれらの食事とエールの組み合わせに惹かれる。何よりもエールの芳醇な香りと濃厚な味わいが好きで、正直ラガーには食傷している。普段飲みはラガーで、ハレの日はエールで、となる。
そんなエールの白ビールの代表格ヒューガルデンがノンアルコールで商品化されていたのだから、思わず飛びついた。
これを飲む以上は、と、料理には挽き肉をたくさん入れたジェノベーゼパスタ(※2)を作った。
グラスに注いだ香りはウィート感に満ちあふれて、「おっ」と唸る。見た目も全く同じだ。
のど越しもフルーティだ。しかし胃に落ちて、少しだけ引っかかった。甘いのだ。たしかにアルコールがあっても濃厚さがあるのだから、ノンアルコールでそれを再現しようとのこの味付けもわかる。メーカーも努力をされている。
「シードルとは違うけど、ちょっと後味はリンゴジュースみたいね。」と妻も言う。これは糖質多そうだ、と自分は思う。
しかし昼間から、重ためのパスタに合わせて楽しめるのだから言うことはないのだ。夕食は何を作ろうかとも楽しい悩みもできる。
これで休肝日がすこしは増えるのだろうか。肝臓の救世主になるのか。しかしいつもならビールはスターターで真打ちはワイン。これでは何にもならないではないか。
まあそこは、弱い意志は封印して、スターターで終わりにしよう。
今日の買い物で救世主候補たるヒューガルデンノンアルコールのパックを再びカゴに入れたのは言うまでもない。
(※1)エールとラガーについてはこのサイトが分かりやすい。https://beergirl.net/beer-beginner-guide-03_c/
(※2)ジェノベーゼパスタは挽き肉とありあわせの野菜(ズッキーニ、ピーマン、キノコ類等)と炒めて白ワインを回し、アルコールを飛ばしたら市販のジェノベーゼソースを加え、簡単に。チューブ入りバジルや、イタリアンパセリがあると更に美味しくなるだろう。茹で時間を除くとお手軽な3分クッキングだ。