日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

嬉しい故郷の富士

何気なく見ていたテレビ。

テレビのCMにも流行り廃りはあるようです。昔はよくありましたが今は殆ど消滅したかに思えるのは日本メーカーによる家電製品のCMでしょうか。一方、一昔前は見なかったけど今は盛んなCMもあります。例えば各種の過払い請求の法律事務所、ヘッドハンティングや再就職の支援サイト、手頃なお葬式の案内、年齢制限なく入れる死亡保険金、アイドルを惜しげもなく使うゲームサイト・・。日本の産業構造や人口構成の変化、時代の移り変わり、社会のニーズの隆盛、ネットの普及・・・。こんな環境の変化の影響もあるのでしょう。テレビは世相を反映します。

とある転職支援サイトCMの背景に映っていた山に目が釘付けになりました。いや、釘付けどころか、胸いっぱいになります。

それは故郷の山でした。「讃岐富士」(飯野山)。

ため池と小さな山が散在する讃岐平野でひときわこんもりと盛り上がる、讃岐人の「おらが富士」。海抜422mは低山の部類ですが、瀬戸内海から見ても良くわかる海の近くの立派な富士です。自分にとってもそれは原風景。生まれ故郷の香川で過ごした時間は短いですが、夏休みになり母親と共に帰省するたびに、それは「待ってたよ、今年も遊びに来たね」と優しく迎えてくれるランドマークでした。何につけてもスローで温かみのある讃岐の言葉。これに穏やかな瀬戸内海の眺めと、いりこの出汁が香りコシのあるうどんさえあれば、私はいつでも香川に戻れます。

子供のころから数えられない程目にしていた讃岐富士ですが、登山は数年前でした。しまなみ海道をサイクリングしてから今治から香川に抜けて、登山でした。先祖の墓もあり親戚もいる香川。言葉も空気も匂いもゆっくりと流れます。すべてが自分の体の一部分。

ある意味満を持して登った讃岐富士。開聞岳のようにぐるりと鉢巻を回るようにして山頂に立ちました。成人から30年以上経ち、これでようやく自分も「讃岐人」として元服したような気がしたのです。

香川県人以外には決して有名ではない、何の山かもわからないし興味もひかないでしょう。そんな「おらが富士」をテレビCMに使ってくれて、嬉しい限り・・。物理的には遠いですが、心に中にはいつも傍にいる山です。

・・疲れたら、目を閉じてみよう。するといつしか自分は登山道。眼下には懐かしい風景が広がり静かな瀬戸内海。

世相を反映するテレビに、スローな故郷の懐かしい富士が写っているのです。生き方の多様性が言われる今こそ、それは意味を持つ映像なのかもしれません。

嬉しい故郷の富士。そうそれはいつでも自分を幸せにしてくれるのです。

(2022年1月14日・記)

 

・写真上:ある年にサイクリングで走った「しまなみ海道」。尾道から島々を巡り今治へ。充実の自転車旅の目的地は「故郷」。讃岐富士は昔と変わらぬ優しい姿で自分を待っていた。

・写真下:方向は違えど、見間違えようもない、転職・バイト探しサイトのCMに映る「おらが富士」

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