日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

森の国の遊び モルック

職場で「モルックをやってみよう」という声があった。耳が早くて行動力のある職員さんが何処かで聴きつけて、まずはやってみようという話になったのだった。

年齢を問わずに戸外で出来る遊び、と言う事らしい。その手の物で最初に思い浮かぶのはペタンクだ。住んでいたパリの街、ちょっとした公園で、また田舎町でも、大の大人が銀色の球を放り投げてはなにやら楽しそうにやっていた。木でできた狙いに金属の球を投げあって一番近くに付ける遊びの様だった。印象的だったはムッシュもマダムも楽しそうにやっていた事。ドスンという球の着地音と衝撃。結構な重さの球を投げているようだった。どこにでもあるフランスの平和な昼下がりの光景だった。

庶民の外遊び。日本ならばゲートボールやグランドゴルフだろうか。シニアを中心とした地域住民の為の勤務先ではボッチャという遊びをやっているサークルもある。パラリンピックの競技でもあるからメジャーなのだろう。自分は知らなかったがこれはペタンクと同様に目標に一番自分のボールを近づけるという遊びで他人のボールに当てて近づけたりと、なかなか楽しい。ボールは人工皮革のようなものだが意外に重く存在感がある。自分も一度だけ参加させてもらったが、相手の手を読むなどの頭を使う競技だった。

さてモルック。これはまだ職場の目から周りを見回してもあまりやっているサークルも居ないようで、日本にはこれからなのだろう。これはモルックと呼ばれる木の棒(長さ30センチ程度)を放り投げ、前方に並べた木に当てて点数を競うというチームゲームだ。前方の木はスキットルと呼ばれる直径7,8センチ程度の木製の12本の棒、それには点数が書かれている、をボーリングのピンのように並べる。そこから3から4メートル離れた場所がモルックの投擲サークルになる。モルッカ―リと呼ばれる木の棒で囲いを作る。そこから出て投擲しては失格だ。

さて三人づつで構成された複数のチームが出来た。いよいよモルッカ―リの内側からモックルを投げてスキットルを倒す訳だ。ボーリングのピンの様に密集しているピンを狙うのだから当たれば大抵数本一気に倒れる。その倒れた本数が得点となる。三本倒れたら三点だ。30センチ程度の木の円柱がモルック。それを投げるのだから最初は戸惑う。どんな飛び方をするのかも分からない。

面白いのはここからで、倒れて散らばったスキットル。チームメイトが倒れた場所に駆け寄って今度はそこにスキットルを立てる。こうして投げていくとだんだんとスキットルの場所は散らばっていく。そう、会場はあたかもモアイ像かストーンヘンジのようになってしまう。当然モルックが当たらなくなってくる。先ほど倒れたスキットルの数がチーム得点と書いたが、実は個々のスキットルには点数が書かれていて、一本のスキットルのみが倒れれば書かれたその点数がチーム得点になる。10点や12点と言う大量得点はこうして手に入る。

これが50点に一番早く到達した時点で勝者となる。しかし1点でも超えてしまうといきなり持ち点は25点になってしまう。そこから再び散らばったスキットルを狙っていく事になる。数本倒して細かい点数を狙うのか、ピンポイントで欲しい点数の書かれたスキットルを狙うのか。ちょっとした計算も必要だ。狙いすぎてチームの三人が続けてスキットルを外せば失格となる。投擲技術も必要になる。また、投げるのにはあまり体力は要らないが散らばったスキットルに駆け寄って立て直すのは意外に走り回る必要がある。

モルックにモルッカ―リ、スキットル。聞きなれない言葉が並ぶ。すべてが木を伐り削った道具。木で遊ぶ。これは森の国・フィンランド発祥の遊びだった。木と触れ合う事はなぜか心が休まるし、木と木がぶつかり合う音がなんとも質感がある。ふとヘルシンキの空港を思い出した。針葉樹・スカンジナビアパインの森が圧巻だった。その上をアプローチしてランウェイだったと記憶する。空港のターミナルも木をふんだんに使っていたのではないか。見慣れたヨーロッパの空港とは異なった、落ち着いた質感があった。自分はそこでお土産としてムーミンのコップとマグネットを買ったと覚えている。

フィンランドにしろスウェーデンにせよ町並みには清潔感がある。森と社会が共生しく酸素密度が高い気すらする。木が生活に溶け込んでいる。24時間明るくコンクリートに囲まれ時間に追われる忙しい生活と、森の中でゆっくり暮らす生活のどちらが良いか、と言われれば答えを待つまでもない。そんな国から8000キロの距離を越えてやって来た遊びは、楽しさと癒しを与えてくれるように思う。

今回はお試しと言う事で地元の町内会の有志と、職場の職員での開催だった。もちろん自分も真っ先に手を上げた。手慣れないが夢中になった。失投しても恥ずかしがることもない。失敗も失格も笑って済ませる。職場の次の課題は、これを如何にして地元住民が楽しんでもらえる手段として衆目を集めるかだった。妻は彼女の職場である児童館ですでにモルックを体験していた。ならば対抗戦も出来そうだ。皆で楽しめればそれでよい。こうして数時間熱中して遊べばオジサン的にはビールも美味しいだろう。

自分も喜んで「森の国の小さな遊び」のエバンジェリストになりたい、そう思っている。

ルッカリーの内側にモルック。その数メートル先には12本並んだスキットル。スキットルには1-12の点数が記されている。一本のみ倒れたらそのスキットルの点数が、複数本倒れたら完全に倒れているスキットルの数が点数になる。回を重ねるとスキットルは散っていく。それを狙う。モルックは下手投げのほうが良いようだ。さてこの一投はどうなったのか。

フィンランドの想い出。ヘルシンキの空港で買ったムーミンのアイテム。そして昨年読んだ「たのしいムーミン一家(トーベ・ヤンソン著)」。そこは森の国だった。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

フィンランドについての過去記事

shirane3193.hatenablog.com